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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

ダ・ヴィンチ・コード、その前に。(その1)

2006年05月15日 | 映画(番外編:映画と読み物)
今週末は超話題作『ダ・ヴィンチ・コード』の封切り。
舞台となるルーヴル美術館をちょっと覗いてみるには
2004年に公開されたドキュメンタリー映画、『パリ・ルーヴル美術館の秘密』(1990)。
それよりお薦めしたいのは赤瀬川原平さんの書籍、
『ルーヴル美術館の楽しみ方』です。

まずは著者の赤瀬川原平さんについて。
私が彼を知ったのは友人が教えてくれた1冊の本がきっかけでした。
もう何年も前、友人から「何気なく買ったらおもしろかったから」と聞き、
なんとなく購入したのが赤瀬川さんの著作『超芸術トマソン』。
タイトルの意味もわからないまま読み始めたら……、
電車内だったら怪しい人と思われそうなぐらい、
笑いのツボに入りました。

“超芸術トマソン”とは、赤瀬川さんによれば、
「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」で、
その由来は1982年に巨人に在籍していたトマソン選手。
元メジャーリーガーの彼は、鳴り物入りで巨人へ。
ところがスイングすれどもボールはまったくバットに当たらない。
「扇風機」というありがたくないあだ名を付けられたほど
ビュンビュンとバットを振りまわし、三振の山を築きました。

赤瀬川さん曰く、「そこにはちゃんとしたボディがありながら、
世の中に役立つ機能がなく、それを巨人は丁寧に保存している。
皮肉ではなく、これは素晴らしいことです」。

そして、トマソン選手のような素晴らしい無用の長物を
赤瀬川さんは“超芸術トマソン”と名付けました。
無用の階段、無用の扉、無用の窓。
気をつけて町を歩けば、無用の長物のなんと多いことでしょう。
しかもそれらはきちんと主張しているのです。

本書で取り上げられている数々の無用の長物のなかで、
私がもっとも気に入っているのは2階以上のドア。
建物のいちばん端っこ、非常階段にでも続くと思われるドアです。
これを開けるとそこには何もないなんてどーゆーことよ。
「車で送ってもらって、ドアを開けたらあまりに路肩すぎて、
そのまま田んぼに落っこちた」という知人がいましたが、
本書に写真付きで掲載されているドアたちは、
開ければ着地とともに昇天のパターンでしょう。

路上観察学会の中心メンバーであり、
屋根に韮を生やした「にらハウス」に住む赤瀬川さんが
トマソンの視点から挑んだとも言えるルーヴル観覧記。
それが『ルーヴル美術館の楽しみ方』です。続く。

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『理想の女(ひと)』

2006年05月11日 | 映画(ら行)
『理想の女(ひと)』(原題:A Good Woman)
監督:マイク・バーカー
出演:ヘレン・ハント,スカーレット・ヨハンソン,トム・ウィルキンソン他

オスカー・ワイルドの戯曲『ウィンダミア夫人の扇』の映画化。
スペイン、イタリア、イギリス、ルクセンブルク、アメリカと、
これだけ多くの国の共同製作も珍しい。
1925年にアメリカで初めて映画化され、
その後、イギリス、ドイツなどでも映画化されたことがあります。
死後1世紀を経てもワイルド人気は衰えない様子。

原作では1890年代のロンドンだった舞台を
本作では1930年代のニューヨークに移していますが、
ほとんど丸ごと南イタリアの避暑地での出来事。

ニューヨークの社交界に出入りするアーリン夫人。
彼女はすべての奥様方を敵に回している。
というのも、その美貌を武器に富裕な男性に近づき、
ちゃっかり愛人の座を手に入れてしまうからだ。
亭主を骨抜きにされた妻たちは、彼女のことが憎くて仕方ない。

金持ちの間を渡り歩き、どう思われようと
意に介さないそぶりを見せていた彼女だったが、
スキャンダルを恐れた相手から結局逃げられ、
ホテル代も支払えなくなって追い出される。

ニューヨークを後にした彼女は、一世一代の賭けに出るため、
南イタリアの避暑地アマルフィ海岸へ。
彼女が狙いを定めたのは若き名士ロバート・ウィンダミア卿。
彼はまだ20歳の可憐で美しいメグと結婚したところだった。
すべてを事前に調べつくしていたアーリン夫人は、
ロバートがメグへの贈り物を買いに入った店で彼をつかまえる。

その日以来、とある別荘で暮らし始めたアーリン夫人と
そこを頻繁に訪れるロバートの姿が目撃され、
よからぬ噂が飛び交う。何も知らないのはメグだけで……。

メロドラマを予想して観ていたら、これは上質のサスペンス。
物の見事に騙されました。
正直なところ、アーリン夫人を演じたヘレン・ハントは
決して嫌いな女優ではありませんが、
男を手玉に取る美貌の女を演じるとなると疑問でした。
ところが終わってみればハマリ役。
真相が明らかになった後はホロリと泣かされてしまいます。
世界一セクシーな女優に選ばれたばかりのスカーレット・ヨハンソンは
本作ではメグを演じて無垢そのもの。
脇を固める役者陣も素晴らしく、ロケ地のナポリも美しい。
原作を知らずに観たい大オススメ作。

