2022年4月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2937ページ
ナイス数:730ナイス
■【2021年・第19回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】元彼の遺言状 (『このミス』大賞シリーズ)
内藤了の“よろず建物因縁帳”の春菜みたいに鼻持ちならんヒロインだと思いました。でも私、春菜のことは最初から好きだったんですよね。この麗子は金にしか興味がないらしく、好きになれそうにもない。そんな彼女は優秀な弁護士。昔少しだけつきあっていた製薬会社の御曹司が急逝し、彼の遺言状には自分を殺した犯人に全財産を相続させるとある。依頼人を犯人に仕立て上げ、分け前を頂戴することはできるのか。金がすべてじゃなかったと知るとき、彼女のことが好きになりました。最後は想定外の清々しさ。応募時とは変更したタイトル、さすがです。
読了日:04月04日 著者:新川 帆立
■地面師たち (集英社文庫)
思えば私が地面師なるものを知ったのは、本作のモチーフとなっている事件が新聞紙上をにぎわせていたときだったのでしょう。世の中にはこういう「仕事」があるのかと目が点になりました。当時その事件を映画化したいと思いながらもできなかった大根仁監督が、これを映画化すればいいんだと目を輝かせる姿を想像。でもやっぱりできないんですね。嗚呼、大人の事情。何億何十億を稼ぐ詐欺で、売り主のなりすまし役に支払われるのは数百万。応募者は金に困っている人ばかり。数百万では借金の完済もできないのに。永遠に騙し騙される。なんだか切ない。
読了日:04月06日 著者:新庄 耕
■洋食 小川 (幻冬舎文庫)
小川ちがい(笑)。最初の数編を洋子さんと思い込んで読んでいました。洋子さんは結構読んでいるのに、誰ですかこのペンギンさん。と訝っているうちに糸さんだと気づく。『ツバキ文具店』に関するアナウンスが多すぎるようには思うけど、そりゃまぁ当然のことで、うんざりするほどではない。挙げられた映画すべて劇場で観た身としてはより楽しめるエッセイです。ウルグアイのムヒカ大統領の「憎しみのうえに、善きものは決して築けない。異なるものにも寛容であって初めて、人は幸せに生きることができる」という言葉は今まさに心に留めておきたい。
読了日:04月07日 著者:小川 糸
■ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 (角川文庫)
作家は器の大きい人であってほしいと思っていますが、同じ器の大きさの人ばかりでも面白くないわけで。それにしてもこれでは人間不信というのか作家不信に陥りそう(笑)。そんな作家たちを向こうに回し、Z級ラノベ作家の李奈がずんずん逞しくなっていくのが頼もしい。ところで数カ月前、『文豪ストレイドッグス』を予備知識なしで劇場鑑賞しました。太宰と芥川をはじめとする文豪たちが得意技で戦います。技の名は“人間失格”とか“羅生門”とか。それを思い出しながら本作を読んだからか、いつか技が繰り出されそうな気がしました。出ないけど。
読了日:04月13日 著者:松岡 圭祐
■マスカレード・ナイト (集英社文庫)
これって映画化ありきの作品だよね、キムタクと長澤まさみでしか頭の中で話が進まないじゃあないかなどと思いながら。評価が高いようですが、もしも映画版を観ていなければ、私はきっとついていけなかった気が。登場人物があまりに多すぎ、しかも偽名を使っている人ばかりだから、誰が誰やらさっぱりわからない。いや、もしかすると映画版のキャストをいちいち思い出しながら読むせいでこんがらがったのか。高岡早紀と木村佳乃は原作のイメージぴったりだけど、麻生久美子はどうもしっくり来ず。ついていけないのは単に私が酔っぱらっていたせいか。
読了日:04月17日 著者:東野 圭吾
■TRACE 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫)
“よろず建物”が終わり、“夢探偵フロイト”も終わったところへ、ケッペーまでラストに近づいているのがありありとわかる本巻はなんとなく切ない。以前、本シリーズも含めて内藤了の既刊を一挙に友人に貸した際、登場する食品や雑貨を集めて贈ってきてくれたことがあります。本巻はいつにもまして土産物の宝庫。みすゞ飴に雷鳥の里、大信州。根曲がり竹と鯖缶で味噌汁をつくるとは知らなんだ。もう会えなくなるかもしれない面々を想うとたまらなく寂しい。それにしても死体発見のシーンは相変わらずえげつなくて怯む(笑)。事件の解決を待ちます。
読了日:04月22日 著者:内藤 了
■文庫版 地獄の楽しみ方 (講談社文庫)
2019年におこなわれた10代の若者向け特別授業をもとに構成したものなのだそうです。冒頭いきなり京極さん本にはありえない「頁またぎ」の箇所が出てきたので、これホントに京極さんなのかしらと疑いの目を向けてしまいましたが、読めば確かに京極さんの講演。数々の覚えておきたい言葉にメモを取りかけたけれど、メモを取らずとも思い出すものだと京極さんに言われてやめる(笑)。勝ち負けって何だよという話はちょっと目からウロコでした。「役に立たない」とか「面白くない」とかいうのはもうやめよう。物事を楽しめるかどうかは自分次第。
読了日:04月24日 著者:京極 夏彦
■姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫)
一昨年、義母が他界しました。週に一度は嫁の私がひとりで実家に寄ってお茶を飲みながら話をする間柄で、嫌な思い出は何ひとつありません。たぶん。でも亡き後の実家の様子はまるで本作のまんま。アヲハタのイチゴジャムなんて20個ぐらいありましたし、台所の隅からはビニール袋の中でドロドロになったほうれん草も出てきました。何も捨てる気のない夫の顔を見て主人公が「この男は本物の馬鹿なのか」と思うシーンは笑いました。いえ、ウチの夫はそんなこと絶対言いませんでしたけれども。遺品を整理して気づくことがある。楽しめたらいいと思う。
読了日:04月26日 著者:垣谷 美雨
■惑いの森 (文春文庫)
たぶん私はこの本を何度読もうが理解できません。50編で200頁。独立した短編集かと思いきや、これはあの人あれはこの人という人物がいっぱい出てきて、でもどうなっているのかまるで説明できない。こんなに訳がわからないのになぜか退屈ではなくて、この世界をわかりたいと思ってしまう。時に登場するご本人もどきは好きになれないけれども、タクシー運転手が、郵便局の人が、塔を作りつづける老人のことが気になって仕方ない。わからないのに美しく、不思議と陰鬱な印象は受けませんでした。私もハシゴをのぼりたい。世界は美しいと思いたい。
読了日:04月28日 著者:中村 文則
■ずぶずぶ: 疲れた中年を更に疲れさせる超短編小説集 (Pandora Novels)
初めての電子書籍だから、すぐに読み終われそうなやつ。まずは私の読む速度を測ってくれるのですね。現在の頁/総頁だったり、全体の何%地点に今いるのかだったり、この章を読み終わるまでにあと何分かかるのか、最後まで読むにはあと何時間必要なのか、全部表示してくれます。もっとバッテリーを食うものだと思っていたら意外に減らないし、これはアリ。だけど本書は電車の中では読めません。たいしてエロではないけれど、ずぶずぶだから(笑)。かといって惹き文句ほどには凹まない。初Kindleにピッタシ。無料だし。でも私はやっぱり紙派。
読了日:04月30日 著者:高橋熱