坂野直子の美術批評ダイアリー

美術ジャーナリスト坂野直子(ばんのなおこ)が展覧会、個展を実際に見て批評していきます。

ラファエル前派展

2014年01月04日 | 展覧会
本展は、英国を代表する美術館の一つ、テート美術館が所蔵するラファエル前派の絵画71点が展覧されます。ラファエル前派は1848年、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントを中心とする若者たちによって結成されたグループです。
当時のアカデミズムに反旗を翻し、ラファエロ以前の初期ルネサンス芸術に霊感源を求めようとした彼らの前衛運動は、英国のアートにスキャンダルを巻き起こしました。
聖書、神話、文学、歴史的事件などを描いた「歴史画」は、ヨーロッパにおいてアカデミーが17世紀に創設されて以来、最も重要なジャンルでした。
ラファエル前派はこの分野で、近代的な新しい形式を作りあげました。
彼らはシェイクスピアやアーサー王伝説などに題材を求め、服装や背景は史実に忠実でいかにも本物らしい道具立てを再構成し、登場金物は仲間内のモデルを丁寧に描き、真実味のある作品に仕上げました。
掲載のミレイの〈オフィーリア〉1851-52年。この作品だけでも内容のある展覧会です。シェイクスピアの戯曲『ハムレット』に登場するオフィーリアを描いたミレイの代表作です。
ミレイは木々や花々を精密に描写するために、ロンドン郊外のホグスミル川で数カ月を費やしました。その後、ロンドンのアトリエで、後にロセッティの妻となるエリザベス・シダルをモデルにバスタブお中でポーズをとらせ、ハムレットの悲運な恋人が溺死する様子を写実的に描きだしました。

◆テート美術館の至宝 ラファエル前派/1月25日~4月6日
 /森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