坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ルネ・マグリットの虚と実

2010年05月14日 | アート全般
トリックアートというと、ベルギーのシュルレアリスムの画家ルネ・マグリットの絵が浮かびます。ダリの強烈な妄想的世界に隠れて一時美術史の中では忘れられていた時期があったようですが、60年代から再評価が高まり、今ではそのウィットに富んだイメージの冒険は根強い人気があります。「これはパイプではない」という作品。禅問答のようなタイトルですが、われわれが抱く絵画の固定的なイメージの問いかけがあります。マグリットの作品は思いがけないものの出会い、たとえば、部屋いっぱいの大きなりんごや、空が飛び立つ鳥の形にすっぽりと切り抜かれていたりと、意外性を巧みに利用して、実と虚のマジックの世界へと誘います。

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