眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『悪人』

2012-05-09 13:32:47 | 映画・本

ちょっとだけ長い「ひとこと感想」その12。

 全編を通じて、登場人物たちのほとんど全員から感じさせられる、言いようのない寂しさ・・・。

映画の後で、私は自分がもしヒロインの立場だったら、自首しようとしている彼を引き留めるかどうかと考えて、答が出ないまま何日もそのことを抱えていた記憶がある。

彼女が引き留めたのは、要するに「今ここで、この人と別れてしまいたくない。」という、切羽詰まった、でもおそろしく単純な気持ちだったんじゃないかと私は思った。そして、(彼女くらいの年齢なら?)私でも衝動的にそういう行動をとるかもしれない・・・という気もした。自分の中にもそういうモノが眠っているのを、若い頃も若くなくなってからも、私はいつもどこかで感じてきたから。

でも実際は・・・多分私にはできない。

それまでの自分が持っていたものをすべて捨ててしまうこと自体は、多分私にもそう難しくない。

でも、それが相手の人生を更に狂わせるだろうということが、瞬時に見えてしまう?私には、そういう決断は下せない。

私には、ヒロインのこの時の自由さがとても眩しく見えて、余計に答が出なかったのかもしれない。その自由さはそのまま彼女の孤独の深さでもあって、それほどこの人は寂しかったのだ・・・とわかっていても。

・・・そんなことを、あれこれボンヤリ考えた。



 

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4 コメント

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Unknown (更年期)
2012-05-09 19:24:43
初めて?ムーマさんのおすすめ映画をもう既に観ていたって(笑)
本当の悪が何なのか?娘を殺された父親が彼女の事を山に捨てた若い男に襲いかかるシーンは、胸が痛かった。
妻夫木君演じる殺人犯と仲間由紀恵演じるかくまう女性の恋愛だけではない何か。昨日「告白」を観たんですが、主人公達以外の手を汚さない人達の怖さは「悪人」の周囲の人々と同じ気がしました
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Unknown (ムーマ)
2012-05-10 01:25:32
>更年期さ~ん 

私は元々、本当に悪いことをする人たちは、そもそも自分の手を汚したり、「犯人」としてマスコミで取り上げられたりはしない・・・っていう思い込みみたいなモノがあるのかもしれません。

だからこの映画の場合も、本当の「悪」とは何なのか、「悪人」というのはどういう人間を指すのか、といったことは、あまり改めて考えませんでした。(正直考える気にならなかった・・・というか。)
更年期さんが言っておられるようなことが、映画自体のテーマなんだとは思うんですが、それでも・・・。

私は結局のところ、「特別の恋」にたまたま出会った女性の話・・・という部分だけを、目を凝らして見ていたのかもしれません(笑)。

>娘を殺された父親が彼女の事を山に捨てた若い男に襲いかかるシーンは、胸が痛かった。

あの父親も、加害者の祖母も、本当に気の毒でなりませんでした
(どうしてこんなことになったのか。自分の育て方が悪かったのか・・・でも、たとえ何をしようと娘は戻らないし、殺人犯になった孫に元の人生を取り戻してやることも出来ない・・・。)

>。昨日「告白」を観たんですが、主人公達以外の手を汚さない人達の怖さは「悪人」の周囲の人々と同じ気がしました

そう、私も前に『告白』観たときに、当事者達を「遠巻きにして見ている」(影では勝手な憶測や誹謗中傷をする)圧倒的多数の人たちって、一体何なんだろう・・・って思いました。

でも、私自身は要するにそういう「圧倒的多数」の一人なんだな~と思うと、余計に「悪」「悪人」を考えるのは難しくなるな~なんて思った記憶もあります(夜更かししてて、言うことが支離滅裂になってきました。ごめんなさ~い。)
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報告とお礼です。 (ヤマ)
2012-07-31 20:20:46
ムーマさん、こんにちは。

昨日付の拙サイトの更新で、こちらの感想を
いつもの直リンクに拝借しております。

数々『悪人』の評は読みましたが、
「ヒロインのこの時の自由さがとても眩しく見えて…
 その自由さはそのまま彼女の孤独の深さでもあって、
 それほどこの人は寂しかったのだ」というのは
なかなか書けない文章だと思いました(感心)。

“眩しいほどの自由さ”か…。
あのときというのをそのような形で感受し、
そこに孤独の深さを観ることのできる感性こそが
僕には少々眩しく見えましたよー。

どうもありがとうございました。
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ありがとうございます(^o^) (ムーマ)
2012-08-01 13:39:01
>ヤマさ~ん

直リンク、ありがとうございます(^o^)。
いつも報告に来て下さって恐縮です。

私はこの映画を観たのが遅かった(再上映の時でした)こともあって
あちこちでいろんな感想が、既に目に入っていて
もう自分がわざわざ書くことないな~なんて思ってました。

だからこの記事は、自分が一番強く思ったことを1つだけ
(記念に?)書いておこうと思っただけで・・・

ヤマさんが褒めて下さって、とってもとっても嬉しいです。

私は多分、「特別の恋」にヨワイんでしょうね(^_^:
そういうものに偶々出合ってしまったら
そこで人生が変わってしまっても当然・・・と
本気で思っているようなフシが、若い頃からずっとあるというか・・・(^_^:

この歳になっても、スクリーンの前では一瞬
そういう本来の自分?が顔を出して
この映画のヒロインを「自由だ」と感じてしまう。
まあ、三つ子の魂百まで・・・みたいな話です(^_^:

さっきヤマさんの日誌を久しぶりに再読しました。
主要な登場人物たちの姿が、ヤマさんの文章から蘇り
いい映画だったな・・・と、改めてしみじみしました。

どうもありがとうございました(^o^)
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