日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

四谷赤坂麹町 - あて

2020-01-18 21:08:18 | 居酒屋
雨は織り込み済みでした。とはいえ夜まで延々降るとは予想外でした。これでは遠出をする気力も湧きません。歩ける範囲で一杯やるのがせいぜいです。しかしむしろよい機会ともいえます。近ければ近いほど「灯台下暗し」になりがちだからです。久々に「あて」の暖簾をくぐりました。

「嘉多蔵」なき後、徒歩圏内では最も愛用してきたといってよい飲み屋の一つです。ただし、かつての店長が独立し、荒木町にほぼ同じ路線の「タキギヤ」を開いてからというもの、そちらを贔屓にしてしまい、この店からは足が遠のき現在に至りました。現店長に代わってからはこれが二度目ということになります。
この雨なら飲み屋も閑古鳥かと思いきや、危うく足をすくわれるところでした。暖簾をくぐると、接客のお姉さんから予約はあるかとたずねられ、俄に不穏な空気が漂ってきました。しばらくすると店長が現れて、二分だけ待つようにとの案内が。狭いがとの断りつきで通されたのは、カウンターに一つだけ残った空席でした。実際のところかなり狭い席ではあります。先客は三組六人、本来ならそれで札止めとなってもおかしくはありません。それでも店長自ら先客の皆様方にお願いし、少しずつ詰めることで入れてもらえたというのが真相なのでしょう。断られてもおかしくはなかったわけであり、店の計らいには感謝しなければなりません。もちろん先客の皆様方にもです。

賑わっている理由の一つと思われるのが、土曜限定という日本酒飲み放題です。飲み放題だからといって、銘柄が限られるわけではありません。元々の値段が一合当たり安くとも800円することを考えると、二合で元が取れるという大盤振る舞いです。一部の品は切れており、品書きにある酒を全て選べるというわけではないものの、そのことを割り引いても余りある価値があります。
加えて幸運だったのが、余ったからとの理由により、肴を何品も分けてもらえたことです。特に秀逸だったのは塩辛でした。水分を極限まで抜き旨味を凝縮したところは、「籠太」の塩辛を彷彿させます。ただし、酒が負けてしまうほど濃厚なあちらの塩辛に対して、より酒に合わせやすいよう工夫されているようです。西京漬けとの違いが気になって選んだ鰆の一夜干しは、おそらくハラスの部分を干したものでしょう。鰹の腹皮とも一味違う、噛めば噛むほど滲み出る旨味が肴には好適。いずれもかつてはあり得なかった品々です。伝統を受け継ぎつつも現店長の独自色を交え、さらなる進化を遂げているのは天晴れでした。

あて
東京都千代田区九段南4-8-34
03-3262-0044
平日 1700PM-2245PM(LO)
土曜 1600PM-2215PM(LO)
日祝日定休

奥能登の白菊・高津川・高千代・神亀・遊穂
突き出し二品(真ダラ子煮・カンパチ握り)
イワシ梅煮
鰆の一夜干し
からすみ
いか塩辛
茄子煮付け
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