日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - おく谷

2020-04-18 18:57:22 | 居酒屋
七時まであと数分を残し「ととや」を辞去。間髪置かずに飛び込めば、もう一杯だけいただける状況です。ともすれば失礼になりかねない注文でも、なじみの店なら気兼ねがありません。今夜も「おく谷」の暖簾をくぐりました。
先週は月曜と土曜の二度にわたって世話になりました。実は、今週も買い出しのついでに立ち寄り一杯だけいただきました。それまでは年に一度か二度顔を出すのがせいぜいだったにもかかわらず、俄に常連面をするのはいかがなものかと我ながら思います。しかし今は四の五の言っていられません。わずかでも飲み食いすれば、いくばくかの支援にはなるからです。
荒木町の呑み屋街を南北に貫く三本の通りのうち、当店があるのは最も静かな柳新道です。元々控えめだった明かりはますますまばらになっていき、開いているのはここを含めてわずかに二軒しかありません。その中の一つが長年世話になってきた店というのも何かの縁でしょう。当面は積極的に足を運ぶつもりです。

おく谷
東京都新宿区荒木町8
03-3351-6451
1800PM-2230PM(LO)
日祝日定休

開運
お通し(鯛の子)
あぶり鯨
こしょう茶漬
コメント

四谷赤坂麹町 - ととや

2020-04-18 18:16:57 | 居酒屋
予報通りに朝から土砂降り、つまり月曜の再現となりました。一つだけ違うのは、夕方に上がって日が射してきたことです。これなら外で一杯やるにもやぶさかではなくなってきます。しかしこれが一筋縄ではいきません。開いている店がますます減ってきたからです。先週末も一応開けてはみたものの、あまりに人出が少なすぎ、話にならなかったのでしょうか。当たりを付けていた大衆酒場も閉まっており、その足で荒木町に流れ着いても状況には大差なし。またしても「おく谷」の世話になる方向へ一度は傾きかけたところ、「ととや」の赤提灯がついており、そのまま吸い込まれるという顛末です。

「居酒屋味酒覧」には掲載がないものの、教祖が古くから推してきた都心の名酒場の一つです。近年では「タキギヤ」とともに番組で紹介されたこともあります。しかし、自身にとっては十年前に訪ねたのが最初で最後です。気に入らなかったわけというわけではないものの、推奨店の多くが持つ、さすがと思わせるだけの傑出したものが感じられなかったとでも申しましょうか。そしてその印象は今回も大筋で変わりませんでした。
店先の赤提灯と縄暖簾がよい味を出しており、直線状のカウンターにテーブルがいくつかという店内の造りも、絵に描いたような居酒屋のそれです。カウンターから見上げた位置には黒板が掲げられ、品書きが縦書き三段組みで綴られます。ただしその品書きには、刺身、煮物、炭火、ご飯、酒肴の順に、どこの店にもありそうなてらいのない品々が並んで、日毎に大きく入れ替わりそうな様子もありません。酒は神鷹の普通酒一本です。少なくとも品書きに関する限り、やはり傑出したものまでは感じられないというのが率直なところではあります。

しかし、歳を重ねることによって、若かりし頃は見えなかったものが見えてきます。一見すると平凡でも、また行きたくなる店はあるというのが教祖の弁です。ここもその手の部類に属する店の一つでしょう。特別な肴はないものの、これは毎日でもいただけそうな品々ということでもあります。何度か通えば序盤、中盤、終盤の組み立てまで確立してきそうです。カウンターの奥に丸顔の店主、中程にベテランの板前が立ち、客席と玄関脇の炭火を手伝いのお姉さんが仕切っており、その一挙手一投足が様になっています。古くからの推奨店らしい老練さを感じる店です。
そして何より印象的なのは、何事もなかったかのように賑わう店内です。このご時世、大人数のお客はさすがに見当たりません。しかしテーブルは一つを除いて埋まり、カウンターにも自分を含め三人の一人客が。それぞれ静かに酒を酌む様子は、宵の口のわずかな時間とはいえども、酒場で呑めるありがたみを噛みしめているかのようでした。世間が殺伐とする中、思わずほっとさせられる一幕です。

ととや
東京都新宿区荒木町10-17
03-3357-3319
1730PM-2100PM(LO)
日祝日定休

神鷹二合
お通し(おひたし)
平目
春キャベツ煮物
銀だら
コメント