人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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19日のエントリに書いたように、A時間をS時間にグレードアップするためには、活動にレバレッジをきかせる必要がある。レバレッジをきかせるためには、活動の意図が明確である必要がある。しかもその意図はその活動限りの意図ではなく、他の意図とも結びつけられている必要がある。そして、それらの互いに関連しあった意図は、体系だてて表現されていることが望ましい。というのはそれによって初めて、ある活動が本当に全体としての意図の達成に貢献しているかどうか、またリソース配分/時間配分の仕方が適切かどうか、測定、評価できることになるからだ。

企業戦略や事業戦略とは、社員の活動にレバレッジをきかせてその価値を高めるためのものに他ならない。それは社員個々の活動に落とし込まれて初めて意味を持つ。だから、企業戦略/事業戦略が実効性を持つためには、社員一人一人が自らの職務や役割に応じて、自らの活動の戦略的意味合いを明確に意識し、その効果を測定、評価することができるようになっていることが必要である。

ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか
エイドリアン・J・スライウォツキー,中川 治子
ダイヤモンド社

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さて本書は、近年の企業戦略本の定番であった米国マーサー・コンサルティングのスライウォッキーによる「プロフィット」シリーズの中でも最も読みやすい、読み物風にまとめられたものである。構成がシンプルで、利益を獲得するための企業戦略を23のパターンに整理したカタログとなっている。企業戦略論は、理論といっても公理から組み立てられるようなものではなく、つまるところ事例の分類学であるから、本書のように端的に分類本として構成したものは歓迎される。企業戦略/事業戦略に実効性を持たせるためには、本書のような戦略の端的な分類・整理を踏まえることには意味があると思われる。「この事業は15番の戦略だぞ!」「この事業は9番だぞ!」とか言うことで、何をやろうとしているかということがメンバーにわかるからだ。

そのためには、戦略パターンが23もあっては多すぎる!まあ、一つの企業に関係するのは23の全てではなく、数個の組み合わせであることが多いので、23個全てを覚えるべきことにはならないわけだが。。。23のパターンをその特徴に照らして大分類することで、パターンを覚えやすくするとともに、パターン間の違いや類似性を鮮明にし、理解のブレがないようにしておくことが望ましい。

どのような特徴に照らして大分類すべきか。意図を伴う活動とは、5W1Hによって定義されるものであるから、5W1Hのどこにポイントを置いて社員の行動の効果を高めようとしているのか、という見地から戦略パターンを大分類することがよい。下記の分類はその一例にすぎないが、いずれにしても、自分の活動にレバレッジをきかせるためには、全体戦略を5W1Hの見地から理解した上で、自分の活動の5W1Hを明確にすることが有効である。いずれにしても、本書を読んで、後から23のパターンを全く再構成できず(思い出せず)、自分の活動を設計するにあたっての思考も変わっていないのであれば、読書の時間は時間の無駄だったことになるだろう。

<Why ミッションに関する戦略>
06 ブロックバスター利益
12 ブランド利益
13 専門品利益
16 価値連鎖ポジション利益

<How アプローチに関する戦略>
07 利益増殖
10 インストール・ベース利益
11 デファクト・スタンダード利益
18 販売後利益モデル
22 低コスト・ビジネスデザイン利益
23 デジタル利益

<Who 人材能力に関する戦略>
08 起業家利益
09 スペシャリスト利益

<What 商品ラインに関する戦略>
02 製品ピラミッド利益
03 マルチコンポーネント利益
04 スイッチボード利益

<When タイミングに関する戦略>
05 時間利益
17 景気循環利益
19 新製品利益
20 相対的市場シェア利益
21 経験曲線利益

<Where ドメイン・シェアに関する戦略>
01 顧客ソリューション利益
14 ローカル・リーダーシップ利益
15 取引規模利益



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