
抜粋
老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。
同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。
文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。
「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない??敦子の頼みが、
逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。
逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。
大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。
絶望と希望を照らす作家・道尾秀介がおくる、心に染みる人間ドラマ!
私たちがあの場所に沈めたものは、いったい何だったのだろう。
五十数年前、湖の底に消えた村。少年が知らない、少女の決意と家族の秘密。
誰もが生きていくため、必死に「嘘」をついている。
いま最もまぶしい作家が描く、成長と再生の物語。
図書館で。
あー、どうしよ、また暗いのだったら・・・なんて思いながら借りてみた。
表紙が青くてキレイだったから。
よくみると村だね。
ここがかつておばあちゃんが住んでいたダムに沈んだ村なんだろうなぁ
と読み進めていって気づいて、読了後に少し眺めてみた。
タイトルに柩。
ちょっと不吉なものを感じたが他はもっと暗そうなのでこれにした。
主人公逸夫は平凡を嫌った。
普通な自分というものにどこか焦燥を感じていた。
何かおもいきったことをしてみたいけど
思っているだけで、行動には移さない。
クラスの大多数がそうであったように普通で、平凡な逸夫。
そんな彼の元へ現れた転校生の女の子。
普通じゃない女の子。
彼女はイジメられていた。
明らかにいじめられているとわかるのに
男の子って気づかないもんなのかなー。
気づかない、そいういう設定なんだろうけど。
お化け屋敷からでてきた彼女の様子を見て
違和感を感じたはずで、手紙を盗み見たのだから
察知すべきと思うんだけど、もう大丈夫という言葉を信じちゃうあたりが
もう切な過ぎる。
彼女はいっぱいサインを送っていたのに。
それでもその日は決行される。
タイムカプセルの中身を取り替える。
それは普通の毎日に嫌気がさしていた逸夫にとって
初めての普通じゃない出来事となった。
一度埋めたものを掘り返してまた埋める。
それを女の子から手伝ってといわれて
イヤイヤながら手伝うという雰囲気をだしつつもワクワクしてしまう逸夫。
勉強合宿のしおりも作成し、用意周到にその日を待つ。
このシーンはわたしも逸夫の気持ちになって
ドキドキ感が伝わってくるようだった。
でも、彼女の方はどうだったかというと・・・。
ひとつの決心を固めていて、それを実行するに当たって
必要な手順だった。
それだけ。
その手順をはぶくかどうかは自分次第。
心の奥底では実行にうつしたくない自分がいた。
実際にカプセルを掘り返すシーンでは
逸夫が彼女に秘密のスポットを教えたりしている
妙なハイテンションぶりがハートフルでさえあったと思う。
読者は最初から彼女の独白を読んでいるので
この時の彼女の曖昧な返事がそこはかとなく切なく感じるだろう。
そしてクライマックス。
タイトルの柩、という文字を思い出して最悪のラストを思い浮かべていた。
でっかいダム湖、それが水の柩になるんだろうか、と。
そう。
タイトルに嘘はない。
ダム湖は水の柩になった。
何かに区切りをつけるには、儀式めいたことをすることによって
不思議と心が軽くなったり、気持ちを切り替えたりできるものなのかもしれない。
おままごとみたいなことでも。
うそくさくても。
キッカケって、大事なことだよな。
読了後、ふとそんなことを思った。
抜粋文の中に
誰もが生きていくため、必死に「嘘」をついている。
とあり、つい最近「殺気!」を読んだばかりだったので
“生きていく為の嘘”という言葉がなんとなく
ストン、と自分の中におりてくる感じがした。
生きていく為の嘘は、まだついたことがないけれど。
2012.12.28
老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。
同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。
文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。
「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない??敦子の頼みが、
逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。
逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。
大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。
絶望と希望を照らす作家・道尾秀介がおくる、心に染みる人間ドラマ!
私たちがあの場所に沈めたものは、いったい何だったのだろう。
五十数年前、湖の底に消えた村。少年が知らない、少女の決意と家族の秘密。
誰もが生きていくため、必死に「嘘」をついている。
いま最もまぶしい作家が描く、成長と再生の物語。
図書館で。
あー、どうしよ、また暗いのだったら・・・なんて思いながら借りてみた。
表紙が青くてキレイだったから。
よくみると村だね。
ここがかつておばあちゃんが住んでいたダムに沈んだ村なんだろうなぁ
と読み進めていって気づいて、読了後に少し眺めてみた。
タイトルに柩。
ちょっと不吉なものを感じたが他はもっと暗そうなのでこれにした。
主人公逸夫は平凡を嫌った。
普通な自分というものにどこか焦燥を感じていた。
何かおもいきったことをしてみたいけど
思っているだけで、行動には移さない。
クラスの大多数がそうであったように普通で、平凡な逸夫。
そんな彼の元へ現れた転校生の女の子。
普通じゃない女の子。
彼女はイジメられていた。
明らかにいじめられているとわかるのに
男の子って気づかないもんなのかなー。
気づかない、そいういう設定なんだろうけど。
お化け屋敷からでてきた彼女の様子を見て
違和感を感じたはずで、手紙を盗み見たのだから
察知すべきと思うんだけど、もう大丈夫という言葉を信じちゃうあたりが
もう切な過ぎる。
彼女はいっぱいサインを送っていたのに。
それでもその日は決行される。
タイムカプセルの中身を取り替える。
それは普通の毎日に嫌気がさしていた逸夫にとって
初めての普通じゃない出来事となった。
一度埋めたものを掘り返してまた埋める。
それを女の子から手伝ってといわれて
イヤイヤながら手伝うという雰囲気をだしつつもワクワクしてしまう逸夫。
勉強合宿のしおりも作成し、用意周到にその日を待つ。
このシーンはわたしも逸夫の気持ちになって
ドキドキ感が伝わってくるようだった。
でも、彼女の方はどうだったかというと・・・。
ひとつの決心を固めていて、それを実行するに当たって
必要な手順だった。
それだけ。
その手順をはぶくかどうかは自分次第。
心の奥底では実行にうつしたくない自分がいた。
実際にカプセルを掘り返すシーンでは
逸夫が彼女に秘密のスポットを教えたりしている
妙なハイテンションぶりがハートフルでさえあったと思う。
読者は最初から彼女の独白を読んでいるので
この時の彼女の曖昧な返事がそこはかとなく切なく感じるだろう。
そしてクライマックス。
タイトルの柩、という文字を思い出して最悪のラストを思い浮かべていた。
でっかいダム湖、それが水の柩になるんだろうか、と。
そう。
タイトルに嘘はない。
ダム湖は水の柩になった。
何かに区切りをつけるには、儀式めいたことをすることによって
不思議と心が軽くなったり、気持ちを切り替えたりできるものなのかもしれない。
おままごとみたいなことでも。
うそくさくても。
キッカケって、大事なことだよな。
読了後、ふとそんなことを思った。
抜粋文の中に
誰もが生きていくため、必死に「嘘」をついている。
とあり、つい最近「殺気!」を読んだばかりだったので
“生きていく為の嘘”という言葉がなんとなく
ストン、と自分の中におりてくる感じがした。
生きていく為の嘘は、まだついたことがないけれど。
2012.12.28