goo blog サービス終了のお知らせ 

夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ツリー・オブ・ライフ』

2011年08月16日 | 映画(た行)
『ツリー・オブ・ライフ』(原題:The Tree of Life)
監督:テレンス・マリック
出演:ブラッド・ピット,ショーン・ペン,ジェシカ・チャステイン,フィオナ・ショウ,
   ハンター・マクラケン,ララミー・エップラー,タイ・シェリダン他

“父さん、あの頃の僕は、あなたが嫌いだった”。
数カ月前から予告編を見かけるたびに気になっていたこの言葉。
封切りの日の晩にはTVのスポットCMを見かけて、
やはり観に行っておくかと、翌日、劇場へ。

テレンス・マリック監督といえば、寡作かつ寡黙で有名。
しかしながら、その数少ない作品では、
すべての事物がもっとも美しく見える「マジック・アワー」と呼ばれる時間帯、
すなわち、日没から夜になるまでのわずか20分間に全シーンを撮影するなど、
伝説として語り継がれることをやってのけています。
それがリチャード・ギアの代表作『天国の日々』(1978)。

その20年後に『シン・レッド・ライン』(1998)の話が出たときは、
マリック監督の作品にならノーギャラでも出演したいという役者が
たくさん名乗りを上げたというのも有名な話。

そんな監督とブラッド・ピットにショーン・ペンとなれば、
ぜ~ったい美しく心に残る作品であろうと思ったわけなのですが、果たして。(--;

1950年代半ばのテキサスの小さな町。
オブライエン一家の父親は、まだ幼い3人の息子たち、特に長男のジャックにとことん厳しい。
成功のためには力が必要だという持論を決して曲げることはなく、家族は絶対に服従。
そして今、実業家として成功したジャックが、自らの少年時代に馳せる想い。
……これ以外にどんな書きようがあるっちゅうねん。
ストーリーはあの予告編がすべてでした。(T_T)

これはいったい何なのでしょう。
優しい母親が途方に暮れている姿を映し出していると思ったら、いきなり画面は森の中へ。
壮大な人類創世記と言えなくもないけれど、
テキサスの町を見せられていたはずなのに、突如として恐竜時代になったらドン引きでしょ。

哲学を専攻し、映画を撮らない間は大学で教鞭を執っていたマリック監督。
もうちょっと万人にわかりやすい作品にしてほしかったなぁ。
ここまで行っちゃうと、自己満足と紙一重みたいな気がして。

エンドロールが回り始めると同時に9割以上の客が立ち去った映画は久々。
真後ろの席の人は一言、「金返せ」。
DVDで観たら眠気に襲われて最後まで持たなかったかもしれないので、
私は劇場で観てよかったということで。(^^;

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『かぞくはじめました』

2011年08月12日 | 映画(か行)
『かぞくはじめました』(原題:Life as We Know It)
監督:グレッグ・バーランティ
出演:キャサリン・ハイグル,ジョシュ・デュアメル,ジョシュ・ルーカス,
   クリスティナ・ヘンドリックス,ヘイズ・マッカーサー他

原題は“Life as We Know It”。
この邦題から連想するのはやはりAMEMIYAのネタ「冷やし中華はじめました」で、
安直だなぁと思わずにはいられません。
映画の中身もちと安直で、そこそこ知名度がある2人が主演なのにDVDスルー。
思いっきり予定調和なため、安心ではあります。

30歳になろうかという独身女性のホリー。
経営しているベーカリーが繁盛し、レストランの併設を計画中。
仕事の面では充実しているが、恋愛に関しては多難。

親友のアリソンがそんなホリーに紹介してくれたのは、
アリソンの婚約者ピーターの親友であるエリック。
TV局でスポーツ番組を担当する彼は、男臭いイケメン。
しかし、とにかくいい加減で、待ち合わせにも大きく遅刻。
さらに、目の前でセフレからの電話を受けられて、ホリーは激怒。
エリックのほうも、ホリーのお高くとまった態度が気に入らない。
お互いにこんな相手は願い下げだとぶち切れてデート終了。

ところが、アリソンとピーターが結婚し、
それぞれの親友ということで、ホリーとエリックも会う機会が激増。
そのたびに険悪な雰囲気となるが、はたから見れば痴話喧嘩に過ぎない。

ある日、アリソンとピーターが交通事故で急死。
ふたりの赤ちゃんで、生まれてまもないソフィーだけが遺される。
遺言を聞いてびっくり、なんとソフィーの後見人として、
ホリーとエリックが指名されていたのだ。
アリソンとピーターの家を相続し、
ホリーとエリックが一緒にソフィーを育てることになるのだが……。

予期せぬことは何も起こらないと言って良いぐらい。
最悪のカップルのはずが、ふたりで大騒ぎしながら子育てするうち、
なんだかお互いのことが気になり始めます。
恋敵がいなければ当然つまらないので、ホリーの店の客が登場。
これが小児科医なんですが、また徹底的に優しくて。

