出港準備中の艦橋に上がりました。
乗員さんたちの表情には、みんな緊張感が見えます。
その艦橋には、ほぼ唯一の、見かけるとほっとする顔がありました。
魅惑のバリトンボイスイケメン通信士です
・・・なんですが、いつも穏やかな微笑を絶やさない彼が、今まで見たことない厳しい顔つきだったことに、驚きました。
彼の仕事に対する姿勢を垣間見た気がします。
いせの、決して広くない艦橋が見学者でごった返し、落ち着いた様子で座る高田艦長。
高田艦長は、護衛艦の艦長を4度も歴任してこられた、大ベテランの艦長さんです。
その高田艦長が、
「まもなく、全ての舫いが外されると、出港用意という号令をかけますが、言いたい方いますか?」
・・・そんなこと言われたら、手を上げないわけがないよね?(笑)
どうせ日本人ってこういう時、進んで手を上げないしぃ~。
というわけで、
「はいっ!!!!」
勢いよく手を上げました(笑)
・・・あわよくば、それをラジオのOPで使おうとか考えたんです、ええ。
「あ、じゃあ、はいどうぞ」
笑顔で了解してくれました~よかった~
軽い緊張感で、ラッパ手の横に立って
「出港用意・・・出港用意・・・出港用意・・・ブツブツ」
と繰り返して練習する私に、バリトンボイス通信士が、
「みね姉さん、こっち、艦長のところに来てください」
と呼びに来た。
「え???」
なんでだろう?と訝しんでいたら、通信士が
「大丈夫ですか?タイミングわかりますか?」
「大丈夫~だって、ラッパの後でしょう?」
「いえ、前です」
「はっ????」
・・・そう、私、出港用意って、ラッパの後の号令だと決めてかかっていたわけでして・・・
「みね姉さん、ウイングに出て、艦長の横にいてください」
「え????」
そこには、笑顔の高田艦長。
「いいですか?舫いが外されていって、最期の舫いが外された時に・・・」
手で、どうぞの合図が・・・。
(しゅ、出港用意って、艦長の方だったのかぁぁぁ~)←心の叫び
ここで、顔が引きつったことは言うまでもない・・・。
だって、艦長しかかけちゃいけない号令の最たるものですよ、これ・・・。
もう、滝汗です・・・。
呆然と立ちすくむ私に、艦長が
「はい、ちゃんと舫い見てください」
と言われ、
(そっ、そこからなんですね・・・)
と、心の中でツッコミを返す私。
と、とにかく舫い、舫いだ・・・と、下を見ると・・・
見えないし
舫い、見えません・・・
そう、いせは張り出しているからかなりのぞき込まないと見えないんです。
がっつりのぞき込んだら、やっと見えました・・・2本。
・・・ん?2本???
え~~~~?!すでにあと2本かよ?!と軽く血の気が引いた。
ちょっと呆然と艦橋の方を見て、呼吸を整えて再度下を見たら
・・・あと1本になっていた!!!
お、お願いだからその舫い、外さないでくれと思った(←おい)
しかし、そんな願いが無慈悲にも届かず、残っていた一本が外れます(←当然)
(うっ、うっわ~~~と、とれた!とれちゃったよ)
艦長を見ると、笑顔のまま無言で、手で艦橋に向けて
「どうぞ」のジェスチャー
ここで覚悟を決めて、言いましたとも・・・
「出港よーい」
そしてラッパが鳴り、艦内に出港用意が告げられました。
・・・と、取りあえず、間違ったりかんだりしなくてよかった・・・
ここで、ふと思ったことが、
初めて艦長の任に就いて、初めて「出港用意」って号令する時、
どんな気持ちなんだろう????ってことです。
機会があったら、伺ってみたいですね
私はこのあと、緊張しかしていなかったことに後悔しきりでした。
「もうちょっと伸ばさな!」
と、その様子を動画撮影してくれた先生から言われたことですが、
言うは易し・・・自分が言ってみなさいよ~緊張するから・・・
さて、大任を果たし終えて、私はさっさと艦橋に入りましたが、
当然、艦長以下航海科等々のみなさんは、ウイングにいらっしゃいます。
いせがゆっくりと岸壁から離れていきます。
これより、いせは三ツ子島に向かいます。
通りすがりの者です。
緊張感、ダイレクトに伝わりこちらもドキドキしました。
が、彼等の背負う任務が任務だけに決定的な誤字が気になりました。
「最期」だけは使ってはいけません。
「最後」と「最期」、きちんと区別して下さいね。
変換ミスに気づかない時がちょいちょいありますので、大変助かります。