人材マネジメントの枠組みに関するメモ
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その卓越した競争力に最近やや陰りが見られるのではないかとも言われる花王が、これまでの「機能」に対して「情緒」という商品価値の要素を加えて、巻き返しを図っているという特集である。

花王の商品は、「素材の機能に関する研究開発力」と「消費者向けマーケティング力」とを組み合わせて「新しい素材を用いた生活改善」を提案していることに特徴があると思う。常に新しい科学的知見に裏付けられており、商品の機能や価値が明確に定義されており、宣伝にも浮いたところがなく、常に手堅いという印象がある。

そのような強みを生み出す組織運営の特徴は、研究サイドとマーケティングサイドとを近づけるオープンかつ緊密なコミュニケーション風土にあるということは知られている。すなわち「顔を合わせて摺り合わせを行う」日本的な組織運営の良さを活かしている組織であるという印象がある。(もちろん、顧客の声を開発にフィードバックするエコーシステムのようなIT活用もしているとしても。)

しかしながら、「機能」一辺倒ではさすがにマーケットのニーズやウォンツを追いきることはできなくなったらしい。楽しさやワクワク感、ドキドキ感といった「情緒的価値」にまで商品価値を及ぼそうとしているとのことである。そのことは花王の組織運営に影響を及ぼすだろうか?「顔を合わせて摺り合わせを行う」緊密な組織運営に変化を及ぼすだろうか?(記事の中では、シーズから商品を開発するのでなく、より生活者視点から開発できるようにコンカレントなプロセスへと商品開発プロセスを調整していることが紹介されている。それ以外にはどうか?)


価値のレイヤーに最上位のレイヤーが付け加わったと考えてみる。それは、下位のレイヤーに影響を及ぼすだろうか。下位のレイヤーに影響が及ぶ場合、それは従来の組織運営の延長線上で対応できるだろうか。

●(商品の使用前/使用後感を含めた)生活コンテキスト
○商品を使用する顧客アクション
○生産/物流/陳列
○マーケティング
○商品化技術
○基盤技術

影響は多分及ぶであろう。単に付け焼刃的に、例えば化粧品メーカーのようにイメージをも重視することにしただけでは、ユニークなブランドにはならないから。花王ならば、「情緒的価値」を生み出す源泉となる「創造的な技術、技能、アイデア」の裏づけをきっと求めるであろうから。次のような・・・

●(商品の使用前/使用後感を含めた)生活コンテキスト
○商品を使用する顧客アクション << デザイン!
○生産/物流/陳列 << 生活提案メディア!
○マーケティング << ライフスタイルのブランド!
○商品化技術 << 使える素材や技術を広くリサーチ
○基盤技術 << これまで保有していなかった基盤技術分野

言い換えれば、生活から健康にまで末端の価値が広がる中で、根っこの広がりも大きくなっているに違いない。技術であれば、「香り」のような専業メーカーがあるような分野から、「薬効成分」のような世界中の医薬品メーカーが凌ぎを削るような分野まで。

となると、生活者の生活コンテキストの中で新たな価値を発見・定義し、それを機能や素材に落とし込んでいくコミュニケーション手法が重要になるのではないか。もし必要な技術やコンピテンシーは内製化するのであるとすると、そのような手法なしには内製化の範囲を絞り込めないであろうし、また、外部から調達するにしても外部とのコミュニケーションインターフェースが重要になるであろうから。



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