万事上手く行くかと思われた頃、
番組ディレクターを目指すエリックに栄転の話。
それを知ったホリーが結局仕事を取るのかと怒って一旦サヨナラ。
しかし、最後にはエリックが戻ってくるという……。

全部書いてちゃってごめんなさい。
だけど、食べるものはどれも美味しそう。
懲りすぎのベビーフードにソフィーがそっぽを向くシーンは笑えます。

エリック役は、“トランスフォーマー”シリーズでは
主役の次にクレジットされているジョシュ・デュアメル。
あまり印象に残っていませんでしたから、再認識するには良かったかも。
目の保養には十分なりました。(^O^)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

原田芳雄追悼上映。

2011年08月09日 | 映画(番外編:映画とこの人)
日曜日の朝10時。梅田のミニシアターには長蛇の列。
スクリーン2つのこの映画館では、
右側で原田芳雄追悼上映、左側ではアンパンマン。
なんたる取り合わせ。そしてどちらもほぼ満席です。

特に演技が上手いなぁと思ったことはなかったけれど、
その演技っぽくないところが演技なのかもと思った原田芳雄。
最近では、『歩いても 歩いても』(2007)や『たみおのしあわせ』(2007)、
ゲスト出演したドラマ『新参者』など、
どれも偏屈ながら温かみのある親父という印象がありました。

最も強烈に思い出すのは『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007)。
原田芳雄のナレーションじゃなかったら、立ち直れなかったと思うほど。
あのダミ声、大好きでした。

今回、追悼上映で観たのは『ツィゴイネルワイゼン』(1980)。
当時、ドーム型の移動映画館で上映されて話題になりました。

陸軍士官学校のドイツ語教授、青地(藤田敏八)は、
同僚で親友の中砂(原田芳雄)と旅先でたまたま遭遇。
女殺しの疑いをかけられていた中砂に助け船を出します。

まるでジプシーのごとく各地を転々としている中砂と
しばし共に過ごすことになった青地は、
鰻を食べに寄った宿で、小稲(大谷直子)という芸者と会います。
弟を自殺で亡くしたばかりだという小稲の話に聞き入る中砂。

一年後、中砂の家を訪れた青地は、中砂の新妻を見てびっくり。
園(大谷直子)というその女は、小稲に瓜二つだったからです。
自分を見てニヤニヤする中砂と青地に、園は不機嫌な顔。
青地が事情を話すと余計にすねます。

さて、結婚後も風来坊であり続ける中砂は、
スペイン風邪を持って帰ってきます。
それをもらってしまった園は、幼い娘を残して他界。
乳母を雇ったという中砂のもとを青地が訪ねると、
その乳母とはあの小稲で……。

内田百閒の『サラサーテの盤』が基になっています。
何度観てもわかりそうにありません。
だけど、これはわからなくていいそうです。
鈴木清順監督自身がそうおっしゃっているらしく。
いろんな見方があっていいじゃないかと。

妖艶で可愛らしさもある大谷直子に魅せられ、
青地の妻役の大楠道代の厚化粧にビビり、
夢と現実の境目が明らかにされないまま、わけがわからず145分。
飽きずに最後まで観られるのはスゴイところ。
多くの人に言われていることですが、
この不条理さはデヴィッド・リンチ監督の作品と比較したくなります。

昭和も終盤の作品ではありますが、舞台は大正時代。
文献でしか知らなかった女給、トンビ、門付けなどが次々と登場して、
それが個人的にはとても楽しかったです。

原田芳雄は1940年生まれでしたから、本作の出演時は40歳。
ちょっと艶のあるいい男でした。
もうあのダミ声が聴けないと思うと寂しいです。合掌。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『悪魔を見た』

2011年08月06日 | 映画(あ行)
『悪魔を見た』(英題:I Saw the Devil)
監督:キム・ジウン
出演:イ・ビョンホン,チェ・ミンシク,オ・サナ,チョン・グクァン,
   チョン・ホジン,キム・ユンソ, チェ・ムソン,キム・インソ他

韓国の男優、四天王のうちの一人、イ・ビョンホン。
素朴な疑問なんですけれど、韓流好きの女性たちは、
なんぼ彼が出演しているとはいえ、
こんなエグい映画も喜んでご覧になるのですか。

観終わったあと、しばらく放心状態に陥った『チェイサー』(2008)。
あれでも相当だったのに、あっちはR-15。こっちはR-18。
スプラッタシーンが数多くあると予想できたため、
劇場の大画面で観る勇気がなくて、DVD化を待っていました。
結果、TV画面の大きさでも直視できず、
ほとんど晩年の桂枝雀師匠のような横向き姿勢で鑑賞、なんとか耐えました。
けれど、そこまでして観た甲斐はあります。

