坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

甲田洋二学長にお話をうかがって

2011年05月23日 | アート全般
日本和紙ちぎり絵協会の機関紙の編集をしていまして、その1面に登場していただくために、武蔵野美術大学学長の甲田洋二氏(洋画家)にお話を伺いに、武蔵野美術大学に行ってきました。
東京都の小平の玉川上水の緑道を通って行く道のりは、武蔵野の面影を残す気持ちの良い散歩道です。雨模様でしたので、少し残念でしたが。
甲田先生は「美の力の時代」の到来に向けてという、学長メッセージを提言されていて、ものづくりを持続していくことで他者への思いやり、尊敬の念が養われていく、この美の力こそが今の社会参加に大切な存在であるといわれています。
画一的なエリート主義だけでは今の時代の変化はつくれない。だけど今の美大生も統一的ないい作品をつくろうとして、失敗を怖がる若い人が多い。そのために、破格の大きさの作品の課題を出したりと、自己を解放することから始めるんです。というお話はとても貴重な内容でした。
作品は、「Y氏の場合ーHigh Way Dream A」2005年です。青梅市にお住まいで、中央に描かれているのが高速道路で、前景の雑木林の自然と遠景の団地の光景が現代を象徴しているようです。地面や空の色も鮮やかです。女性像や人間像も多く描かれていましたが、この風景シリーズでは、刻々と変化する環境へのまなざしが見て取れます。日記のように家の近くの風景をスケッチしていくと、思わない発見もあったりして、あらためて対象を見て描くことの大切さも感じました。と話され、構成的な作風の中でテーマも広がっています。

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