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南英世の 「くろねこ日記」

内閣提出法案

(内閣法制局が入る合同庁舎)


国家権力の暴走を防ぐために、立法権、行政権、司法権を分割しておくというのは小学生でも知っている。国会が法律を作り、行政がそれを執行し、司法はこれらの行為に目を光らす。三権はあくまで対等である(と学校では習う)。

しかし、現実はどうか。三権の中で行政権が圧倒的な力を持つ。司法の人事権は行政に握られ、法案の大半は内閣提出法案である。法案は国会の審議を経るものの、国会議員の中には法案の内容をよく知らないままに党の指示に従うだけの人もいるやに聞く(意外と多かったりして・・・)。結局、肥大化した行政権が国会を牛耳り、三権分立ではなく二権分立の状態になっている。

そんなこともあって、安倍首相は「私は立法権の長でもあります」と、小学生が聞いたら顎が外れるようなことを平気で国会で発言している。なんと恐ろしいことか。それでも安倍内閣が崩壊しないのは「与野党のだらしなさ」を示す以外の何物でもない。

ところで、行政法の勉強をしていてふと思ったことがある。内閣提出法案が多いことは一概に否定すべきことではないのではないか。もともと憲法制定当初、国会が唯一の立法機関であるところから、法律案の提出も国会の内部からしか許されず、内閣が法律案を提出することはできないという考え方が有力だった(『論点日本国憲法』宍戸常寿ほか)。しかし、実際に新憲法下で国会運営が始まってみると、内閣提出法案が圧倒的に多く、それが「普通」になってしまった。

背景にあるのは、行政サービスの拡充である。福祉国家において、行政は、健康で文化的な最低限度の生活を保障するだけではなく、私たちの日常生活の細部にまで介入するようになってきた。では、そうした細々としたところまで国会議員がフォローできるかと問われれば、「否」と答えざるを得ない。行政の実態を把握している専門家が法案を作成するほかないのかもしれない。。

とはいうものの、最近の日本の行政は力を持ちすぎている。「どげんかせんといかん」のではないか。


(内閣法制局の審議風景 href="http://www.kisc.meiji.ac.jp/~kokkaron/column/housei.html"  )

ちなみに、アメリカでは行政権を担う大統領は議会にほとんど出席しない。年に数回出るだけであり、三権分立が厳格に運用されている。
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