国家情報院の捜査官スヒョンの妻ジュヨンは、出先でタイヤがパンク。
すぐに業者を呼ぶが、ちらつく雪のせいで待ち時間が長くなりそう。
前方に停まった車から降りてきた男が、手を貸してやると言ってしつこい。
ジュヨンからの電話を受けたスヒョンは、
ドアにロックをかけて業者を待つように指示すると同時に、
不安であろう妻に歌を聴かせる。笑顔になって電話を切るジュヨン。

ところがその直後、車のガラスは叩き割られる。
目の前に現れたのはあの車の男で、猟奇殺人犯だった。
無惨にも切り落とされたジュヨンの頭が河原で発見される。

葬儀が済み、上司の計らいで休暇を取ったスヒョンは、
すでに4名に絞り込まれている容疑者のもとを次々と訪れる。
ギョンチョルという男がジュヨンを殺した犯人だと知り、
スヒョンは完全な復讐を誓うのだが……。

追跡用のGPSカプセルを入手したスヒョンは、
ギョンチョルへの復讐第一弾のさい、ヤツの体内にそれを放り込みます。
このGPSのおかげで、144分のうちの大半はスヒョンが優位。
だから、まるっきりホラーなシーンもなんとか凌げます。
あいにく、最後まで優位のままとは行きません。

スヒョンの仕返しがいかに恐ろしいものであろうとも、
その矛先があの卑劣極まりないギョンチョルだと、
歯を食いしばりながら「もっとやれ」と心の中で思ってしまう自分が恐ろしい。
この気持ちは『親切なクムジャさん』(2005)を観たときと似ています。

復讐したってジュヨンは帰ってこないんだよと言われても、
彼女が受けた怖さも痛みも何千倍にして返してやると誓い、
冷徹なまでにそれをやり遂げようとするスヒョンに、
親族を殺された人の気持ちって、こんなふうじゃないの?と思ったり。
犯人を罰することを願わずになんていられるの?って。

「おまえには、死んでからも苦しんでほしい」。
迎える凄絶なラスト。慟哭するイ・ビョンホンに参りました。
トップスターであることに大納得。好きになっちゃったかも~。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『さよなら夏休み』

2011年08月03日 | 映画(さ行)
『さよなら夏休み』
監督:小林要
出演:緒形直人,立花美優,要潤,中山忍,千阪健介,
   大場久美子,白竜,夏木陽介,古谷一行他

公開は昨秋。レンタル新作です。

文部科学省の推薦する文部科学省選定〈少年向き・家族向き〉だけあって、
出演者の顔ぶれも、空の色が鮮やかすぎるジャケットも、超優等生。
もちろん内容も優等生。
これは皮肉じゃなくて、いまどき珍しいほど安心できる作品でした。

現在の東京。
人生に迷いを感じている40歳の男、裕史のもとへ、
岐阜県郡上八幡から便りが届く。
それは町医者、鶴来の訃報だった。
妻のゆきと子どもたちを連れて、30年ぶりに訪れる郡上。
彼の脳裏に当時の光景がよみがえる。

昭和52年の夏。
父親を亡くした裕史、小学校5年生。
そもそも父親の連れ子だった裕史は父親の再婚相手になつかない。
独り身となった継母は裕史のことを持て余し、
父親の実家である郡上の寺に連れてゆく。

誰とも口を利かず、趣味のカメラに没頭する裕史。
寺には、ほかにも何らかの事情で預けられた子ども数人が暮らしているが、
彼らの誘いにも気のないそぶり。

しかし、転入先の小学校の若い女性教師、水帆に一目惚れ。
彼女を撮影したいがために走りまわるようになる。
また、寺の子どもたちは「捨て子」と言われ、いじめっ子の標的だったが、
雄大な自然に囲まれて過ごすうち、喧嘩する力も湧いてきて……。

物語はほぼ想像どおりに進みます。

一目惚れしたというものの、裕史は先生の恋人に嫉妬したりはしません。
先生の恋人というのがこれまたよくできた若い医師で、
子どもたちも医師に全幅の信頼を置いています。
この辺りもとてもかわいい。

大好きな先生が難病を患っていると知ると、
「先生の病気を治して」と医師に懇願します。
けれども、その医師にも先生の病は治せません。
なんとか先生に元気になってもらうには、
カナヅチの自分が泳げるようになるしかないと、
こっそり友だちに頼んで練習する姿は泣きたいぐらいけなげです。

いじめっ子との喧嘩も、一方的にやられるわけではなくて、
体と頭を使った喧嘩を繰り返したら、
最後はいじめっ子がビシッといいところを見せます。
やはりそう来るかと思いながら、泣くでしょ、これは。

先生の死に直面した悲しさが拭いきれず、
郡上の夏休みにフタをしていた裕史。
けれど、予期せずして30年後に再び訪れた郡上の夏に、
昔と変わらず迎えられて、心が解けてゆきます。

彼らの過ごした時代が私の小学校時代とほぼ一致しているゆえの感慨かも。
放課後といえば河川敷や神社の境内で遊んだあの時代。
この懐かしさはたまりません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする