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ねこやま

徒然備忘録

家日和 / 奥田英朗

2012-04-24 09:50:28 | 奥田英朗
抜粋

会社が倒産して家事に目覚めた夫。
ネットオークションに、はまる専業主婦。
凸凹夫婦の不思議な人生の波長。
いつもどおりの“家”にだって、ドラマティックな出来事はある! 

家って、やっぱり面白い。




















うん。
家っておもしろい。


●サニーデイ
インターネットオークションにはまる主婦

おもしろかった。
わたしは出品はお店側としてやったことがるけどたしかにこんな感じ!
写真とって、定型分貼り付け。
期限は3日間。
ラスト1時間で入札者現る。
閲覧数半端ないのに入札者は少ない!
出品してるほうは見るのが楽しみだよね~。
ただいらないもの処理したいってだけなら、
落札されただけでいいやって思うからほっとくんだろうけど。

そういうので評価が違ってきたりするからまた面白いんだなぁ。
この奥さんははまっちゃって夫の私物を出す始末。
ラストで奥の手使ってたのはアレはたぶん違反なんだろうな 笑


●ここが青山
会社が倒産して主婦(夫)になった夫

それを期に元職場へ復帰する妻。
その間主婦(夫)業をこなす夫。
読み終わるまでに一回もハローワークへはいかなかった。
そういう夫婦のカタチもあるよね。
なんかいいなぁー。
わたしは大黒柱なんて無理だけどね!

そしてタイトルの青山。
セイザンと読むのよね。
元ネタというか、諺は“人間到る処青山有り”からきてる。
ニンゲンではなく、ジンカンと読むんだったりする。
主人公の周りで悉く読み方を間違える人たちが登場する。

世の中、いたるところに骨をうずめる処はある。
だからふるさとを出て活躍したらいい、みたいな意味である。

またひとつ頭がよくなったなぁ、と思う。
ジンカンイタルトコロニセイザンアリ
へ~こんな言葉が。。。
迷ったり立ち止まったりした時にいい言葉かもしれない。


●家においでよ
妻が家を出て行った

主人公の夫は妻が家財道具をごっそり持っていき
長期的に別居体制に入ったというのに至ってのんき。
読んでいても、ギャンブルに目がないとか女癖が悪いとか借金があるとか
そういうことはないのでなぜ妻がでていったのかは読者にも謎。
がらんどうになった2LDKで、夫は立ちつくすどころか
インテリアをそろえはじめた!

子供もまだない夫婦で、久しぶりの独身生活に戻ったようで
最初はウキウキしているものかと思ったら
どんどん生活の基盤ができてゆき、次第に会社の同僚をあつめて
雀卓を囲み、素晴らしい音響で昔聴いていた音楽を流し
最新のテレビを買ってシアター設備も整えますます拍車がかかっていく。

これを読んだ時、男って・・・と思った。
そういえば独身の頃の部屋を思い出すと、
そこら中に行き場を失ったCDたちがうずたかく無造作に積み上げられいた。
今でもCDはあるけど、実家にはこの数倍置いてあるんだろう。
車のオーディオもカナリいいものを使っていた。
夫婦になるって、いろんなものと折り合いつけて生活するってことなんだよな。
と思い出した。
わたしも大量の漫画本と文庫本たちが実家には溢れている。
兄が戻ってきたので漫画本の処理を今からせっつかれている。
押入れに保管されている何千冊という漫画本たち。
今まで古本屋へもっていかなかったのにはそれなりに理由がある。
いつか読み返すから。
厳選された読み返しても面白い漫画本たちが残されているというのに
捨てろっていうんだよな。
嫁にいった身で置いといてくれっていうのもそうは問屋がおろさない
というのはわかるんだけど、マジで断腸の思いですよ。

なんてふと考えさせられる短編だった。
最後にはタイトルどおりになり、なんだか新鮮な気持ちの二人。
結局奥さんはなんで家出したのかわからずじまいだった。


●グレープフルーツモンスター
内職の発注先の営業マンのフレグランスは柑橘系

平凡な主婦。
スキルがないので内職でこつこつおこづかい稼ぎ。
一応国家資格の免許保持者のわたしでも、
現場を離れりゃノンスキルだからなぁ。
この主婦と同じように内職ではないけどアルバイトはしている。
そんな内職の仕事をもってくる営業マンのフレグランスに反応。
若くて不躾なこの男が夢に現われるようになった・・・・。

これが一番つまらなかった。
主人公に共感するとこも一切ないし、
なんか空しいなと思うようなラストだった。


●夫とカーテン
企業を興すのが得意な夫を持つイラストレーターの妻

思い立ったが吉日とはいったものだけれど
この夫は本当に唐突で決めたらすでに行動にでている。
わたしなら無理だわーって思うんだけど。
奥さんがイラストレーターっていう専門職も持っていることだし
事業が上手くいかなくてもなんとか食いつないでいける
ということがわかるからやっていることとはいえ・・・。
やっぱりそれなりに軍資金も必要なわけで
そこはやっぱり銀行から借り入れなわけよね。
マンション購入の為に貯めていたお金と借金で事業開始。
最初は不安定な滑り出しで、妻も自分ががんばらなくては
という気持ちからかいつもよりキレのあるイラストができあがった。
そして夫の仕事が起動にのってくると、キレがなくなっていく。

これは小説だからおもしろい!と思える話。
こんなに世の中うまくいく話ばかりじゃないよね。
チルドレン(伊坂幸太郎)の陣内を思い出した。
何やっても事がうまく運ぶやつっているよなぁ・・・。


●妻と玄米御飯
ブラックユーモア系小説家の夫はネタに困り・・・・

妻のロハスに少しうんざりしていた小説家の夫が
ついそれをネタに一遍かいてしまうというお話。
ロハスてなんぞや。
知らなかったけど流行ってるのかしらん。
身体にもいいし、地球にもやさしいっていうのがロハスなのかな。
双子のこどもたちもお肉といったら鶏肉ばかりを
食卓に並べられブーイングの嵐。
それを冷ややかな目線で見た小説、おもしろくないわけがないと思うな。
けど、それを実際に載せちゃったら夫婦生活の終焉が訪れるんだろうな~。
ラストの奥様の変りようが怖かった。
夫を送り出す彼女には悪戯心みたいなものも垣間見えたけど
本当に載せられてたら大変なことになっていたんだろうなー。
はたから見たらくすっと笑えるようなことでも
本人からしたら笑われるようなことしてるつもりないんだもんなぁ。

夫の決断は正しかったと思う。
・・・けどのどもと過ぎれば。
雑誌掲載はなしで、文庫書き下ろしってことで
忘れた頃に入れちゃえばいいと思う 笑


















全体的に見ておもしろかった。
一番すきなのは家においでよかな。
同僚が入り浸る男たちの楽園を作り上げた妻に別居されている夫。
そりゃほぼ毎日帰りが遅くてなんだかんだって嘘の理由いわれて
よその奥様方の目撃情報あったら浮気を疑うよね~。
のりこんできちゃったときにはいたたまれなかったけど。
それでなんとなく自分の妻を思い出すなんて
よくできたお話だなぁと思う。

こういうのはいいなぁ。
奥田さんは短編の方が好きかもー。


2012.04.16


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