坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ベルギーの風土を織り込んで

2010年09月04日 | 展覧会
今日から開催されている「フランダースの光」展。渋谷の道玄坂の憩いのスポットである文化村ミュージアムで開かれています。ベルギーの北部のフランダース地方の古都ゲントにほど近いラーテム村に、19世紀末から20世紀初頭にかけてこの村の自然の風光の美しさにひかれて優れた芸術家が集まり一つのコロニーをつくりました。
この展覧会のチーフ学芸員の宮澤さんは、現地に赴いたそうです。今もその代表的な画家である印象派のエミール・クラウス宅は保存され(一般公開はされていないようですが)、緑豊かな大地の中央には、多くの画家のインスピレーションを引き出したレイエ川がゆったりと流れ、今も往時の牧歌的な風景を残していて、ベルギーの人々の憧れの地になっているようです。
フランスの美術運動から少し遅れてこの地で、印象派からシュールレアリスム、キュビスムと多様なスタイルを発展させました。最初に移り住んだ第1期の画家たちは、都市の発展と喧騒を逃れるようにこの地に赴いたためか、森深く佇む瞑想的な画風が印象的です。
・掲載画像は、撮影許可日の展覧会場の一角で、芸術家村の発展期の最後の段階の20世紀初頭のキュビスムのブラックやレジェに影響された画風の作品が並びます。
時系列的に中央の美術運動に影響を受けながらも、ベルギーの風土と美術史的にはルネサンスからフランドル派という写実の巨匠たちを輩出した歴史がリミックスされ、独自の色合いを醸し出しているのが本展の特徴です。そして抽象化の過程の中でもどこか温かく素朴な味わいも感じられました。

●「フランダースの光ーベルギーの美しき村を描いて」/Bunkamuraザ・ミュージアム
  開催中~10月24日
  ・巡回展 奥田元宋・小由女美術館(広島県・三次市)10月31日~11年1月10日


最新の画像もっと見る

コメントを投稿