水の丘交通公園

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大阪市交通局 10系電車/10A系電車

2011-11-14 22:58:29 | 電車図鑑・地下鉄
谷町線で想定されていた急行運転用の試作車両として登場し、その計画が局の有力者の
鶴の一声で葬り去られた後、旧型車のトンネル内での発熱が問題視されていた
御堂筋線に転用・量産化されたものである。
昭和48年に試作車(20系として登場)4両編成×1本=4両が登場し、昭和54年~平成元年
まで量産され、合計で9両編成(当時)×26本=234両が製造された。
製造を担当したメーカーは日本車輛、東急車輛、日立製作所、近畿車輛、アルナ工機、
川崎重工である。
編成の組み方は江坂・千里中央側から以下の通り。

試作車
・2001+2301+2401+2501(20系時代)
量産当初(8連)
・1100形+1000形+1300形+形1200形+1600形+1400形+1500形+1800形
あびこ~なかもず延伸(9連/1900形新造組み込み)
・1100+1000+1900+1300+1200+1600+1400+1500+1800
輸送力増強工事完了後(10連/1700形組み込み)
・1100+1000+1900+1300+1200+1600+1700+1400+1500+1800

20系時代の試作車は全車電動車、10系の電動車は1100形、1100形、1300形、1200形、
1400形、1500形(1100形は制御電動車)で付随車は1600形、1700形、1800形、1900形
(1800形は制御車)である。
後述するリニューアル改造で主制御装置をチョッパ制御からVVVFインバータ制御に
換装した10A系では1100形と1300形が付随車(1100形は制御車)化、1900形が電動車化
されている。
1200形と1600形の連結面には簡易運転台があり、分割が可能である。
10連化の際、組み込まれた1700形は経年の高い第1~3編成のうち元試作車を含む
4両(1101・1801・1102・1103)を除く23両を改造の上で登場しており、元先頭車である
1716号車(←1802号車)と1717号車(←1803号車)は運転台撤去の上で組み込まれたため、
屋根上の冷房装置の取り付け位置が若干異なる。

車体はアルミ製で先頭部分にはFRPで作られた装飾枠が取り付けられている。
正面は貫通扉が左に寄ったものとなり、運転席の窓の拡大化が図られている。
試作車と量産車ではヘッドライトの位置などが大きく異なり、一見してそれと分かる
ものとなっていた。
塗装は試作車登場時はアルミ地の無塗装で正面下部に波状加工したアルミ板を
取り付けていたが、御堂筋線投入時に正面下部と側面を赤とし、正面は窓下の
車番周りに白線が入れられた。
行き先表示は字幕式で正面のみにある。

車内はロングシートで試作車ではFRPにレザーを張った大阪市営地下鉄独自の座席
(通称「カチコチシート」)が投入されたが、既に同じ座席を採用していた在来車種で
苦情が相次いでいたことから、量産車から自動車用のシートを参考にしたものに
変更された(試作車も後に改造)。
冷房装置は新造時より取り付けており、日本の第三軌条方式の地下鉄電車として
初めて採用した。
大阪市営地下鉄はトンネル断面を小さくするため、第三軌条方式を多用しており
(平成23年現在、堺筋線、長堀鶴見緑地線、今里筋線以外の全線が第三軌条方式)、
屋根上に余裕が少なく、冷房装置の搭載は困難を極めたが、新規に薄型の冷房装置を
開発して搭載を可能とした。
この冷房装置は極力上にはみ出さないようにしたため、客室側に張り出しており、
冷房装置のある車内両端の天井は低くなっている。
なお、末期に製造された1900形は後継の20系(現行のもの)と同等の冷房装置と
なったため、更に薄い冷房装置を搭載しており、車内側への張り出しが少なくなった。
ドアは両引き戸で片側4箇所設置、側面窓は2段窓である。

主制御装置は電機子チョッパ制御で第三軌条方式の電車として国内で初めての
採用となった。
ブレーキは回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキである。
このブレーキ装置は30系電車で採用した発電ブレーキ併用電気指令ブレーキを
回生ブレーキ対応に改良したもので後に登場する車両のブレーキのベースとなった。
台車は軸箱支持を積層ゴム式としたダイヤフラム式インダイレクトマウント空気バネ
台車である。
車輪には波打車輪を採用し、曲線通過時の軋り音の低減を図っている。
モーターの駆動方式はWN駆動方式である。
運転台はデスク型ツーハンドル方式である。

既述の通り、当初は谷町線の急行列車で第三軌条方式の鉄道路線では初めての
100km/h運転が可能な車両として開発され、試運転で良好な成績を収めたが、
谷町線での急行運転自体、話が流れ、一時宙に浮く形となった。
しかし、最新の技術を詰め込んだ本形式をそのままにする訳には行かず、
当時、増結に次ぐ増結と車両の抵抗器の発熱、地下水の汲上げによる水位低下で
トンネル内の高温化が問題となっていた御堂筋線へ投入されることになった。
運行開始当初は8連で運用され、あびこ~なかもず間延伸時に9連に増結された。
その後、各駅の10連対応改良が完了した後、10連に組み替え、最終的に23編成×
10本にまとめられている。
平成10年~平成23年にかけて第5編成以降を対象に車体更新改造を実施した。
主な内容は車体のクリーニング、帯の張り替え(赤帯→赤に白線)、正面塗装塗り替え
(上半分ブラック、白線の下に赤の細帯2本を挟んで下半分赤)、内装の張り替え、
座席の張り替え(オレンジ→赤)、車椅子スペース新設、ドア開閉チャイム設置、
LEDスクロール式旅客案内装置設置(各車端部)、座席中央部へのスタンションポール
設置、側面方向幕設置、制御装置基盤交換(チョッパ制御車)、主制御装置のVVVF
インバータ制御化(平成18年以降施工。第17編成以降が対象。IGBT式)、
運転席窓上部へのシンボルマーク設置(チョッパ車=accc 10SERIES CAR/VVVF車=VVVF
10SERIES CAR Rebirth)などである。
車体更新の間、所要本数に対し、1本分不足するため、第4編成が未更新のまま
残されていた。
今後、30000系の登場と御堂筋線への投入開始に伴い、チョッパ制御車の置き換えが
開始される予定である。
なお、最後まで未更新だった第4編成は平成23年3月末で廃車となり、解体されたが、
1100形1104号車の運転台部分は保存され、イベントの際に公開されている。


○車体更新前の1124編成。


○車体更新後の1122編成。


○チョッパ制御のまま更新された編成のロゴ。


○VVVFインバータ制御に更新された編成のロゴ。


○全面広告車。過去には複数存在したが、現在はこの編成のみ。
 なお女性専用車は全車広告車となっている。