新潟に行ったり、札幌へ行ったり・・・
全てが日帰り。
仕事なんかするものじゃない。
いったい何処に行けばいいのか?
そんなことは考えもしない。しかし、見知らぬ土地へ出向いても、この町に住みたい!
そんな事を思うことがなくなってしまった。
素振りだけが哀しそうに見える男になんかなりたくはない。
新潟で見かけた。萬代橋の袂で、信濃川を漫然と眺めているだけ、
河に飛び込む気配はない。でも、危うい感じが溜まらなかった。
邪気が渦巻くその雰囲気に取り込まれそうになった。
一声かければ、精気を吸い取られてしまいそうな、そんな気配。
僕は思わず息をのみ、呼吸をやめた。
そう、悪魔の気配。
僕は天使じゃない。狙われているような殺気は足元からやってきた。
身動きができないようになる前にあとずさりをはじめた。
背筋を流れる冷たい汗に身を乞込めながらこの場所から離れようとした。
しかし、もう遅かった。
彼は僕の方を見て微笑みを投げた。
そして、一歩仁保と僕の方に身を寄せ始めた。
心臓が跳ねた。
静かに目を閉じるだけが精いっぱいだった。頭の中が空っぽ。
考えることをやめた。