
ルフィに誘われて、海賊になる事を決意したチョッパーは、真っ先にドクトリーヌへその事を告げに向った。
だが、ドクトリーヌは海賊になる事を許さなかった。「バカを言うんじゃないよっ!!!!海賊なんてロクなもんじゃない!!あっという間に屍になるのがオチさね!!」その顔は鬼の形相だった。

「それでもいいんだ!!」と食い下がるチョッパー。
「たかがトナカイが海へ出るなんて、聞いたことがないね!!」と断固反対するドクトリーヌ。
「そうだよ、トナカイだ!!!でも!!!男だ!!!」

これには、さすがのドクトリーヌも反論する言葉が見つからなかった為、ドクトリーヌは包丁を持ち出してくると「とにかく許さないよ!そんなに出て行きたきゃ、あたしを踏み倒して行きな!!」と城中チョッパーを追いかけたおした。

チョッパーは、覚悟を決めた。ドクトリーヌが許してくれないなら、ここを飛び出して行くしかない。城からソリを持ち出すと、トナカイ型になってルフィ達を乗せたソリをひいて走り出した。
後ろの方で、ドクトリーヌの声が響いていた。
「お前なんかが海へ出て一体何が出来るっていうんだい!!あのヤブ医者のように幻想に生きるのかい!?」
チョッパーは、それには反論した。
「違う!!幻想じゃないよ・・・!ドクターの研究は完成してたんだ!!!!!」
チョッパーはトナカイの勢いで、城から地上に伸びるロープウェイの紐の上を駆け下りた。
その姿は満月の中でシルエットのなって、空に浮かぶ。ドラム王国でしばしば目撃された魔女のソリは、ドクターくれはと、チョッパーだったのだ。


駆け下りていくチョッパーを見送るドクトリーヌに、ドルトンが声をかけた。
「あんな別れ方で・・・よかったので?」
「ヒーッヒッヒッ・・預かってたペットが1匹貰われていくだけさね!!湿っぽいのはキライでね」と言ったドクトリーヌの目には、涙が光っていた。

”こんな別れ方”に苦悩していたのはチョッパーだった。
(ドクター、幻想じゃないよね。あの時・・研究は完成してたんだろ?それとも、あれもウソだったの?そう言わないまま死んだら、おれが悲しむから・・・?ドクロの旗を掲げた男に、不可能はない!!!・・・もう一度言ってよ、ドクター!!!)
その時、城ではドクトリーヌの指令がとんだ。
「用意はいいかい若僧共!!!撃ちなァ!!!」
ワポルが溜め込んでいた武器庫の大砲という大砲が、一斉に雪の夜空めがけて撃ちあげられた。島の人々はワポルとの戦いなのかと、驚き恐れおののいた。
だが、ドクトリーヌの「ライトアップ!!!」のかけ声の後、それを見た全ての人は息を呑んだ。
それは、ドラムロックの険しい崖を幹にみたてた、巨大な巨大な桜であった。
空からは、ピンクの雪が、まるで桜の花びらが舞うように後から後から降り積もり、それは言葉に尽くせない幻想的な光景だった。
(これがおれが30年をかけて出した答えだ)
ドクターヒルルクの声が聞こえた気がした。どうしようもない大泥棒が、かつて見た、あの日の桜がこの冬の国に咲いたのだ。
かつての大泥棒の感動が、冬に閉ざされた人々の心にも染みわたっていく。
チョッパーは、ソリを止めてヒルルクの桜を見た。
ヒルルクの想いが、ドクトリーヌの想いが、チョッパーを温かく包んでいた。
チョッパーは、あらん限りの声で泣いた。
ドクトリーヌの居る城に届くような、ヒルルクのいる天に届きそうな、そんな大声で泣いた。
自分の今までの人生が、どんなに素敵なものであったのかを、自分がどんなに愛されていたかを、その桜は教えてくれた。


「さぁ・・行っといで、バカ息子・・・」
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