日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - 魚真

2020-08-23 20:08:47 | 居酒屋
虫の知らせということでしょうか。「魚真」を引き合いに出すや、衝撃的な知らせが飛び込んできました。今日限りで閉店するというのです。
一時は「あて」と並んで最も愛用していた店の一つです。特に五月と六月は頼りきりでした。持ち帰りの営業が打ち切りになってからというもの、一転して無沙汰をしてはいたものの、Webサイトを通じて動静は確かめていたつもりです。先週末、盆に合わせて一日だけ休むという告知を見た記憶があります。その時点では閉店の告知など一切ありませんでした。その事実からしても、急転直下の出来事だったのは明らかです。何があったのかはさておき、今日限りでは四の五の言ってもいられません。こうして別れの挨拶がてら急行するという顛末です。

文面には移転のためとありました。九年間営業してきた四谷の店を一旦閉め、新天地を探すというのがおおよその内容です。その文面から察せられたのは、開店から使ってきた設備に寿命が迫る中、よりよい物件を求めて、改装せずに移転する決断を下した可能性です。騒動が表面化した後もなお、満席を理由に振られたことが一度ならず二度もあります。客足が途絶えたための閉店とは思われません。飲食店がどこもかしこも大打撃を受けているこのご時世、賃料の相場が下がったのに乗じ、あえて攻勢に出た可能性は考えられます。前向きな理由があってのことならば、むしろ歓迎すべきこととも思ったのです。しかし事実は思った以上に深刻でした。
まず懸念されたのは、別れを惜しむ常連客で混み合ったり、早めに品が切れたりして振られるという可能性です。それは幸い杞憂に終わり、カウンターのほどよい位置に収まって、最後の酒と肴もありがたくいただきました。しかし、そろそろ辞去しようかという最終盤に、残念な現実を知ることとなります。今更来るかという頃合いで飛び込んだ一人客は、口ぶりからして近隣の同業者でしょう。店先にあった告知で閉店を知り、慌てて駆けつけたようでした。その同業者と板前が話していたところによると、直接の原因は大家からの通告だったらしいのです。契約の更新を拒否されて、お盆までに明け渡すよう迫られたものの、それは無理だと食い下がり、月末までに退去することで手を打ったというのがおおよその内容でした。撤収に要する日数を差し引いて、今日限りでの閉店に落ち着いたということでしょうか。ならば告知が唐突だったのも止むなしです。

断片的に聞き取れた内容から推察した限りのことではあるものの、事実とすれば本来許されない話です。医業は尊く、飲食業は卑しいという偏見に基づいて、いわれのない差別を受ける人々が出始めているということだからです。しかるにお上のしてきたことといえば、そのような差別を黙認しつつ、横文字混じりの振興策を始めとした大企業の利権を守ることばかりでした。あまつさえ、問題が起きるやいなや一人一人の自覚だと議論をすり替え、責任を個人に擦り付けています。卑劣な仕打ちの割を食った最たる業種の一つが飲食業であり、その被害はいよいよ深刻化しつつあるのが現状です。強きを助け、弱きを挫く政策には到底同調できません。その片棒を担ぐような「自粛」は一切行わないと、改めて宣言しておきましょう。
そのようなわけで、移転するとはいうものの、物件を探そうにも一筋縄にはいかないのかもしれません。ひとまずは系列店に籍を置き、次なる機会を待つというのが店長の弁です。雌伏の時を乗り越えて、新天地で再会できることを願います。

魚真 四谷店
東京都新宿区四谷1-18-5 綿半野原ビル別館B1F
03-3351-2622
平日 1700PM-2300PM(LO)
日祝日 1600PM-2300PM(LO)

酒一筋
楯野川
不動
刺身盛り
石もち唐揚
鮎塩焼
蟹クリームコロッケ
のっけ寿司
味噌汁
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