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ねこやま

徒然備忘録

逃亡くそたわけ / 絲山秋子

2013-01-21 13:58:45 | あ行作家










二十一歳の夏は一度しかこない。

百道病院の精神病院に、躁状態で入院したあたしは脱走を決意した。
あだ名がなごやん(患者)という24歳の、茶髪のサラリーマンを連れて。


誰も知らないところに行かなくちゃいけない。
今すぐ。今すぐ。
あたしは見えないものに追い立てられていた。

「なごやん、車持っとらんと?」

「あるけど・・・・・・」

「一緒に逃げよう。もうそれしかなかよ」

「家まで送ってやるよ。それから俺は車戻して病院に帰る」

「嫌ったい」

「子供みたいなこと言わないの」


けれど、あたしが見つめるとなごやんは目を伏せてしまった。
しばらく、そのまま両膝に手をついてあぐらをかいていたが、
やがて深い溜息をついた。

「ほんとに逃げるんだ?」

「ほんとくさ」


亜麻布二十エレは上衣一着に値する。

頭の中では、ずっとそんな幻聴が聞こえている。
衝動が高まる。
幻聴だとわかっていても、自分ではとめることができない。

亜麻布二十エレは上衣一着に値する。
亜麻布二十エレは上衣一着に値する。
亜麻布二十エレは上衣一着に値する。


―逃げないと。逃げるのに、理由なんていらない。




























よくわからないあらすじ。
伝わったかな。
とにかく“あたし”と“なごやん”は精神の病気で。
なごやんはしぶしぶ逃走につきあうことになった。
どこにいくのかもわからず、ただ逃げる。
何から逃げてるのか。
頭の中で聞こえる、幻聴から逃れたいあたし。


読んで、なんか病気のことがすこーしわかった。
躁と鬱ってのは違うんだな。とか。
眠剤ってのはいろいろあんだなーとか。
テトロピンていう薬は怖いなーとか。



そして、本の内容だけど。
あっけらかんとしていて。
博多の言葉がなんとなくあったかくて。
おもしろかった。




亜麻布二十エレは上衣一着に値する。

ギャル文字みたいだなって誰かいってたけど、資本論だそうです。


2005.10.18


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