自動車部品メーカー各社が、系列解体の動きの中で、資本関係や技術提携関係を再構築しながら様々な方向に発展的にサバイバルをしている状況の紹介記事。
本特集で紹介されている印象的な事例の一つは、ホンダ系のブレーキ専業メーカー日信工業が、シビックハイブリッドの回生ブレーキ向けの油圧サーボブレーキを開発した例である。完成車メーカーと組みながら(部材とメカとエレキが一体化した)複合的な部品開発に向う、所謂「モジュール部品」メーカーをめざす方向性の例と言っていいと思う。
これは、同じくブレーキ専業メーカーである曙ブレーキ工業が、(「世界経営者会議」で信元会長が語っているように)「摩擦材(ブレーキパッド)に特化」し、「本来の顧客はエンドユーザーである」とし、「国際展開」をめざしているのと、対照的であると思う。曙ブレーキは、特徴的な製品/技術に特化して世界シェアを追及する方向性であると言える。
このようにブレーキ専業メーカーの雄2社の異なった方向性に、部品メーカーの方向性のパターンが端的に現れていると思う。自動車部品業界は奥の深い、しかもダイナミックに動いている業界であり多くのファクターを単純に整理することは難しいことはもちろんであるが、次の2軸の中で整理することにより、見通しが良くなるように思う。
- 部品や技術を組み合わせてモジュール部品化を目指す方向か
- ある一つの特徴的な部材や技術を追求する方向か
このどちらを目指すかによって、資本政策や提携政策にも大きな違いが出ていると考えられる。
- 完成車メーカーや超大手部品メーカーの資本力や、組合せ技術を中心とした企業連合体
- 同業他社のM&A、販路拡大による特定部材の世界シェア拡大
後者においては、総合商社等による、完成車メーカーの視点とは異なる情報収集機能や金融機能による支援が生きてくると思われる。
それだけではなく、1と2では、人事戦略が変わってくる可能性も高い。
- チームを組んだり人材の相互派遣をしやすいような人事戦略。チームワークやマネジメントを重視した、同質性の高い報酬基盤。取引の継続性や雇用の保証への配慮。
- 特定技術や技能に長けた人材を集めることができるような人事戦略。突出したブレークスルー技術の開発や、戦略的なマーケティングに向けた、リーダーシップ重視の人事施策。技術、技能、スキルレベルに基づく、メリハリのきいた処遇。
特に、材料の分野はノウハウが形式知化しにくく、パフォーマンスの差が極端に現れやすいように思う。「天才」のアトラクション&リテンションを目指した処遇が効いてくる可能性もある。
なお、部品メーカーが1、2のどちらをまず目指すのがよいか、といったら、各社が特徴的なダントツ技術を追求し、技術体系やスキル体系を確立していく方が、各社にとっても、そして最終的な日本の部品メーカーの総合力としても、中長期にわたって優位に立てる確率が高いことは明らかであると思う。
ただ、部品メーカーのこれまでの経緯や立場から、単一製品分野/技術でグローバルに戦っていくためには、技術力や商品力だけでは解決できない、思いがけない阻害要因があるようである。例えば、ouchi氏のブログで紹介されているような、素形材産業における「型」の管理を誰がどのように行うか、という問題など。取引制度や契約の見直しなども含めたイノベーションが必要であるようである。