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ねこやま

徒然備忘録

百瀬、こっちを向いて。 / 永田永一(乙一)

2013-03-17 13:06:05 | 乙一


























抜粋

「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。
野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは―。
しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。
「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった…!」

恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。





























本屋さんにいっても、乙一氏の新刊を見かけないなぁと思っていた。
こんなに執筆遅かったっけ?なんて思ったりもした。
今年に入ってからだと思うけど、乙一が別名義で本を出していると知った。
ファンのつもりだったけど、ファンじゃなかったのかしらん、わたし。。。
mixi内のコミュではまだこの事実が判明していなかった頃の
スレットがあり、なかなか読み応えがあった。
この文体は絶対乙一だ!間違いない!
だとか
ふん、同一人物であるはずがない、あなたは本当に乙一ファンですか?
とか
誇張するとそんな雰囲気のコメントが並んでいた。
(↑上記の台詞はあくまでもわたしの捉えた雰囲気文章である)
実際そうだったと知った後でのスレットには
ほれみたことか、と書いてあったりするわけでなかなか面白かったりする。
わたしは事実をそこで知ったわけなので
中田永一氏=乙一と知りながら本を手に取った。
乙一じゃなければ手にとったかといわれればなるほど、そうである。
その、自分の作家名が一人歩きし始めているなぁと感じたのだろう。
出版社の持ち上げ方が半端ないなぁと思うこともしばしばあったので。
そのプレッシャーがいよいよ重たくなってきたのかな、と思った。
調べたけど、別名義にした理由というのはあんまり明らかにされていないようだし。
わたしとしては、彼の本が読めるというだけでいいので。
理由は別にどうしても知りたいわけじゃない。

ところで、この本に詰まった4編、全部恋愛小説!
久々にこう、どっぷり恋愛モノ~って感じのものを読んだ。
しかも後味がなかなか爽やかでいいやつばっかり。
乙一の書く恋愛ってベタな展開がけっこうあるのに飽きない。
有川さんの書くベタ甘恋愛小説も好きだけど
わたしはやっっぱり乙一の書く少しひねくれた主人公とかが好きだなぁ、と思う。

それでは1篇づつふりかえってみる。



●百瀬、こっちを向いて。
彼女、替え玉事件

幼馴染の宮崎先輩は、眉目秀麗で頭脳明晰おまけにスポーツ万能である。
人間レベル2の僕が軽々しく話せるような相手ではない。
そんな彼と親しく出来るのはひとえに僕が幼馴染だから、というだけ。
その先輩の彼女と噂される学校1の美人の顔をみて違和感を覚える。
果たして自分が放課後に見た先輩と一緒にいた女子は髪が短かったはず。
美人と噂の彼女の髪は美しいロングヘアーなのであった。

冒頭からやっちまってるんだけど、不思議と憎めない先輩。
僕は、その事実をつい口にしてしまったことによって
先輩にある頼みごとをされる。
先輩はあろうことか、幼馴染で弟のようにかわいがっていた僕に
本当の彼女である(と思われる)少女の彼氏のフリをさせるのだった。

強引!

つまり二股してたってことね。
その偽彼氏・偽彼女のフリをしている二人が少しずつ距離を縮めていく
感じがすごくいいんだよね。
後半になるとWデートなんかもしちゃって
ドキドキな展開なんだけど、切なくもあって。
美人な先輩がどこまで知っていたのか、それとも知らないままだったのか
とか全部ひっくるめると先輩が憎めなくなってくるというか。

そして表題の『百瀬、こっちを向いて。』

ここでその台詞~~~~!!!
くぅ~。
にやにやタイム突入なのであった。

僕の友人・もう一人の薄暗い電球こと田辺との会話がよかった。
青くさいというか、青春真っ只中!絶賛青春中!
みたいな台詞がそりゃあもうポンポン飛び交う。

『君がいうそいつは、怪物だぜ』

あぁ、そんな恋したことないわー・・・


●なみうちぎわ
近所の男の子の家庭教師を引き受けると・・・

小学六年生の元気に日焼けした丸坊主の健康優良児。
彼の家庭教師を引き受ける主人公。

冒頭は彼女がある病気であることが告げられる。
遷延性意識障害者。
脳死とは違う。

前半部は回想録。
記憶の中では小6の元気な男の子が鮮明に思い出されるのに
目の前にいる彼は17歳の高校二年生になっていた。
そう、自分の記憶の中の自分と同じ年齢である。
実年齢は21歳になっていた。

かいがいしく世話をする小太郎くんは立派な素敵男子になっていた。

これも純愛だなぁー。
まぁ、少し裏があったけど。
それでも仲良くなったのでヨシ。


●キャベツ畑に彼の声
テープ起こしのバイトで聞き覚えのある声が聴こえてきて・・・

編集者やライターの対談やインタビューテープを文字に起こす仕事。
あぁ、そういやこの仕事どっかできいたことがある、ような。
あれは奥田英朗だったかな~。
そういう仕事あるんだ~なんて思ったもんだ。

叔父が編集者でそのつてで貰ったちょっとしたバイト。
女子高生の小遣い稼ぎだったわけだが。

これはまた先生と生徒、というシチュエーション。
その手のやつも書くのかぁ、と思ったが、存外あっさりとして
爽やかに終わっていた。


●小梅がとおる
ブスメイクをしないと生きにくい少女

あれ、これどっかでみたことあるなぁ。
美人過ぎて不幸な女。
あ、主に、泣いてます。だ。
ま、いわゆるあの感じなんだろうな。
彼女の素顔を見た男性は99%の確立でいいよってくるという
悶絶美少女!笑

コレが一番おもしろかったなぁ~~~!
小梅の時と柚木の時のギャップが笑えるし
ラストもこっちが恥ずかしいやら笑えるやらで楽しかった。

ところでこの小説内にサティがでてくるのだが
田舎臭がぷんぷんして懐かしさを覚えた。
あぁ、そうだったなぁ、いくとこなんてサティだったなぁ。
まだコモタウンがなかった頃。
あの頃はラパーク聖篭が都会に思えたもんだよな。
郊外感がとってもよくでていて、親近感が沸いた一遍だった。

















総じて。
全部読んでみたけど、文体絶対乙一でしょ。
と思う箇所がそこここにあった。
知らずに手に取ったとしても、なんか似てるなぁと感じるぐらいには。

ということで、相変らずおもしろかったです。
どんどん書いてねー、乙一せんせ。


余談

中田永一なので本当はな行作家のカテゴリなんだけど
乙一でもあるので乙一にカテゴライズしておいた



2013.02.20


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