夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『危険なメソッド』

2012年11月01日 | 映画(か行)
『危険なメソッド』(原題:A Dangerous Method)
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:キーラ・ナイトレイ,ヴィゴ・モーテンセン,マイケル・ファスベンダー,
   サラ・ガドン,ヴァンサン・カッセル他

先週末、『桃(タオ)さんのしあわせ』を観ようと梅田ガーデンシネマへ行ったら、
10分後に上映開始の回はすでに満席、立ち見のみ受付。
しばし悩みましたが、立ち見で観るほどの体力も気力もなくてあきらめました。

こういうときのために候補としてメモっていたのは別の3劇場。
後の予定と照らし合わせると、テアトル梅田なら2本観ることが可能。
そもそもガーデンシネマでも2本観るつもりでしたし、できれば2本観たい。
でも、切実に観たいと思ってはいない2本にするよりも、
どうしても観たい1本にするべきなのではと考えました。

1本だけならどっちにしようとまた悩んだ末、
家の近所のシネコンでも上映中のステーションシティシネマの1本よりも、
帰り道には観られないTOHOシネマズ梅田で上映中の本作を選択。
梅田駅からの往復を思えば、立ち見のほうが体力の消耗は少なかったかも。(^^;

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005)、『イースタン・プロミス』(2007)など、
ここ何年間かはヴィゴ・モーテンセンがお気に入りとおぼしき、
奇才か鬼才か、デヴィッド・クローネンバーグ監督。
これもきっと変態映画にちがいないと踏んでいましたが、意外にマトモでした。
実在の精神科医とその患者かつ愛人をめぐる人間関係を描いています。

20世紀初頭、第一次世界大戦前。
若きスイス人精神科医カール・グスタフ・ユングが勤務する病院へ、
ロシア系ユダヤ人女性ザビーナ・シュピールラインが送り込まれる。
彼女は裕福な家庭に生まれ育ち、頭脳も明晰だが、精神を患っている。

その原因が性の抑圧にあるのではないかと考えたユングは、
すべての人間行動は性的欲求に起因するという理論を唱える、
精神分析学会の巨頭ジークムント・フロイトに相談。
アドバイスを鑑みたユングの治療により、ザビーナは劇的に良くなる。

自ら精神科医を目指すというザビーナは、
処女のままでは性について語れないからと、ユングを誘う。
妻子を持つ身ではあるが、これも治療の一貫と自分に言い訳をしながら、
ユングはザビーナとベッドを共に。
以来、愛人関係を絶つことができなくなってしまうのだが……。

冒頭のキーラ・ナイトレイの顔は、まるでゴリラかオランウータン。
『オアシス』(2002)のムン・ソリを思い出すほど凄絶な演技です。
病状が治まってからの彼女はやはり美しいものの、
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のポスターでは
あまりの貧乳にスタッフが勝手に修正を加えたという噂の胸も露わに、
尻を叩かれて興奮するさまを果敢に演じています。

精神科の療法についての専門的な話も多く、難解かと思いきや意外にわかりやすい。
上記から十分に変態映画とお思いの人もおられましょうが、
複数のクローネンバーグ作品をご覧になった方なら、
変態度が低くてむしろがっかりされるかもしれません。

ザビーナといい、ユングの妻エマといい、女性の強いのなんのって。
自分からザビーナや恩師のフロイトを切っておいて、
フロイトのほうからも絶縁を言い渡され、ザビーナにもあらためて振られると、
何も手につかなくなってしまうユングは実に困った「ボクちゃん」です。
それでも、もっとも穏やかな晩年を送ったのはユングだったのですね。

変態度はイマイチ、人にもオススメしませんが、伝記としてはやはり変態。
こんなのも面白いかなとは思いました。
精神科医というものは、正気だと務まらないそうで。(--;

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