いつ頃からだろう・・・私は家庭用の電化製品が、なんだか生き物のような気がしている。
扇風機はもの思わしげに首を振り、こちらが「もっと優しく扇いでほしいな。」なんて要求すると、仕方なさそうに、さらにゆっくり、さらに優しげな風を送ってくれる。(年若い扇風機ほど配慮がデリケートに出来るけれど、なんだか昔ほど頑健じゃなくなったみたいで、姿形もいかにも「蒲柳の質」って感じ。)
洗濯機は、こちらの都合で段取りを変えようとすると、しばらくは沈思黙考の風情。やがて納得がいった様子で、また作業を再開。全てが終了すると、「終わりました~」と、(昔のように無遠慮な大声ではなく)ごく控えめに声をかけてくれる。先日珍しく故障したので、修理を依頼するついでに調べてみたら、我が家に来てから、もう7年も経っていた。騒がしかった先代も、日々の酷使に耐えながら?何度も修理したことを思うと、内気そうなこの人は案外丈夫なのかも・・・なんて思う。
冷蔵庫は長寿だ。「家族」の中でも群を抜いて大柄なのに、「自分たち種族の中では中肉中背デス。」とでもいうように、ひっそりキッチンの隅に立って(座って?)いる。扉が左右どちらからも開くようになったときは、引っ越しばかりの我が家では拍手が起きた。(今年になって新人が来て、真ん中から開くようになったら、今度は一部でちょっと不評を買っている。)
エアコンは・・・ほんの一時期同居して、もうモノ凄く役に立ってくれた。(夜、彼抜きには誰も眠れない・・・というような家に住んでいた頃の話だ。)でも、我が家で室内工事が必要になった際、「じゃあ、さよなら。」と旅に出てしまった(らしい)。今頃はどこでどうしているんだろな。
今年はこういったメカニック家族が、偶然とはいえ何人も代替わりした年だ。
冷蔵庫などは、まだ十分使えるから・・・という声もあったのに、「新しい製品は、消費電力がずっと少なくなるから。」という別の声に押し切られた。(福島の原発事故以来、我が家でも消費電力を確認し、少しでも下げる努力がなされたのは本当。そんなに熱心に・・・ではないけれど。)
他にも、炊飯器(「かまど炊き」と称して、ずいぶん重く、うるさくなった。こちらは省エネになったのかどうか不明)、電子レンジ(これはパネルがダメになったのだけれど、先代とほとんど変わらない、「一人暮らし用」の最も小型でシンプルなヒトが再度やって来た)、そして・・・一番の大物がハイビジョンプラズマテレビ(46インチ)の「彼」だった。
この「彼」の話を少し書くと・・・
先代は、今住んでいるマンションに引っ越してくる途中で、先々代が天寿を全うされてしまったので、急遽我が家にやってきた、ごく普通のブラウン管テレビ(29インチ?)だった。11年間、毎日のように録画した映画やドラマを見せてもらって、ずいぶん役に立ってくれた大事な「家族」だった。
ブラウン管は奥行きがあって嵩張るので、居間の片隅にいても結構存在感があって、これが南海大地震の時「飛んで」きたらコワイね~~などと、みんなで噂したりしていたのだけれど・・・。
そろそろ最期の時が近づいている(いつ映像が切れてしまっても不思議じゃないような感じ)のが、皆になんとなく判ってきて、休日に電器店に後継者を探しに行った(人間なんてソンナモンだ。)。
数日後、探しに行った人の選んだテレビが届いた時の驚きは、今も覚えている。一応話は前もって聞いていたものの・・・想像した以上に「インパクトのある」存在だったのだ。
運んできた人が配線・接続してくれて、一応テレビ番組が映るようになり、帰ってしまってからが・・・ナカナカ大変だった。
私は化学物質過敏なトコロがあるとはいえ、とうとう電磁波にも過敏になったのかと本気で思ったくらい、テレビがついているだけで、「曰く言い難い違和感」(としか言いようがない)が空中を押し寄せてくる。(それはほとんど、空気の津波?とでもいうような、全身に感じる代物だ。)
テレビに背を向けて部屋の反対の端まで離れて、耳も塞いで、テレビは勿論音を消して・・・ それでも、スイッチ・オンすると、はっきりわかってしまう。全身が総毛立つような感じで、私は本気で心配になった。
「私、ホントにこのヒトと一緒に暮らせるのかしら・・・。」
上の息子も、やはり「何か」を感じて困っている様子だったので、私だけの神経過敏とか思い過ごしじゃないのは取りあえず判った。
息子は言った。
「神経過敏も何も、ここまで大きな画面(狭いマンションでは46型で十分「大きい」のだ)とこれくらい響くスピーカーだと、この迫力だけでも、こっちは身の置き所がないみたいになって当然なんじゃないかなあ。」
「迫力」で、先住者の我々の方が負けているということらしい。
「困ったね・・・(ため息)」と私。
でも・・・と考え直して続ける。
「たぶん慣れるよ。大抵のことには、人間は慣れる(笑)。」
それから4ヶ月。確かに・・・みんな「彼」に慣れた。
その間には、下の息子(我が家のメカ担当)の大変な努力があったらしい。「仕様通りの性能を発揮させて、謳い文句通りの映像を画面に映し出す」ことが可能になるまでには、予想以上に時間がかかったのだと、後から聞いた。私はソンナコトは知らなかったので、いつの間にか少しずつ「美しく見えるよう調整を重ねた」映像を、当然のものと思っていたのだ。
話を聞いてから、不思議に思って訊いてみた。
「販売店側の人がうちまで運んできたときに、どうしてある程度まででも、そういう調整をしてくれなかったのかなあ。」
「それは売る側の仕事じゃないから。」という一言の後、納得のいかない顔をしている私に、(仕方なく?)もう少し説明を足してくれた。
「うちのテレビには色んな他の器機が繋がってるけど、それがみんな、解像のレベルとかが違ったりするの。器機自体だけじゃなくて、それらを繋いでるケーブルの性能レベルもあるから、全体としては一番低いレベルに結局合わせられてしまう。なかなか高いレベルの映像にはならないわけ。だから・・・あーたらこーたら・・・。」
「それでも、今見てるこのWOWWOWの映像なんかは、最高レベルが出てると思うよ。どのチャンネルでも、いつでも・・・ってわけにはナカナカいかないけど。」
確かに・・・その時映っていた映画の一場面、瑞々しい森の中の風景は、驚くほど美しかった。私が一瞬、家のテレビを見ているのだということを忘れそうになるくらい。最初感じた、圧倒的ともいうべき「違和感」が薄らいでいったのは、時間が経ったことによる慣れもあっただろうけれど、そういう風に視覚的な微調整をしてくれたことも大きかったのだと思う。
そういう風にして、これまででもっとも時間(と手間)をかけて、新しい「家族」になった「彼」のお蔭で、私はこれまで以上に「家で映画を観る」楽しみが増えた。体調のせいで、家に籠もって暮らす日が増えてきたこともあって、私は、これまでなら「いつかスクリーンで観よう」と思ったであろう映画も、録画して家で観ることに躊躇いが無くなった。(大体、一度観てもあっという間に忘れてしまう。)
そんな「おうちでシネマ」した映画の感想も、これからは書いてみようかな・・・などと思ったりもする。観た後の自分の中に、感想(ノヨウナモノでもいいから)が少しは残るような、丁寧な観方をしたいな・・・とも。
もちろん、スクリーンで観るのが大好きなので、冷房の季節が終わったらまた映画を観に行きたい。どんなに「彼」の映像が、音が、良くなったとしても、あの暗闇の魅力と、帰り道の余韻は、私にとってはまた別のものだから。
でも・・・とにかく、すべてがどんどん過ぎ去っていく。
毎日、「ただ暮らしている」だけで一日が終わってしまう。それがなんだか・・・私は淋しいのかもしれない。だんだん自分が枯れ葉か何かのように、実体のないモノになっていく気がして。
ヒューマンな家族とメカな「家族」に囲まれて楽しく暮らしているのに、どうしてこんな風に感じるんだろう。これはこれで、また人生の変わり目にいるのかなあ・・・。
夏の終わりはいろんなことが淋しく感じられますよね~。
若い頃はただただ涼しい秋が来るのがうれしく
淋しいなどと思っても見ませんでしたが。
年齢だけでなく、家電をはじめネットや街や人のありようや
社会のいろんなことがどんどん変わっていって、
置いてけぼりになっていくのも、
淋しさをますます感じさせてる気がします。
疎外感や無常感が押し寄せてくるんでしょうか。
私も大画面のTV、苦手です!
