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『長崎の郵便配達』

2022年08月10日 | 映画(な行)
『長崎の郵便配達』
監督:川瀬美香
 
郵便配達員のフィクションだと思い込んでイオンシネマ茨木へ。
「郵便配達員だった男性」が主人公とは言えないうえに、フィクションでもなかった。
嗚呼、勘違い。でもこんな人がいたと知ることができました。
 
フランス在住のイギリス人女優イザベル・タウンゼンド。
彼女は川瀬美香監督と出会い、長崎へやってきます。
 
イザベルの父親は第二次世界大戦の英雄ピーター・タウンゼンド。
戦後、マーガレット王女と巡り逢い、悲恋に終わった人。
『ローマの休日』(1953)はその恋をモチーフにしたと言われていますが、
ピーターとマーガレット王女の恋が公になったのは映画の公開年で、
映画はそれよりも前に完成していたわけだからガセネタらしい。
ま、おかげで映画はより評判になったようです。良い宣伝になってくれたもの。
 
この恋の後、ピーターはジャーナリストとして世界中を飛び回ります。
その途中、日本を訪れた折に、長崎で谷口稜曄(すみてる)氏に取材する。
谷口さんは14歳で郵便配達員になり、16歳のとき、配達の途中で被爆
生死の境を行きつ戻りつしながら生き延びました。
彼を主人公にしたノンフィクション“THE POSTMAN OF NAGASAKI”をピーターは発表。
 
ピーターは1995年に他界。
娘のイザベルが父親の著書を頼りにその足跡を巡る様子を収めた作品です。
 
核廃絶を訴えつづけた谷口さんがサーロー節子さんと共に招かれた席でスピーチするさい、
自身の被爆した身体の治療を長期にわたって受ける様子の写真も見せられます。
背中全面がただれているから、うつ伏せの姿勢しか取れない。
1年以上その格好のままだったせいで、お腹側に床ずれを起こし、皮膚がくずれたそうです。
 
被爆のせいで結婚をあきらめていた谷口さんにお相手が現れ、
娘と息子も授かって、家族で海に行ったときの話は胸を打つ。
上半身裸になって海に入ろうとした谷口さんを見て、娘と息子は怯えて泣いたのだとか。
そんな子どもたちに向かって谷口さんは、自分の体の疵が恥ずべきものではないこと、
この疵を見て、核の恐ろしさを皆が理解してくれるとよいと思っていることなどを説きます。
 
先日の選挙の結果を見て、憲法9条改正に賛成している人がこんなにも多いのだと愕然としました。
NO MORE NAGASAKI. NO MORE HIROSHIMA. NO MORE WAR.
戦争しないで。核兵器の使用も所有も認めないで。
それが私たちの誇りだったはずなのに。

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