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Enterprise Architecture Using the Zachman Framework (MIS)
Course Technology Ptr (Sd)
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「オーナーシップを持たせる」・・・これこそがあるべき教育研修のミッションだ。ただしそれは直接部門に対して。では間接部門すなわち企画部門やスタッフ部門に対する教育研修のミッションは何だろうか?間接部門に企業活動へのオーナーシップを持ってもらったらかえってまずいだろう。
「標準化を推進できるようにする」・・・これが間接部門向け教育研修のミッションである。そのためにスタッフが共有すべきコアスキルは、対象を客観化し、認識を共有できるようにモデル化する技法だ!(本書はその目的に向けた日本にはない種類の本ですが、必ずしもお勧めの本ということではありません。後述。)
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セメント/コンクリートの世界的な優良企業としてセメックスという会社がある。コンクリートのジャストインタイム納入というユニークなサービスを実現するとともに、M&Aを世界中で行い速い成長を実現していることでも有名である。セメックスでは次の9つの標準化グループが常時活動しており、それが成長のエンジンとして位置づけられている。
- 顧客対応
- 企画
- 資金調達
- 財務統制
- 人的資源
- 生コンクリート関連
- IT
- オペレーション
- 購買
これら標準化グループの活動のおかげで、M&Aにあたっても単にセメックス流の仕事のやり方を押しつけるのではなく、買収先企業の優れた仕事のやり方を比較検討し、優れたものはデータベースに取り込み、速やかにグループ内に展開するという。
これは、標準化といっても、単なる仕事のマニュアル化としてイメージされるものよりもはるかに高度な次元のものである。仕事の仕方を常に比較評価し、優れたやり方に置き換え、それを共有できるということは、仕事の仕方が一旦徹底的に客観化され、モデル化され、メソドロジー化されていることを示す。「セメックス・ウェイとは、グローバル企業を横断して、収集されたビジネスプロセスをシステマティックにマッピングし、カタログ化し、普及するための方法である。」
このような高度な標準化チームを養成する上で何が必要か、ということを考えるのがここでのテーマである。
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自分達の仕事の仕方を客観化し、共有できるようにするためには、企業活動を記述するための共通言語/フレームワークが必要になる。エンタープライズ・アーキテクチャと言われるものがそれである。
エンタープライズ・アーキテクチャとは、経営戦略を企業内の各レベルでで実行するために、「誰が」「何を」「どのように」行うか、経営資源を構造化して、実行体を作り出すための企業構造設計図のことである。(オージス総研による定義)
それは、「作業分野」×「工程」というマトリクスのフレームワークを中心とする場合が多いが、この「作業分野」と「工程」の内容はもちろん業界によっても企業によっても違うのだが、どのような対象に対しても適用可能な汎用の雛形として作られたのが、IBMに勤めていたザックマン氏が1992年に提案したザックマン・フレームワークである。(次のサイトにて公開されている。http://www.zifa.com )
それは、詰まるところ、企業活動の要素を5W1Hに分類して段階的に具体化・詳細化すべしということを言っているにすぎない、驚くほど汎用的なフレームワークなのだが、その包括性・汎用性は大きな影響を与えた。そしてザックマン氏はエンタープライズ・アーキテクチャの始祖となった。IBMはそのジャーナルにおいて、ザックマン氏の仕事をIBMの歴史のターンニングポイントの一つとして数えているという。
それは5W1Hという英語の汎用的なフレームワークに基づいているので、どの企業に属していても、どのような専門性を背景にしていても、そのマトリクスのフレームワークを参照することによって、その中のどこの話をしているのか、示すことができる。もし独自のフレームワークが必要であれば、そのフレームワークを基に新たなフレームワークを作ればよいのである。
そして、このザックマン・フレームワークは大きなビジネスの基礎になり、このフレームワークの中を埋めていく形で、様々なモデルやツールやテンプレート(雛形)が開発された。現在では、開発されたモデルやツールやテンプレート、あるいはそれを用いて具体的に特定企業システムを記述した大量のドキュメントのことをEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)と呼ぶ場合が多いが、その全体を支えているのがザックマン・フレームワークという一枚のマトリクスである。
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さて、業務プロセス、データや通信インフラの整備といった、ITをそのまま適用できる領域の詳細化・具体化は活発になされている。しかし企業組織運営に関わる者が検討を深めるべきは組織運営のモデル化である。共通言語を用いて記述された企業活動があって初めて組織の壁を越えて誰もが活動に参加することが可能になる。組織の仮想化が可能になる。しかしそれがまだなされているとは言えない。
組織の中の様々なテーマ、例えば、M&Aを進める、工場を建設する、新製品開発を行う、マーケティングを行う、企業を挙げて能力開発を行う、といったテーマの中に含まれる膨大な物事をいかに分類整理して記述するか。しかもそのように分類整理して記述することにより、役割分担が明確になり、品質も生産性も保障できるようになり、さらにできることならばアウトソーシングできる部分も明確になるような仕方で・・・。
この参考になるように、IT以外の領域でザックマン・フレームワークを適用するにあたっての教科書が本エントリで紹介している書籍なのであるが、実に、細かい字でぎっしりと700ページある。物理的に読める量ではなく内容も冗長なので、普通の読者にお勧めできるようなものではない。(まずは、アマゾンでエンタープライズ・アーキテクチャで検索して出てくる簡潔な書籍を参照する方がよい。IT寄りの記述が多いとしても。)
しかしながら、5W1Hのフレームワークによって複雑な対象を分類整理してモデル化して記述する、ということだけのために700ページの教科書が書かれてしまう、ということ自体に、太平洋の向こう側とこちら側、彼我の問題意識の違いが現れている。そこには日本企業にとっての空白領域が示されている、と考えることもできる。そしてこのような能力やセンスが、自動車の構成要素のソフトウェア化の潮流への対応にあたっても、半導体のパッケージ商品化への対応にあたっても、M&Aやアライアンスにあたっても、ビジネスの品質や生産性を左右することになると思われる。
ザックマン・フレームワークは一枚のマトリックスであらゆる対象を組織化することができるテンプレートだが、あくまでもそれは雛形であるので、企業ごとに独自の定義を行なった上で、フレームワークの内容について、業務や組織の企画に携わる可能性があるスタッフに対して十分に教育訓練する必要がある。
もっとも予め限定されたスタッフが考え尽くして現場に押し付けたものは参照されないで終わる。組織メンバーの衆知を集めてWiki的に徐々に内容(=定義や雛形やツール)が充実させられていくべきだろう。(Wiki的に内容を公開しながら充実させていくことを図っているオープンソースメソドロジーというものも、思いきりIT寄りではあるが、例えば次のものがある。http://mike2.openmethodology.org/index.php/What_is_MIKE2.0)
業界団体や政府などの公共的な主体やグループ本社は、そのように充実されていったコンテンツをとりまとめながら、共通用語を定義していくことが役割になるだろう。
このような仮想化された企業モデルが機能していれば、形式的な組織構造がどのようなものであっても、共通のフレームワークの中に分類整理された活動分野や目的への貢献として、リソース配分や協働が進んでいくだろう。