うちのは21型でDVDを見るときくらいしか使わないのですが、
実家に帰ると50インチ以上で音も大きく、
耐えがたい圧迫感です。
TV局の番組のセットやCMのケバケバしい色づかいにも
うんざり。
たしかに、しばらくいると馴れてくるんですが、
本当は馴れないほうがいいんじゃないかと思ったりします。
「夏の終りのト短調」・・・って言われて
なんだか腑に落ちた?感じになりました。
(大島弓子さんのマンガは本当に好きだったけど
今となると、どれがどのタイトルだったか思い出せない程度のファン(笑)。)
>社会のいろんなことがどんどん変わっていって、
置いてけぼりになっていく
っていうのも、当ってるんでしょうね。
仰るとおり、年齢だけじゃなくて。
特に最近は、日本全体が「どーなってる(なってく)んだろ」状態?なので
もう私にはついて行きようがない・・・っていうのもあります。
>私も大画面のTV、苦手です!
わーい、仲間仲間~(笑)。
うちの場合、テレビは昔はゲームのモニター、今は映画の再生機になってます。
所謂テレビ番組としては、ニュースとか動物関係とか
ごく限られた番組しか観てないので
今回大型化しても、まだなんとか「慣れ」ましたが・・・。
最初届いたときは、普通にテレビ放送(民放)を映して業者さんが調整してくれてたので
その間はもう、家中どこにもに逃げ場がなくて
本当に「度肝を抜かれた」体験の連続!でした。
確かに・・・「本当は慣れない方がいいんじゃないか」っていう気もします。
(うちでも、自称アナログ人間の上の息子が
同じことを言ってたと思います。)
なんでもそういう面がありそうですが
テレビも大型になると「カラダに悪い」気がしますね・・・。
昭和40年代に買った掃除機、扇風機、ミキサーは2、30年は持っていましたよ。
それにくらべてテレビや洗濯機の寿命が短いのは毎日使ってたからでしょうか?そう考えると冷蔵庫ってなかなか丈夫ですね。
ムーマさんちは、メカ担当さんがいらっしゃるからいいですね。我が家は全員無頓着で、テレビが壊れて1年以上もテレビなしってこともありました。
ところで、おうちでシネマ、いいですね(^o^)。
私も8月に『シングルマン』『正義のゆくえ』『ラブ・アクチュアリー』(マーティン・フリーマンを確認しました。)『卒業の朝』『ラースと、その彼女』を観ました。全部、面白かったです!『卒業の朝』はご覧になっていますか?『シングルマン』はスクリーンで観たいなぁ。(『月に囚われた男』と『マイ・ブラザー』がなかったので、他のTUTAYAに遠征しなくちゃです。やれやれ。)
>昭和40年代に買った掃除機、扇風機、ミキサーは2、30年
ホント、家電製品って少なくとも20年は保つもの・・・
っていうイメージがありましたね。
最近の製品は、(我が家の場合)6~7年で故障が起き始める気がします。
カシコくなって、色んなコトに気を遣うようになったら
疲れやすくなったのかな・・・なんて感じもします(ちょっと気の毒)。
それとも単純に、それくらいで次を買って欲しい・・・っていう
企業の論理?なのかしら(^_^;。
>我が家は全員無頓着で、テレビが壊れて1年以上もテレビなしってことも
そういうのって、カッコイイですね~ヽ(^o^)丿。
でもまあ、うちは「テレビ放送」がはいらないと、各人各様に困る(らしい)ので
