坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

岸田劉生展

2011年08月29日 | 展覧会
大正から昭和にかけて活躍し、日本洋画の確立期に重要な役割を果たした岸田劉生(1891~1929)。「麗子微笑」(1921年)重要文化財〈東京国立博物館蔵〉や掲載の「童女図(麗子立像)」(1923年)〈神奈川県立近代美術館蔵〉や「道路と土手と塀(切通之写生)」重要文化財など、代表作として有名ですが、本展では、生誕120周年記念として多くの人物画に加えて、初公開作品を含む風景画や静物画も数多く紹介する大回顧展となります。
この「童女図」は「麗子微笑」の立像でほぼ同じポースのアングルからとらえられています。暗闇の中から少し笑みを浮かべて立つ少女ですが、堂々とした骨格と表情など徹底した写実表現の独自の美意識を結実させています。一目見たら忘れられない風格や存在感があります。
初期には、黒田清輝率いる白馬会の影響で印象派的な作風を研究、確立期には、ポスト印象派のセザンヌやゴッホなどの影響が色濃く出ています。そうした新しい視覚のビジョンを研究しながら、劉生は、確固とした写実技をもとに日本における油彩画のマチエールや色彩性、人物の内面的な神秘感に目を向けていきます。

◆特別展 生誕120周年記念 岸田劉生展/9月17日~11月23日/大阪市立美術館


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