日の入りが一年中で最も早いこの時期、その分早く呑めることになりました。しかし、早ければ早いほどよいというものでもありません。土曜の七時という、呑み屋が最も混む時間に重なってしまったからです。こうなると、目当ての「新生丸」に入れるかどうかも微妙になってきます。前回は八時過ぎに訪ね、先客が出るところとたまたま重なって、どうにか滑り込んだものの、あと五分でも早ければ振られていたという結果でした。それだけに、七時台では相当厳しかろうと覚悟しました。
果たしてその予感は的中してしまいました。目を疑うほどの人だかりが店先にできているのです。早くから始めた宴会客が出た直後かと最初は思いました。しかし、遠巻きに眺める限りそういうわけでもなさそうです。先客の片付けが済むのを待っているだけとすれば、彼等が入った後であっても、一人客が滑り込む程度の余地は残るかもしれません。しかし、仮にそうして入れたとしても、賑やかすぎて落ち着かない可能性は十分に考えられます。いずれにしても、一旦退却するしかないと判断し、代わりに「かね田食堂」を訪ねるという顛末です。
「新生丸」と並ぶ教祖の推奨店の一つですが、最後に訪ねたのは七年近く前のことになるようです。これは、九時が看板という条件からして、「新生丸」との掛け持ちが難しいという理由によります。それに加えて、直近には満席の立看板が出ていて振られたこともありました。その事実から疑われたのは、このようなことが常態化している可能性です。当地を題材にした国民的アニメ番組の劇中にも登場するという有名店の存在が、口コミサイトの普及により全国的に広まれば、週末には予約客で早々に埋まってしまってもおかしくはありません。しかし幸い、それはこちらの思い込みに過ぎませんでした。「新生丸」へ向かう途中に下見のつもりで寄ったところ、満席の立看板がなかったため、あちらが混んでいるのを見て、すぐさま見切りをつけたのでした。近年すっかり縁遠くなっていたこの店を、久々に再訪できたという点では、怪我の功名とでもいうべき結果です。
相当混んでいそうだった「新生丸」とは対照的に、こちらは早くも終盤の様相を呈していました。カウンターの先客は一組残っているだけで、小上がりの半分は空き、奥にある座敷からも先客らが三々五々引き上げてきます。そのほとんどが相当通い慣れたらしき地元客です。繁華街から離れた場所にぽつんと佇むこの店が、これほど繁盛するという事実からしても、根強い人気のほどが一目瞭然です。
何故にそこまで流行るかを、自身の趣味的見地を抜きにして考えると、収容力が大きい上に、どの品を選んでも外れがなく、それぞれの品に十分な量があるため、大人数の宴会にはとりわけ好適という要因を挙げることができます。これは、独酌には必ずしも向かないということでもあります。頭上に短冊の品書きはあるものの、全ての品を網羅しているわけではありません。手元にある冊子をいちいち開かざるを得ないのが、いささか野暮に感じられます。目の前にある冷蔵ケースに高さがあり、カウンターの向こう側に立つ店主の仕事ぶりがよく分からないのも惜しいところです。
とはいえ、商売道具と食材を大切にする実直な仕事ぶりはカウンター越しにもありありと窺われます。先客らが店主に一声かけてから帰っていく光景も、店と店主に対する信頼の厚さを物語っているかのようでした。
★かね田食堂
静岡市清水区入江1-1-23
054-364-8446
1700PM-2100PM(LO)
日曜及び月曜定休
英君二合
刺身盛り合わせ
たち天ぷら
まご茶漬
果たしてその予感は的中してしまいました。目を疑うほどの人だかりが店先にできているのです。早くから始めた宴会客が出た直後かと最初は思いました。しかし、遠巻きに眺める限りそういうわけでもなさそうです。先客の片付けが済むのを待っているだけとすれば、彼等が入った後であっても、一人客が滑り込む程度の余地は残るかもしれません。しかし、仮にそうして入れたとしても、賑やかすぎて落ち着かない可能性は十分に考えられます。いずれにしても、一旦退却するしかないと判断し、代わりに「かね田食堂」を訪ねるという顛末です。
「新生丸」と並ぶ教祖の推奨店の一つですが、最後に訪ねたのは七年近く前のことになるようです。これは、九時が看板という条件からして、「新生丸」との掛け持ちが難しいという理由によります。それに加えて、直近には満席の立看板が出ていて振られたこともありました。その事実から疑われたのは、このようなことが常態化している可能性です。当地を題材にした国民的アニメ番組の劇中にも登場するという有名店の存在が、口コミサイトの普及により全国的に広まれば、週末には予約客で早々に埋まってしまってもおかしくはありません。しかし幸い、それはこちらの思い込みに過ぎませんでした。「新生丸」へ向かう途中に下見のつもりで寄ったところ、満席の立看板がなかったため、あちらが混んでいるのを見て、すぐさま見切りをつけたのでした。近年すっかり縁遠くなっていたこの店を、久々に再訪できたという点では、怪我の功名とでもいうべき結果です。
相当混んでいそうだった「新生丸」とは対照的に、こちらは早くも終盤の様相を呈していました。カウンターの先客は一組残っているだけで、小上がりの半分は空き、奥にある座敷からも先客らが三々五々引き上げてきます。そのほとんどが相当通い慣れたらしき地元客です。繁華街から離れた場所にぽつんと佇むこの店が、これほど繁盛するという事実からしても、根強い人気のほどが一目瞭然です。
何故にそこまで流行るかを、自身の趣味的見地を抜きにして考えると、収容力が大きい上に、どの品を選んでも外れがなく、それぞれの品に十分な量があるため、大人数の宴会にはとりわけ好適という要因を挙げることができます。これは、独酌には必ずしも向かないということでもあります。頭上に短冊の品書きはあるものの、全ての品を網羅しているわけではありません。手元にある冊子をいちいち開かざるを得ないのが、いささか野暮に感じられます。目の前にある冷蔵ケースに高さがあり、カウンターの向こう側に立つ店主の仕事ぶりがよく分からないのも惜しいところです。
とはいえ、商売道具と食材を大切にする実直な仕事ぶりはカウンター越しにもありありと窺われます。先客らが店主に一声かけてから帰っていく光景も、店と店主に対する信頼の厚さを物語っているかのようでした。
★かね田食堂
静岡市清水区入江1-1-23
054-364-8446
1700PM-2100PM(LO)
日曜及び月曜定休
英君二合
刺身盛り合わせ
たち天ぷら
まご茶漬