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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

群像劇あれこれ(『THE 有頂天ホテル』を観たけれど)

2006年08月10日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
ユ、ユルい、ユルすぎる。
三谷幸喜の作品を見逃すわけにはいかないと思いつつ、
あまりに評判になったので背を向けているうちに終映。
レンタル開始を心待ちにしていました。

期待が大きすぎてちょっと拍子抜け。
超豪華なキャストで溢れかえって
脱線しまくりながら進むのはいつものごとし。
しかし、予算を労せず採れるようになったゆえなのか、
以前はユルい中にも効いていた粒胡椒が
湿り気を帯びてしまったような感じです。

俄然おもしろくなったのは90分を過ぎてから。
ドタバタがすべて絡み合うこの後は好きです。
でも、個人的な好みで言えば、三谷さんの脚本だと
『12人の優しい日本人』(1991)を超える作品は出てきません。

短期間に特定の場所に多数の人物を登場させ、
その人間模様を描くのが群像劇。
有頂天ホテルの客室名の由来であると副支配人が説明し、
客室内にも貼られていたポスター、『グランド・ホテル』(1932)が
そのはしりと言われています。
「グランド・ホテル。人々が来ては去っていく。
何事もなく」の名台詞を残したこの作品にあやかり、
いまでは群像劇のスタイルを取る映画を
「グランド・ホテル形式」と呼ぶほどです。

他人の人生を覗き見するような群像劇は
最後に登場人物がどう繋がるのかが見物(みもの)。
『ゴスフォード・パーク』(2001)は大きな屋敷に集まった人びとの群像劇。
監督のロバート・アルトマンは群像劇が得意で、
『ザ・プレイヤー』(1992)はハリウッド、
『プレタポルテ』(1994)はパリ・コレクション、
『バレエ・カンパニー』(2003)はバレエ団の内幕。
ロサンゼルスの住宅街の9つの家族を描いた
『ショート・カッツ』(1994)が特にお薦めです。

同じくロサンゼルス郊外の住民の群像劇が
ポール・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』(1999)。
クイズ番組のプロデューサー、司会者、出演者に混じり、
トム・クルーズがSEXのHOW TO本の著者で
カリスマ教祖的存在の人物を演じて話題に。
このラストは度胆を抜かれること請け合い。
まちがいなく反則技ですが、あまりの衝撃にひっくり返り、
呆然とした末に笑いこけてしまいました。

『THE 有頂天ホテル』を含め、
こうしたグランド・ホテル形式の作品は、監督の人脈が物を言うのか、
主役を張れる俳優が多数出演しているところも魅力。
こんなとこにあんな人が!の味はクセになります。

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がんばるオッチャンたち

2006年08月07日 | 映画(番外編:映画とこの人)
翔兄貴がハゲヅラでがんばっていたので
もっと年上のがんばるオッチャンたちの映画を。

現在レンタル店で新作の棚に配架されている
『ライフ・オン・ザ・ロングボード』(2005)で
突然サーフィンに目覚める大杉漣は1951年生まれ。
大杉演じる米倉一雄は55歳で定年退職を迎えます。
妻は病を患って数年前に他界。
長女は嫁ぎ、就職活動中の次女とふたり暮らし。
仕事に明け暮れていた一雄は無職になった今、
娘との会話の糸口もつかめません。

定年退職の報告がてら父を訪ねたさいに、
ふと、亡き妻と海へ出かけたことを思い出します。
いっぱしのサーファー気取りで
ロングボードに挑戦するヨレヨレの一雄の姿を
砂浜から見ていた妻は笑いつつ、「格好いい」と言ってくれたこと。
一雄は一念発起、妻を連れていく約束をしていた種子島へ
ロングボードを抱えて向かいます。

私の年代だと、サーフィンの経験の有無に関わらず、
大流行したサーフィンは懐かしく、
まさにこんな夏の折り、海を眺めるのは気持ちいいものです。
映画の出来はさておき、年相応の大杉漣に無理はなし。
そして、何事も始めるのに遅すぎることはなし。

新作落ちしたばかりの『サヨナラCOLOR』(2004)は
1956年生まれの竹中直人監督・主演。
竹中演じる昌平が医師として勤める病院へ、
子宮癌患者の未知子が入院してきます。
未知子は昌平の高校時代の同級生で初恋の人。
当時、一方的に想いを寄せていた昌平のことを
未知子は覚えてもいません。

彼女になんとか思い出してもらいたい、
彼女の病をなんとか治したいと思う昌平は
職務そっちのけで未知子の部屋を頻繁に訪れます。
あまりのしつこさに嫌気がさしていた未知子も
いつしか心を開いて……。

という、これも海が印象的な作品なのですが、
未知子役は1967年生まれの原田知世。
竹中さんよ、原田知世と同級生って、どういうことよ。
しかも、同窓会に行ってみれば、
やはり同級生の幹事役が忌野清志郎って
アンタら、あつかましすぎるにもほどがある。

ついでですが、『妖怪大戦争』(2005)では
忌野清志郎がぬらりひょん役、竹中直人は油すまし役。
どんなに妖怪メイクをしようとも、このふたりだけは一目瞭然。
いつも台詞棒読みでワラかしてくれる忌野清志郎、大好きです。
『カタクリ家の幸福』(2001) と『恋の門』(2004)もぜひ。
喉頭癌で療養中とのことですが、必ずや彼の台詞がまた聞けるものと信じます。

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『東京ゾンビ』

2006年08月03日 | 映画(た行)
『東京ゾンビ』
監督:佐藤佐吉
出演:浅野忠信,哀川翔,奥田恵梨華,古田新太,松岡日菜他

公開前、予告編にめちゃめちゃ興味を惹かれていました。
しかし、何なのだ、これはっ。あんまりや。
アフロヘアの浅野忠信とハゲヅラの翔兄貴に騙されて。

近未来の東京、江戸川区。
消火器工場に勤めるフジオとミツオは
固い絆で結ばれた師弟のような関係。
柔術の達人ミツオがその技をフジオに伝授すべく、
日がな一日、ふたりはマットの上で取っ組み合い。
派手なプロレス技をたまには試したいフジオだが、
ミツオはあくまで柔術技にこだわり続ける。

ある日、いつものようにマットの上にいると、
本社の社員、藤本が現れて、職務怠慢なふたりを罵倒する。
実はカツラーの藤本は、ミツオが潔いハゲであることをも責め、
マットで巻き巻きにしたミツオを殴打。
怒ったフジオが反撃に出て藤本は即死。
その頭からボロリと落ちるヅラ。

さて、工場近くには不法投棄物だらけの空き地がある。
うずたかく積み上げられたゴミの様子から通称「黒富士」。
不要な物どころか、不要な人間までもが埋められる場所。
フジオとミツオは藤本の死体をそこへ埋めることに。

やがて、埋められた死体たちがゾンビとして生き返り始める。
工場に押し寄せるゾンビたちから逃げようと、
フジオとミツオはトラックを走らせるのだが……。

こうして書くとなかなかおもしろそうでしょ。
ゾンビに埋め尽くされた東京は崩壊し、
生き残った人間のうち、お金持ちはうんと高いところへ。
ゾンビの這い上がれない高さのマンションを建設するのです。
貧乏人はその金持ちたちの奴隷になるしかありません。
奴隷たちが金持ちたちの使用する電気のために
「にぎにぎ発電所」で握力計みたいなものをにぎにぎして
発電する様子は笑えます。にぎにぎとやかましい。
金持ちの娯楽は、闘鶏ならぬ、奴隷とゾンビのデスマッチ。
最後はそこでフジオとミツオが対決するわけです。

お下劣すぎるけど、こんな作品でも見どころは探すべし。
まず、翔兄貴のハゲヅラ。デコを接写しようともわからん境目。
ゲイ役の古田新太が浅野忠信に迫るシーン。
それから、今年観た映画のうち、いまのところマイ・ベスト、
『運命じゃない人』(2004)の主役、
中村靖日の首がいとも簡単にぶっ飛ぶところ。

でも、やっぱり、この作品の決め台詞、「バッカじゃないの」は、
監督、あなたにお返しします。アホッ!

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『ミリオンズ』

2006年08月01日 | 映画(ま行)
『ミリオンズ』(原題:Millions)
監督:ダニー・ボイル
出演:アレックス・エテル,ルイス・オーウェン・マクギボン,
   ジェームズ・ネスビット,デイジー・ドノヴァン他

ダニー・ボイル監督の作品には、ドラッグや殺人やお金がつきもの。
キムタクのお墨付き、『トレインスポッティング』(1996)や
『シャロウ・グレイブ』(1995)、『普通じゃない』(1997)、
ディカプリオ主演でコケた『ザ・ビーチ』(1999)など、
世間からはみ出し気味の若者が主人公で、「夜」の街を連想させる作品が大半。

そんな監督が「自分の子どもたちに
堂々と観せられる作品を」と撮ったのが本作。
ジョニー・デップがジャック・スパロウ役を引き受けたのも
同様の思いからでしたね。

8歳のダミアンとその兄で10歳のアンソニーは
大好きな母親を亡くしたばかり。
つらい思い出の残る家をあとに、父親とともに郊外へ引っ越す。

ダミアンは引っ越しに使ったダンボールをかき集め、
列車の線路からほど近い場所に自分の隠れ家を作る。

ある日、ダミアンがひとりで隠れ家にこもっていると、
空からナイキのスポーツバッグが降ってくる。
バッグを開けてみると22万ポンド(約4,500万円)の札束が。
驚いたダミアンはアンソニーに報告。
警察に届けようとするダミアンにアンソニーは猛反対。
「届ければほぼ全額税金で取られる」とダミアンを言いくるめ、
ふたりだけの秘密にすることに。

あと10日余りで英国ではユーロに切替。
その日を過ぎれば紙屑と化すポンドをなんとか使い切りたいと考えたふたりは
あの手この手を考え始めるのだが……。

よからぬお金にちがいないとわかっている兄と、
神様からの贈り物にちがいないと信じている弟では
お金の使い方もちがうわけで、その対比が実に愉快。
秘密にしようと決めたものの黙っていられるはずもなく、
同級生に札束をちらつかせて威張るアンソニー。
一方、聖人オタクのダミアンは、貧しい人を救うのが最良と、
出会う人に「あなたは貧乏?」と聞いてまわります。

やたら人間臭い聖人たち、モルモン教徒やホームレス、
疾風を体感できる隠れ家、降誕劇のロバのぬいぐるみの影、
こうした脇役や小道具が楽しさを倍増させて、
従来の同監督の作品とは思えない「昼」の暖かさを感じます。

聖人の生没年にまで詳しいチビっ子オタクを考えつくとは
やはりボイル監督はタダ者ではありません。
このオチはとても好き。クリスマスだけど夏休み向き。

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