「いい女は2種類しかいない。
 全てを知り尽くした女と、何も知らない女」。
中途半端はあきませんかぁ。

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『イヌゴエ』

2006年05月08日 | 映画(あ行)
『イヌゴエ』
監督:横井健司
出演:山本浩司,村上淳,馬渕英里何,宮下ともみ,大森博史他
声の出演:遠藤憲一

犬よりも猫派の私ですが、これには脱帽。
絶対お薦めしたい大好きな1本となりました。

悪臭公害対策協会に勤める芹澤直喜は、
犬並みの嗅覚を持つ臭気判定士。
悪臭に悩む地域の住民からSOSがあれば現地に赴き、
自前の鼻で悪臭の原因を突き止める。

しかし、直喜は鋭すぎる嗅覚ゆえ、
そこらじゅうのモノのにおいが気になって仕方がない。
においを遠ざけるため、どこへ行くにもマスクを着用。
食事のさいには換気扇を回し続け、
自分の便のにおいが消えるよう、薬を服用しているほど。

ある日、そんな彼のもとへ父親から連絡が入る。
同窓会に出かけることになったので、
留守中、ホームセンターで拾った犬を預かってほしいと。
犬だなんてとんでもないと直喜は断る。

翌日、某会社に出向いた直喜。
それは最近妙な芳香剤を連発している会社で、
直喜に新製品へのアドバイスを求めたいと言う。
リゾート地の海をイメージした芳香剤シリーズで、
新製品とは「日本海」のイメージ。
嗅いだ瞬間、想像を絶するそのにおいに直喜は失神。

同僚が運んでくれたらしく、気がつけば自宅のベッドの上。
そして、かたわらにはフレンチブルドッグ。
気を失っている間にやってきた父親は
「犬をよろしく」とのビデオレターを残していた。

犬の面倒を見ざるを得なくなった直喜。
呆然としていると、どこからか人の声が聞こえてくる。
どうやら犬の心の声が直喜に聞こえているようだ。
しかももの凄いオッサン声でベタベタの関西弁。
直喜が話しかけてもそれに反応する様子はない。
こうして一方的に話す犬と直喜の数日間が始まる。

笑いのセンス、間合い、抜群。オマケは心地よい涙。
動物映画と言えば文部省推奨のお涙頂戴になりがちですが、
本作といったら、主人公の直喜はイケてない、
犬もお世辞にも可愛いとは言えないうえ、エロ親父的要素も。
ところが、嫌々ながら毎日を一緒に過ごすうち、
意外とイイ奴な犬に人生観まで変えられてしまいます。

直喜が上司にふっかける「町には町のにおい」の台詞に、
においと繋がる町や通りをいっぱい思い出しました。
阪神パークから甲子園球場へ向かう動物園のにおい。
摂津富田駅から川沿いに漂う明治製菓のチョコレート工場のにおい。

吸わず(嗅がず)嫌いはやめにして、
においを感じ取れたら幸せですね。

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『ホールドアップダウン』

2006年05月03日 | 映画(は行)
『ホールドアップダウン』
監督:SABU
出演:坂本昌行,長野博,井ノ原快彦,森田剛,三宅健,岡田准一他

V6主演のアクション・ドラマ。
大好きなSABUの監督作ということでレンタル。
役名は抜きにして演じ手の名前そのままで。君付けで失礼。

クリスマス間近のある日、
イノッチと三宅君はサンタの恰好で銀行を襲撃。
逃走用に銀行の裏口に停めた車はレッカー移動されていた。
走って逃げたふたりは、盗んだ金をとりあえず
駅のロッカーに入れることに。

ところが財布は車に置いたまま。
手元には強奪した万札だけ、ロッカー代の小銭がない。
駅の通路でギターの弾き語りをするホームレス、
岡田君に両替を頼むが、無理だと断られる。
ふたりは岡田君に銃を突きつけ、
彼のわずかな稼ぎの800円を巻き上げる。

ロッカーに金を預けて歩き始めると、
もの凄い勢いで岡田君が追ってくる。
イノッチと三宅君は、追いつかれるすんでのところで電車に滑り込み。
が、ロッカーの鍵をホームに落とす。
それを拾った岡田君、何の鍵だか不思議そう。

岡田君は交番へ盗難届に行ったさい、
近所で銀行強盗が発生したことを知る。
800円を奪ったふたりが犯人だと悟った岡田君は
ロッカーの中身にも気づき、駅に戻るために激走。

ところがところがその途中、
坂本君と長野君の乗るパトカーに岡田君は跳ねられる。
宙に舞った瞬間、ロッカーの鍵は岡田君の口の中へ。
悪徳刑事の坂本君と気弱な刑事の長野君は、
目撃者がいないのをいいことに事故隠滅を狙い、
気絶している岡田君を後部座席に放り込む。

ハンドルを握ると人格の変わる長野君は、
爆走するうち、別の車と衝突。
その勢いで岡田君がフロントガラスから飛び出し、川へジャボン。

元牧師のトラック運転手、森田君。
祭壇でロウソクを倒して教会を丸焼けにした過去がある。
人生に絶望し、身投げを考えていると、
川上から岡田君が流れてくる。
まるで神様のその姿に、何とか救わねばと思った森田君は、
岡田君をトラックに積んで病院へ。

しかし、森田君のトラックは冷凍車。
岡田君は磔にされたキリストのごとく凍っていた。
しかも、その日の運搬物、魚の臭いを染みつけて。
神様の魚の臭いを洗い流そうと温泉に向かう森田君。
刑事と強盗がそれを追い……。

SABU監督お得意の逃走劇。
登場人物がどこかで繋がって、追って追われて円になる、
毎度毎度のアホらしさ。
こんなアイドル映画もいいでしょ?

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