夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『誰がために憲法はある』

2019年05月11日 | 映画(た行)
『誰がために憲法はある』
監督:井上淳一
 
正直言ってあまり観るつもりはなかったのですけれど、
家からシュッと行けそうなシネコンでは観るものがなく、
2日前に行ったばかりの第七藝術劇場へ。
 
『セメントの記憶』の衝撃度が高くて書き忘れていましたが、
ナナゲイさん、椅子が替わったんですよね。
名古屋の劇場から譲り受けたそうで。
ずいぶんへたっていた椅子がちょっぴり(かなり)新しくなり、
ドリンクホルダーも設置されています。
 
これと後述の『主戦場』と、ものすごくお客さんが入っています。
 
日本国憲法を擬人化した芸人・松元ヒロによる一人語り「憲法くん」。
というものを私はそもそも知りません。
それを渡辺美佐子が演じるって、どういうことかまったくわからんまま観に行きました。
 
渡辺美佐子が「姓は日本国、名は憲法、言いにくいから憲法くん」として、
日本国憲法をわかりやすく説明してくれます。
そのあと、彼女が中心メンバーとして長年活動を続けている原爆朗読劇について。
朗読劇に参加するほかのメンバーも名女優たち。
高田敏江、寺田路恵、大原ますみ、岩本多代、日色ともゑ、
長内美那子、柳川慶子、山口果林、大橋芳枝といった人たちです。

渡辺美佐子が初恋の話を始めたとき、どこに行き着くのかわかりませんでした。
小学校のときにほのかな恋心を抱いていた相手。
何十年後かに彼を探し出して会う企画なんてのはよくありますが、
本人ではなく親御さんが現れて、息子が原爆で亡くなったと告げる。
こんな残酷な展開が待っていたなんて、誰が想像できるでしょう。
そんなことがあって、彼女が関わるようになった朗読劇。

戦争で深い傷を負ったわが国が、もう二度とそんな思いに遭わぬよう、
理想を掲げて日本国憲法をつくったはず。
なのに今、その憲法が変えられようとしている。
理想と現実は違うから、現実に合うようにと。
 
日本国憲法が生まれて70年。
「その間、僕は誰も殺さなかった。それが誇り」という渡辺美佐子演じる憲法くんは言います。
人は理想に近づこうとするものではないのでしょうか。
理想は理想で、現実と違うからと投げ出してしまうためのものなのか。
 
日色ともゑが出演作を選ぶときに問うてみることが印象に残っています。
「そこに正義はあるか」。

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