

ルフィがワポルを空の彼方にぶっ飛ばすのを、チョッパーは目を逸らすことなく見ていた。
ドクトリーヌは、「この国は・・・・ドクロに敗けたのさ」と言ってヒッヒッヒと笑った。
ロープウェイから降りた一団は、城の異変に気づき、何が起こったのかを問いただすと、ルフィが平然と「王様をブッ飛ばしてたんだ。あとの二人はトナカイがブッ飛ばした」とあっさり事もなげに答えた。
ドルトン達の命を賭けた長い戦いが、終わっていた。
あの日・・・、ヒルルクが死んだ日、ワポルに適うはずもないから立ち去れと言ったあの青鼻の大男が、そこに居る小さく不思議なトナカイである事は、すぐにわかった。
ドルトンは地に手をつき、深く土下座してルフィとトナカイに「ありがとう。ドラムはきっと生まれ変わる」と礼を述べた。感謝はそんなもので表されるものではなかったが、それ以上の表現方法が見つからなかった。

しかし、青い鼻で2本足で立つ小さな不思議トナカイを見た人々は、どよめき「バケモノだーーーーーっ!!!!」と騒ぎだした。ショックを受けて逃げていくチョッパーを、ルフィが「待てよ!!バケモノォ!!」と追いかけて行った。
ドクトリーヌはその事は意に介さず、ドルトンと、脱走を図ったナミとサンジを捕まえて強制的に治療を施した。

ドクトリーヌは、治療の終わったドルトンに、この城の武器庫の鍵の在り処を尋ねたが、ワポルが携帯している事を知って困っているのを、ナミは見逃さなかった。
ワポルから先ほどスッた武器庫の鍵を見せながら、ドクトリーヌに交渉を持ちかけた。船員全員の治療費をタダにすることと、ナミの即日の退院許可を出すことが、鍵との交換条件であると。百戦錬磨のドクトリーヌも、小娘ナミには敵わなかった。

ナミから鍵を受け取ると、「いいだろう、治療代はいらないよ。ただし医者として退院許可は出せないね。いいかい小娘、あたしはこれから用があって部屋をあけるよ。奥の部屋にあたしのコートが入ってるタンスがあるし、見張りがついているわけでもない。それに背骨の若僧の治療は終わっているんだが・・・。いいね、決して逃げ出すんじゃないよ!!」と言い残して、昇ってきた町民達を連れて出て行ってしまった。
ドクトリーヌの”いいつけ”通り、ナミはドクトリーヌのコートを着て、サンジを連れて城を出ると、城の外ではルフィがトナカイを勧誘していた。ルフィの「おーいトナカーイ!一緒に海賊やろうーーっ!!」という呼び声に、チョッパーは困っていた。(海賊をやりたくないわけじゃない、ただ・・・おれは行けないんだ。)
チョッパーは、ルフィにはっきりと断った。
「だっておれは・・・トナカイだ!!!角だってあるし、蹄だってあるし、青ッ鼻だし・・・!!そりゃ海賊にはなりたいけどさ・・おれは”人間”の仲間でもないんだぞ!!バケモノだし!!おれなんかお前らの仲間にはなれねェよ!!!・・・・だから礼を言いに来たんだ!!!誘ってくれて、ありがとう・・・・・」
だが、ルフィの返事は1つだった。
「うるせェ!!!いこう!!!!!」
その無茶苦茶な勧誘に、涙声で「お゛お゛!!!!」という返事が山々にこだました。


大きな満月が、雪の大地を明るく照らしていた。
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