水の丘交通公園

鉄道メインの乗り物図鑑です。
※禁無断転載!使用に際してはコメント欄にて
用途を申告してください。

国鉄 ED16形電気機関車

2011-01-05 20:24:08 | 保存車・博物館
幹線向けに製造されたEF52形電気機関車をベースに地方幹線向けの
低速・中型の電気機関車として製造されたものである。
昭和6年に18両が製造された。
製造を担当したのは、三菱、東芝、日立製作所、川崎車輛の4社である。

車体は箱型の普通鋼鉄製で車体前後にデッキを配した構造となっている。
側面には乗務員用の扉がなく、正面の貫通扉から出入する。
塗装は当時標準の茶色一色である。

軸配置は1-B-B-1で動軸4つの「D」級である。
主制御装置は単位スイッチ式の弱め界磁付き抵抗制御で当初は重連での運用も
考慮して総括制御対応であったが、当時の技術力では後方の機関車の空転制御や
降雪に対応しきれず、程なくして撤去された。
ブレーキは空気自動式ブレーキである。
台車は板台枠式でモーターの駆動方式は1段減速ギア・吊り掛け駆動である。
これらの機器はベースとなったEF52形と共通であり、終戦直後まで製造された
機関車の標準ともいえるものであった。
また、本形式ではEF52形が苦手としていた高速運転を行わず、敢えて低速向けに
設計されたため、大きさ、重量などの手頃さも相俟って、長く運用されることに
なった。

戦前は上越線と中央本線で運用された。戦時中には本形式7号機牽引の中央本線
419列車が湯の花トンネル付近で米軍機の銃撃を受け、トンネルに逃げ切れなかった
客車を中心に50名余りの犠牲者を出している。
この際、7号機も機銃掃射を集中して受けたが、どうにかトンネル内に
逃げ込めたため、大破は免れている。

戦中から戦後にかけて上越線、中央線とも輸送量が大幅に増えたため、
F級機関車への置き換えが実施され、昭和25年ごろまで立川機関区と鳳機関区に
集中配置されるようになった。

立川では南武線、青梅線、五日市線で貨物輸送を、鳳では阪和線の貨客輸送に
使用された。
その後、阪和線にはEF58形などの戦後製の電気機関車が転属してきたため、
最終的に立川機関区に集められた。
立川機関区では線路規格の関係でF級機関車が入線できなかった
青梅線の石灰石輸送の貨物列車に長く充当された。
これは本形式に代わる新型D級機関車の開発はされていたものの、
それを青梅線にまわすほどの数が揃わず、適当な代替機が
用意できなかったためである。

しかし、青梅線の線路改築が行われ、F級機関車が入れるようになると
EF64形電気機関車に置き換えられ、昭和59年に全車が廃車となった。
また、本形式の全面撤退と同じくして立川機関区もその歴史に
幕を閉じている(八王子機関区に移転・統合)。

廃車後は1号機が青梅鉄道公園に、10号機がJR東日本大宮総合車両センターに、
15号機が山梨県南アルプス市若草支所(旧中巨摩郡若草町役場)にて
静態保存されている。
このうち1号機は準鉄道記念物の指定を受けている。