歳を重ねると楽しいとか賢くなるとか・・・・みんな戯言なんだよ。

感じるままに、赴くままに、流れて雲のごとし

外は暗闇。ホントの闇だったんだ。

2018-11-19 | 旅行
部屋のある建物を出たら月が出ていた。
優しげで、妖しげな光りを放っていて、僕は暫くその月を見ていた。
なんだか身体が浮いている様な気がして
足下を見た。僅か数センチだけれど、確かに浮いている。
ホテルのロビーへの道を身体が浮いたまま歩いた。とても気分が軽かった。
食堂はロビーを横切った奥にあった。
六角形をしている食堂だった。中央にはサーブする為のスペースがあって給仕が六方向にテキパキ動いていた。案内された席は窓際。窓の外はあの妖しげな雑木林。随所にライトが置かれている。
なんだか京都の寺のライトアップショーを見てるみたいで、急に落ち着かなくなった。
チーフらしき初老の男が近づいてきてテーブルの蝋燭に火を灯しながら夕食のメニューを説明して始めいくつかの選択メニューの確認をした。
僕は相変わらず適当に返答をしただけで不機嫌そうに見えたのだろう。そそくさと給仕係は退散してしまった。
よくあるパターンで宿泊と夕食がセットされているホテルだったから面倒がない。そしてできれば出された料理の説明もいらない。そう考えていたのだけれど、そんな訳には行かないらしい。
ワインを出されたのは、諦めの表情をした途端だった。
頼んだ覚えはなかった。
給仕係が「彼方のお客様が…。」と答えた。
僕は振り返ってしまった。
そこには、さっき部屋に文句を、言いにきた髪をブラウンに染めた女性が微笑んでいた。
僕は軽く会釈して元の姿勢に戻った。
きつく断りを言おうかと思った。しかしやめた。

雑木林の闇が「やめておけ!」と言ったからだ。

では、次に何をすればいいのかを考えた。


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