眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『春との旅』

2011-02-19 14:15:01 | 映画・本
長すぎる「ひとこと感想」その10。

失職した孫娘(春)は、上京して仕事を探そうと決意する。そのためには、足の不自由な祖父の面倒を誰かに頼まなければならない。娘は他に手立てがないために、祖父は本気で腹を立てながらも、ともかくも二人で、疎遠になっている祖父の姉弟たちを尋ねる旅に出る・・・というストーリー。

私がちょっと苦手な仲代達也も含めて、俳優さん達もその他のスタッフの方たちも、皆「きちんと仕事をしている」という印象を受けた。(私は普段こういう感じ方はしないので、自分の醒めた?感じ方に逆に驚いた。)

淡い色彩が美しく、その中で春の服の赤は可愛らしく、主人公の姉弟たちとのやりとりも、これまでに彼らの間で流れた「歳月」を「きちんと表現」している・・・。それは決して、見るからに「わざとらしい」といった種類のものではなく、観ている私にもしみじみとした時間が流れていたのだと思う。それはそれで心地良い体験・・・だったはずだ。

それでも一つだけ、見かける度に困惑したのは、春さんの歩き方、身のこなしといったごく物理的?な事柄だった。

同性の眼から見ると、現代の19歳の女の子のああいう歩き方、身ごなしはちょっと考えられない。どんなに田舎で素朴な育ち方をしたのだとしても。(最初のうちは、もしかしてごく軽い知的な障碍のようなものがあるという設定なのかな?とも思ったけれど、そうじゃないことはすぐに判った。)

映画全体から見ると大したことじゃあないのかもしれないけれど、私にとっては、映画全体から感じるある種の違和感を凝縮しているような部分だったので、無視する気になれなかった。

今回「春」の役を演じた徳永えりさんをちょっと調べてみたら、「監督(原作・脚本も同じ)の中にはすでに明確に春のイメージができあがっていたので、自分を消して、すべて受け入れて、私の色を出さないようにする。そういう役作りの仕方・・・」といった本人の言葉があり、なんだか納得がいった気もした。

ベストテン選考会の席ではいい映画だったという感想が多く、実際10位以内に入ったのだけれど、「こういう映画は大嫌いです!」と拒否票(そういう票も入れられる仕組みになっている)を投じた方もおられて、自分はどちらに近いのだろう・・・と、その場でちょっと考え込んでしまったのを思い出す。


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