夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『判決、ふたつの希望』

2018年10月06日 | 映画(は行)
『判決、ふたつの希望』(原題:L'insulte)
監督:ジアド・ドゥエイリ
出演:アデル・カラム,カメル・エル・バシャ,カミーユ・サラメ,リタ・ハイエク,
   クリスティーヌ・シューイリ,ジャマン・アブー・アブード他

晩ごはんが16時という日に朝から3本観るのは無理だと思ったんです。
でもとりあえずチャレンジしてみる価値はあるかと思い、計画を立てました。
1本目は大阪ステーションシティシネマにて、
観逃しそうだとあきらめかけていた作品を上映終了週に滑り込みで鑑賞。

レバノンの映画って、観るのは人生初かもと思ったら、
レバノン作品として初のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた作品だとか。
それほど珍しいということみたい。

レバノンの首都ベイルートに暮らすトニーと身重の妻。
あなたの故郷に帰ろうという妻に対し、ベイルートで暮らすことにこだわっているトニー。
自動車の修理工場を経営する彼は、やっと手に入れたマイホームを手放す気はない。

付近の住宅の補修作業の現場監督を務めるのはパレスチナ難民のヤーセル。
ある日の作業中、頭上から水が降ってきて、作業員たちに掛かる。
ベランダで水撒きをするトニーの部屋の樋が破損しているせいだ。
さっそくヤーセルはトニーの部屋の樋を修理させてほしいと話しに行く。

ところがトニーはヤーセルを問答無用で追い返す。
作業員たちにまた水が掛かっては困ると、ヤーセルは勝手に樋を修理。
すると怒ったトニーはヤーセルが修理した樋を叩き壊してしまう。
憤ったヤーセルがトニーに叫ぶ、「くず野郎」と。

近隣住民とトラブルを起こしたくないヤーセルの上司は、
トニーに謝罪するようヤーセルに言い聞かせる。
渋々ながらも承知したヤーセルが上司とともにトニーのもとを訪ねるが、
トニーのひと言にヤーセルは怒りを抑えられずに殴りかかる。
結果、トニーの肋骨が折れ、事態は裁判に発展し……。

トニーはキリスト教徒。ヤーセルはイスラム教徒。
私たちには理解しにくい宗教に絡む話。
もっとややこしい話かと思ったら、とてもわかりやすい話でした。

最初はトニーのことをものすごく嫌な奴だという印象を持ちます。
ヤーセルが加害者とはいえ、真面目で不幸な境遇にある。
彼に肩入れしてしまうのは仕方のないこと。
そのうえ、トニーの弁護士はあからさまな差別主義者で、
彼が法廷に立つと途端に政治色が濃くなる。
これでこっちが勝ったらいやだなぁなんて思うのですが。

ところがトニーにもとても悲しい過去がある。
まわりでガタガタと騒いでいるけれど、
本当にトニーを思いやれるのはヤーセルなのかも。

裁判の帰り、車のエンジンがかからなくて困っているヤーセル。
敵なんだから知らん顔してもいいところ、そうはできないトニー。
やってやっているという態度もなければ礼もない。
そのシーンがすごく良くて涙が出ました。

勝った負けただけでいえば納得できない人が多いはず。
でも、ふたりは判決が出る前に納得していたはずだから。

劇場で観られてよかったです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする