坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

八木貴史「Strangler fig」

2011年09月02日 | 展覧会
身近な日用品である色鉛筆を使って固有の表現を追求する八木貴史さん(1982年~)。掲載の作品「虹の燭台」(2011年)を最初に見たのは、2007年からモンブランジャパンが取り組んでいる〈モンブラン ヤングアーティスト パトロネージ イン ジャパン〉の今年度の案内のチラシでした。
この企画は7人の若手日本人アーティストによるモンブランのシンボルマークをユニークに表現した作品を毎年、ショーウィンドウなどで展示し、若手作家の発表の場を支援する内容となっています。この作品を実際に見たわけではないのですが、素材のユニークさと簡潔なフォルムの構築性に着目しました。
八木さんは、2011年に武蔵野美術大学大学院彫刻コースを卒業し、色鉛筆を樹脂で固めて「原木」に見立てた素材による彫刻作品を主に制作しています。2009年に「清水多嘉示賞」を受賞しました。
「色鉛筆は私にとって木と等価であり、削ると色が出てくる木です。色芯と、それを持つための木部というシンプルな構造が、集積され過剰になることで、その機能や構造自体が装飾になり、視覚的に色鮮やかで、幻惑的なものになる」と話されています。
今展のタイトルである”Strangler fig」は、日本語で「締め殺しの木」を意味します。他の木に絡みついては、朽ちさせ、中が空洞の状態で生息する木のように「そのもの自体は消失して目には見えないが、その周りのものが、そのものを形作る」というコンセプトのもとに、家具や身の回りのものを使って制作された新シリーズの発表となります。

◆八木貴史「Strangler fig」/9月13日~10月8日/MEGUMI OGITA GALLERY(銀座2丁目)

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