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TIME IS ON MY SIDE

シンガポールは今日も暑いなあ。

反三国志。

2009-04-07 | 本、映画、音楽
先日、書店でおもしろい本を見つけました。

当時の王朝に、媚びて書かれた「三国志」の内容なんか
ぜんぶインチキ!嘘っぱち!
ひっそり民の間に伝えられてきた、こっちがホンモノだい!

…という、著者の衝撃的な独白からはじまる「反三国志」。
これが非常によくできている。



前半は失われ、見つからないという設定のこの作品。

劉備の軍師・徐庶が、母親の字をまねたニセ手紙にだまされて、
劉備の元を去り母のとらわれる魏に向かうところから始まっている。

三国志ファンの認識では、そのまま徐庶は魏にゆき、息子がだまされて
魏にやってきた事を知った徐母が「私がいるからこんな事に!」と
自害する、というもの悲しい展開。

…のはずが、いきなり水鏡先生によりニセ手紙は見破られ、
徐庶が魏に行かないだけでなく、諸葛亮の策で趙雲が徐母を
取り返す。

って、なんと痛快な!以後、劉備をはじめ関羽、張飛、諸葛亮、
みなが失意のうちに死んでゆき、最終的に蜀が魏に滅ぼされるはずが、
失意のうちに死ぬのは曹操や孫権で…

破竹の勢いで勝ちすすむ劉備の蜀漢軍が天下統一を果たすこの物語は、
蜀への思い入れの深い者にはたまらない展開。関羽だって死なない!(泣)

…なのですが、でも、何だか。
うまくいくはずがうまくいかず、思うさまに事が運ばず、
また上に媚びる者が出世したり、誠実な人間が淘汰されてしまったりもする
人間の世の現実、悲しさや切なさも真正面から描かれている、
正史・演義のほうが真実味があるなあ、共感できるし詩的だなあという風に、

この作品を読むとさらに三国志の魅力が明らかになるという…
三国志を読みすぎて飽きてしまった方に、オススメの作品です。

個人的には、曹操が背が低くて下品で、顔の曲がった猫背のいやらしい
おじさんと書かれているのがショックでしたけど。(泣)

【読後感】
非常におもしろかったのですが…きっと著者は趙雲と馬超ファン。
彼らは確かに若くて勇猛でかっこいいんだけど、彼ら2人だけが余りにも大活躍、
の感が否めず…まあ、徐母奪還の時点で劉・関・張の3人は40代後半以上、
となると仕方がないのかもしれませんね。(泣)

デトロイトメタルシティ。

2009-04-06 | 本、映画、音楽
日本映画のシンガ公開は、日本公開から
ずいぶんたってから、の事が多いです。

なので、私が映画の感想を書くと、日本の皆様は
「ふ、古いなあ」とおそらく思われる事でしょう。

そんなわけで今頃「デトロイトメタルシティ」です。(笑)
ここにも時々遊びに来て下さるAkiko様の映画レビューを拝見し、
とても気になっていたので。

いやあ、面白かったです。よくできた映画ですね…
笑えるシーンの連続に大爆笑、だけどホロリと涙を誘われる
場面もあり、本当に見終わって気分爽快という感じでした。

会場のシンガポーリアンたちも、皆さん大・大・大爆笑。


(↑「Death Note,L changes the world」とのコピーがあります。確かに!)

それにしても松山ケンイチさんって、すごい俳優さんですね。
ご覧になった方はよくご存知かと思いますが、

彼の演じる純朴な大分青年・根岸くんの、キュートでちょっとキモい
キャラと、デスメタルバンド・DMCのカリスマヴォーカル・クラウザー
としてのキレぶり、さらにそのナイーヴな内面での葛藤は、ホントに
見事な演技力というか、怪演でした。(爆笑)

とにかく映画でこんなに大笑いしたのは、本当に久しぶり。
夫も「もう1回行きたいくらいやな」と大絶賛でした。
それにしても母国語でストレートに内容が伝わって来るのって、
幸せだなあ~。(泣)

言葉といえば…根岸くんのお母さんが「地獄から来られた」と
クラウザーさんを紹介されて「へええ~四国から?」と勘違いする
セリフが英語字幕で「from Australia?」となっていたり、

根岸家の皆さんが「クラちゃん」と呼びかけるプリティさが
「Santa Claus」と表現されていたりして、それも笑えました。

しかし今も根岸くんの歌うあの「恋がなんちゃら…」とか
「チーズタルトがなんちゃら…」という、キュートで甘~い曲が
頭をまわり、DMCの追っかけファンのように苦しんでいます。(笑)

