脳辺雑記帖 (Nohhen-zahts)

脳病と心筋梗塞を患っての独り暮し、Rondo-Nth の生活・世相雑記。気まぐれ更新ですが、気長にお付合い下さい。

十月に‥。

2012年10月13日 12時48分59秒 | 随想
十月だ。十月の空は麗しい。旧暦では神無月というが、
神は何処かに行ってしまうのか?
夏の重苦しい暑さが抜けて、爽やかな気候のこの月が、
私は、一年で一番好きである。

陽射しは朗らかで優しく、年老いた者たちの瞳のようだ。
乾いた風が、日増しに透明に澄んでいく月だ。

十月の太陽と風の中でなら、そのまま永眠したくなる。
私の細胞のひとつひとつまで、降り注ぐ日の光に溶けて、
私は、陽だまりで、吹く風とともに消えてゆく、そんな夢‥。

十月は、いつも私を、遠い彼岸に誘う。
そう言えば、祖父の命日は十月だったか。
静かに明るい空の果てに、庭に降る光の深くに、
<永遠>の息づくのを観じる。

100年後‥、今この地上を歩いている人と同じ人はいないだろう。
いや30年後でさえ、私はこの世に既にいないかもしれないし、
私より上の世代は、ほとんど他界しているに違いない。

私が死んでも、この十月を見詰める次の命と瞳があり、
十月の風に吹かれ、十月の太陽を受けて、
また私と、同じことを感じる魂があるかもしれない。

私にとって十月は、生者と死者との境界、
生も死も、等価となって日の差す場所と時間、
ヒトの営みは、太古から大空の下に、
連綿と流れ続ける雲と変わらない。

ヒトに、この世界に、終わりが来ても、
私の十月は、<永遠>だ。
全てが、幻のように、<十月>の中に消えるといい。




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