(カバーしておきたいテーマだったのでずいぶん以前の記事に書き込んだメモを復活させたものです。)
本記事はP&Gの成長の理念を「グローカル=グローバルとローカルの両立」ととらえ、そのためのアプローチを、次の3つの視点から整理している。
- 販売 ―― 小売チェーンとの協業
- マーケティング ―― 商品の現地化
- 組織 ―― 業務の外注化
巨大グローバル企業を回すために、外部リソースを効果的に使っているわけだが、それを束ねることのできる求心力の源と組織アーキテクチャとを考えたい。どのように組織を運営しているのだろうか?
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統一性と多様性を両立させる組織運営のポイントは、「組織にどのようなマネジメントの軸を通すか」ということに尽きると思われる。そして、巨大グローバル組織であれば軸は沢山あって当然なので、さぞ、複雑なマトリクス組織になっていることだろう。実際、この記事からは、次の3つの軸:
- 顧客軸
- 技術軸
- 業務機能軸
から、縦・横・斜めに組織を貫き、グローバルにユニークな戦略が遂行されていることがわかる。そして、それぞれの軸での取り組み例として、次のような例が紹介されている。
- 顧客軸―――大手量販店との「協業」において、たとえば「ジョイフル本田」と協業しての売り場作りに、米国のホームセンター、ターゲットとの協業で培われたノウハウが用いられているという。特定の量販店に貼りつく「カスタマーチーム」の間でブランドを横断して情報が共有されていることになる。カスタマーチーム統括機能のようなものがグローバルに存在し、「協業ビジネスプラン」やそのビジネスモデル(収益性モデル)のナレッジを管理しているのだろう。
- 技術軸―――テクノロジーアントレプレナーと呼ばれる社員が、世界中から新しい技術を探し続けて積極的に買っているという。基盤技術分野ごとに情報を集約し、技術戦略を策定、実行しているのだろう。
- 機能軸―――組織機能を最大限に効率化するため、IT、人事、総務部門については徹底的にアウトソースしているという。シェアードサービス部門にグローバル・ビジネス・サービスという名前がつけられているように、機能分野別にグローバルに取り組みを集約しているのだろう。
このような組織において、イントラネットのポータルはいったいどのようになっているのか(どのようなエントリに分かれているのか)、また、各軸のヘッド(組織長)はどのような成果責任や業績管理KPIを持っているのか、見てみたいものである。
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さて、このような多元的な組織では、経営者はいったいどのようにマネジメントを行っているのであろうか?その答えが、アラン・ラフリーCEOとのインタビューの中にあった。「こうした複雑さをどう管理していますか?」というインタビューアの問いに対してアラン・ラフリーCEOは次のように答えている。
- 「年間10億以上の売り上げがある17のブランドを重視しています。」
- 「界面活性や芳香など、世界のトップクラスでありたい8つのコア技術を定めています。」
- 「その結果、従業員は意識をそこに集中できます。(注:経営者もであろう)」
- 「さらに、販売経路にしても、生産方式にしても、標準化できるところは標準化しています。」
つまり、P&G組織の最も優先度の高い軸、そしてCEOの管理対象は、おそらく25個、すなわち、17のブランド+8つのコア技術なのだ。
そして、インタビューの中で、アラン・ラフリー(Alan Lafley)CEOは、日本市場のエピソードとして、食器用洗剤「ジョイ」を95年に日本で発売した時のエピソードを具体的に語っていることが印象的である。数値管理のみでなく、具体的な情報も把握しているわけだ。
25個の管理対象、すなわち、17のブランド(すなわち既存商品)と8つのコア技術(すなわち将来の商品)ごとに、ビジネスプロセスを定義し、商品化テーマのステータス(パイプライン)を見える化し、それらをKPI(Key Performance Indicator)とともに、主要な出来事とともに、一覧できる25枚のA3の紙があれば、マネジメントができるかもしれない。