467話 海賊ゾロ ＶＳ 侍・リューマ

最上階では、ブルックと侍ゾンビが戦っている最中だったが、ブルックはどうしても自分の影と屈強な肉体を持つ”侍ゾンビ”には勝てないでいた。
侍ゾンビは「私の得意とする”矢筈斬り”で斬ってあげましょうか？」と笑ったのを、ブルックは「何も知らないくせにその名を使うな」と声を震わせて言い返した。

「王国の”奇襲部隊”出身の私の得意とした速斬りの技の名は「鎮魂歌【レクイエム）・ラバンドゥロル】。その剣技を賞賛して仲間達がつけてくれた通称こそが【鼻唄三丁矢筈斬り】。お前なんかにその名を使われたくはない！！！」そう言って息も絶え絶えのブルックは、再び剣を握った。






だが、ブルックは無残にも無念にも【鼻唄三丁矢筈斬り】で斬られ、倒れながら走馬灯のように過去を思い出していた。
（ラブーン・・・何よりお前に謝りたい。この悲運な私を謝りたい。暗い海を50年・・・長かったのになぁ・・・生きた意味がなかったなんて･･･淋しいなァ・・・私の人生、淋しいなぁ・・・・・！！！）


もう立つことも出来ないブルックのアフロを、侍ゾンビは笑いながら切り落とそうとしたところに、ゾロとフランキーが駆けつけた。

敵の侵入に刀を振りかざして攻撃態勢に入った侍ゾンビの前に立ち塞がったのは、ゾロだった。
「お前か大昔に”竜”を斬った”伝説の侍”ってのは・・・会いたかったぜ！！お前の刀、よさそうだな」

刀を褒められた侍ゾンビは、自分の刀を自慢した。
「ヨホホホ！！お目が高い。これは大技物21工の1本、刃は『黒刀乱刃大逆丁字！！名刀『秋水（しゅうすい）』という一品。そこらではお目にかかれぬ代物でしょう」と言うと、ゾロはニヤリと笑って「よし！その刀、おれが使ってやる！！」と言った。





不敵に大口を叩く若き剣士ゾロと対峙した侍ゾンビ・リョーマは、記憶にない感情が沸き上がってくるのを覚えた。巨大な生物と対峙した時のような、ゾクゾクして今にも体が踊りだしそうな不思議な感覚・・・それは侍の体が覚えていた戦いの記憶なのかもしれない。

ゾロと侍ゾンビがぶつかる！！！



侍の使う技は、侍自身の習得してきた技ではなく、影の魂が覚えている技となるが、肉体をそれを補強する。
ブルックの【夜明歌（オーバード）・クー・ドロア】という突きの剣は、その風圧で壁に穴があく程の威力を見せ、同時に、ゾロの斬った斬撃もまた侍ゾンビの背後の壁をその威力で切り裂いていた。

二人の戦いを見ていたブルックは「侍ゾンビはの生前はおろらく”豪剣”の侍。あの二人、剣士として同じタイプの筋力を持っているのかも知れない・・・、同系統の”破壊力”を持つ二人の勝負は長引くことはないでしょう」と言った。


侍が【前奏曲（プレリュード）・オフエル】を繰り出すと、ゾロは【弐斬り・閃・魔熊（にぎり・ひろめき・まぐま）】で止める。
侍が【革命舞曲（ガボット）・ボンナバン】で攻撃すると、ゾロは【二刀流・居合・羅生門】で受ける。
ゾロが【七十二煩悩鳳】を撃つと、侍は【酒樽舞曲（ボルカ）・ルミーズ】で受ける。







とにかく二人は互角で、周囲の建物はその威力で破壊され、建物の最上階は崩壊寸前であった。だが二人は戦いに夢中で、とうとう足場の悪いとんがり屋根に出て戦った。

その凄まじい斬撃と、俊敏な動きがピタリと同時に止まり、二人のハァハァと呼吸を整える息遣いだけが当たりに響いた。
ゾロは思った。　（長引くと刀が折られてしまいそうだ、伝説の剣士の強さを支えたあの肉体と気迫はまさに本物！！）

次に二人が動いた瞬間、屋根が真っ二つに斬られて折れた。これで勝負が決まる！！！
ゾロが屋根の傾斜を利用して、空高く飛び上がり【一刀流・飛竜・火焔（かえん）】を振り下ろすと、侍は【鼻唄・三丁・矢筈斬り】を撃ち揚げた。




宙でズバン！！！という鈍い音が響いた後、侍の体の斬り口から発火した。
侍は、その燃え上がる体で、スッと刀を振り上げると「かつて伝説の侍が腰にした名刀『秋水（しゅうすい）』！！あなたが主人であるなら、この刀も本望でしょう」と言うと、刀をゾロに投げてよこした。







それから侍は「この体に敗北を与えてしまうとは、心苦しい・・・」とつぶやくと、ゾロは「恥じる気持ちがありゃ充分・・・、心身共にあってこそ剣士だ。お前が生きた時代に会いたかったよ。刀は貰うが勝負はなかったことにしようぜ、ワノ国の侍！！！」とこの戦いを受け止めた。




侍の体が燃えて消失すると、その中に収められていたブルックの影は、本体であるブルックの元に戻ってきた。
ブルックは「・・・こんな戦い始めて見ました。あの侍・・・私になんて全く本気じゃなかったんだ・・・凄い勝負でした」とつぶやいた。