向田邦子の手料理。

2009-04-03 | 本、映画、音楽
世の中に、著名な作家さんが美味しいものについて
綴られた作品は星の数ほどありますが、

私の好きな「美味しいもの」作家ベスト3は
池波正太郎、檀一雄、向田邦子。

いずれも「美味しいもの」作家などとお呼びしては
バチが当たりそうな、それぞれの分野で大活躍された
偉大な作家の方々ですが…

ご存知の方も多いと思いますが、
このお三方の「食」にまつわる文章・描写は、
それぞれの作家としての個性がじわりじわりと
にじみ出た、何とも味わい深いもの。

そしてお三方とも、世にも知れた名だたる食通で
ありながら、それを誇示することや、もっともらしく
薀蓄をかたむけることなど一切なさらない。

心のままに純粋に「食」の魅力を語られる。
その姿勢がとてもかっこ良く、好きなのです。

これも、我が家の本棚からシンガポールにやってきた1冊。
(本、とはちょっと違うのですが)



「向田邦子の手料理」(講談社)は、お料理上手な向田さんの
オリジナルレシピだけでなく、向田さんの生き方や暮らし方、
好きだったものについてのエピソードもたくさん詰まったもの。



そして向田レシピのお料理は、妹の和子さんにより
再現され、向田さん愛用の器たちに美しく盛られて登場。

といってもそのお料理たちは、気取らずシンプルで
作りやすく、美味しくって飽きがこず、
体にも良いいつものおかず。ときには酒のサカナ。

この中のいくつもが、我が家の定番になっています。

一流好み、と言われていた向田さん。
その実は、こだわり、選び抜いた結果が、たまたま
一流品だったのでは、と本の中にも書かれていますが、

本当にかっこいい女性ですよね。あこがれます。

【向田レシピのブロッコリーサラダ】

ゆでたブロッコリーに、細切りの塩昆布とさらした針しょうがを散らす。
そこにレモンをしぼりこんだレモンじょうゆをかけて。

私はしょうゆなしのレモン汁のみが好きです。(レシピにもある別バージョン)
ビックリするほど簡単、なのに目からウロコの、ハッとする美味しさです。

ザ・サイドワインダー。

2009-04-01 | 本、映画、音楽
4月ですね。

新たなスタートを切られる方、
新たな気持ちで「頑張ろう!」と
考えておられる方、たくさんおられると思います。

私は4月から・・・

このブログをはじめた最初の頃のように、
もっと好きなものの事を書こうと思ってます。

年中暑いこの国で、うまく気分の切り替えが
できないままぼんやりしている最近の自分に、
昔の自分を思い出させてバシッと気合を切れる
アルバムを1枚。

リー・モーガン
「The Sidewinder」Bluenote4157



麻薬で体調を崩し、低迷していたリーが、
再び輝きを取りもどし、このアルバムをひっさげて
シーンに華々しく再登場した。

結果これは爆発的なヒットとなり、ジャズ作品としては
非常に珍しいビルボードチャート入りまで果たし、
リーはみごとな復活を遂げたのでした。
ジャズファンには、お好きな方も多いかと思います。

もちろん私が一番好きなのは、1曲目の「Sidewinder」。

いわゆるジャズ的なリズムとはもう全然違う、
8ビートで激しく迫ってくる、攻撃的な曲。

私はこの曲を聴くと、

まさにガラガラ蛇が、乾ききって荒れはてた大地を
するすると静かに、でもその狡猾さを全身にみなぎらせて
すべってゆくようなイメージが頭に浮かぶ。

曲のイントロ部分、ボブ・クラのベース一発、
「ドゥッドゥドゥッドゥン」が鳴った瞬間に、

「よし!やってやるぞーー!」という
戦闘的な意志がふつふつと沸きあがってくる。

そんな、かっこいい曲です。
元気が出る、というよりは
気合が入る感じです。

特に、前職でのフルスロットル勤務に
気分も体調もヘロヘロで、それでもまだ全力を
ふりしぼって前へ進まねばならない、
という時には、いつも朝、この曲をかけて。

そして引っ越しのたび、必ずこのアルバムのアナログ盤を
よく見えるところに飾っていました。

久々にこのアルバムを聴いて、頭がボンヤリ南国ボケして
冴えない自分にただいま「喝!」を入れております。