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『1640日の家族』

2022年08月14日 | 映画(さ行)
『1640日の家族』(原題:La Vraie Famille)
監督:ファビアン・ゴルゲール
出演:メラニー・ティエリー,リエ・サレム,フェリックス・モアティ,ガブリエル・パヴィ,
   イドリス・ロランタン=ケリフィ,バジル・ヴィオレット,ジャン・ウィレルム,フロランス・ミューレル他
 
TOHOシネマズ西宮にて、『今夜、世界からこの恋が消えても』の次に。
 
ファビアン・ゴルゲール監督の実体験に基づく作品とのこと。
ゴルゲール監督自身が里子だったのかと思ったら、里子を受け入れる側の家庭に育ったようです。
 
里親として児童相談所から里子を受け入れている夫婦ドリスとアンナ。
夫婦にはアドリとジュールスという息子がふたりいるが、
生後18カ月のときに引き取ったシモンという男の子のことも実子のように育てている。
 
シモンの母親は、彼がまだ生まれて間もない頃に亡くなり、
父親のエディはその悲しみから立ち直れずに育児を放棄、シモンを里子に出したのだ。
あれから約5年近くが経ち、ドリスとアンナのもと、3人の男児はとても仲良し。
 
ところが、児童相談所の担当者ナビラから連絡があり、
エディがシモンと再び一緒に暮らすことを望んでいると言う。
今さらシモンのいない生活など考えられないアンナは……。
 
アンナにいちばん肩入れしたくなるのは事実。
実母の記憶などまったくないシモンは、自分が里子だと認識しつつ、アンナをママと呼んでいます。
それも面白くないエディは、ナビラを通じて「ママと呼ぶのをやめさせろ」なんて言う。
自分が息子を手放しておきながら、勝手なことを言うものだと腹が立ちます。
 
けれど、エディがシモンを愛しているのもわかる。
薄給ではシモンにいい生活をさせられないけど、クリスマスツリーを飾り付けた部屋を見ると、
なんとか息子とやり直したいと考えているのが伝わってきて切ない。
 
それにしたって、アンナに対するエディの態度は敵意むき出しでイライラ。
実の親と暮らすことがゴールだと言い切るナビラにもムカつきます。
アンナはアンナでもう少しやりようがあるでしょうに、
エディに暴言メールを送ったり、ナビラへの連絡を怠ったりで、ドリスに諌められる。
 
アンナとドリスの対比も興味深い。
ドリスもアンナ同様にシモンに愛情を注いでいますが、とても冷静。
あくまで自分は里親で、児童相談所の指示にシュッと従うんですね。
この辺りは、父親と母親、男性と女性の違いなのかなとも思います。
 
虐待や育児放棄のニュースが毎日のようにあるなか、
どう見てもシモンは里親の家庭でずっと暮らすのが幸せだろうと思っていました。
お別れのとき、アドリとジュールスが目に涙をいっぱい溜めている姿、
悲しすぎて、寂しすぎて、彼らと目を合わせることすらできないシモン。
どうにかシモンがここへ戻ってくるラストを望んでいたのに。
 
そうはならなかったけど、なんかよかったと思えるラストでした。
 
幸せの形はひとつじゃない。

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