放っておいても、誰かがナントカしてくれる~っていうメリットがありますが(^_^:)。
ところで8月のおうちでシネマ、私は何観たかなあ・・・(既に思い出せない)
えーと、『やがて来る者へ』『あしたのパスタはアルデンテ』『フリーダム・ライターズ』『美しい夏キリシマ』
それに『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』・・・
あ、『主人公は僕だった』っていうのも(偶然)観ました。
『やがて来たる者へ』は以前TAOさんがmixidで紹介して下さってて
チャンスがあったら、絶対見ようって思ってたので
WOWWOWだったかBSだったかで放映されたとき、録画して観ました。
『卒業の朝』は観てないです。
ケヴィン・クライン、エミール・ハーシュ・・・面白そう! 観たくなりますね(^o^)(私もTUTAYAへ行こうかしら)。
『マイ・ブラザー』は『ある愛の風景』のリメイクなんだ・・・。
『シングルマン』は、以前、もうスクリーンでは当分観られないかな~って思って
でも、どうしても観たくて、古いテレビで観たことあります。
その時、これはスクリーンで観たい・・・ってしみじみ思いました。
私最近、どこかで予告編見たような気がして仕方ないんですが、
夢ででも見たのかしら・・・(ソウイウコトもたまにあるので(^_^;。)
それなら正夢になるといいなあ。
『主人公は僕だった』の公式サイト、面白かったです。クッキーをミルクに浸けて・・・・(^ー^)。
エミール・ハーシュって『イントゥ・ザ・ワイルド』の人だったんですね。いま、思い出しました。
『ソーシャルネットワーク』の彼や、あと、最後のワンシーンに登場した男の子、見たことあるけどどうしても思い出せない彼も出てます(^_^;。
ケヴィン・クラインの出演作にハズレなし。自分が観たいと思うような作品に出演することにしているそうで、気が合うわ~(^_^)。
(むかしは、マイケル・ケインと名前がごっちゃになっていました。)
『シングルマン』はひたひたでいいですよね~。
正夢になりますように(-人-)。
いつもより「おうちでシネマ」してたんですヽ(^o^)丿。
『主人公は僕だった』は、予備知識なしに観たので
キャストの豪華さ!とストーリーのヘンテコリンさ?に驚きました。(そうそう公式サイト、明日絶対見に行かなくちゃ。)
でもあの主人公の俳優さん(ウィル・フェレル)、「すごーくよく知ってるけど誰だっけ?」状態で
後で調べて、もうビックリ!!
あのスケーターと同一人物・・・いや~スゴイ人やと感心しました(^o^)。
「ケヴィン・クラインの出演作にハズレなし。」って本当ですね。
最初に観たのは(後から考えると)『ソフィーの選択』で
観た当座は、正に「関わり合いになりたくない男性(キャラ)その1」だと思ったんですが・・・(^_^;。
「自分が観たいと思うような作品に出演することにしている」と言われると
なんだか納得してしまいます。
それにしても、役柄の幅の広いヒトですね。(映画の幅も、同じく広い・・・(^_^;。)
『卒業の朝』では「老教師」役?とか。
出演している若い俳優さんたちにも興味があるので
なんとかして観るゾ~って思ってます(^o^)。
あ、『やがて来たる者へ』はオルミ監督の下で長年働いてた方が監督で
観ていて自然に『木靴の木』を思い出しました。