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南英世の 「くろねこ日記」

中国は何処へ行く


1978年に改革開放政策が始まり、中国が資本主義経済に舵を切ってから41年が過ぎた。鄧小平は社会主義の体制下で市場経済を導入し、経済発展を進めることが可能であるとして、これを社会主義市場経済と呼んだ(1992年)。以来、政治は中国共産党が独裁を続け、経済活動だけが資本主義で行なわれるという変則的な体制が続いている。

では、中国に欧米流の民主主義を導入することは可能であろうか?
結論は「不可」である。13億の人間が好き勝手なことを言い出せば、中国は四分五裂に陥ってしまう可能性が高い。政治的混乱を避ける唯一の方法は、天安門事件(1989年)を国家権力で抑え込んだように、強権的に国民を支配し国民を「あきらめさせる」以外にない。かつての皇帝がそうであったように。

民主的手続きによる政権交代がない中国の権力闘争は熾烈である。近年、党高官が次々と汚職容疑で失脚させられ、習近平の一強体制が進んでいる。そして2017年、党の憲法と呼ばれる党規約に「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」という文言が盛り込まれた。これにより、習近平は毛沢東や鄧小平と並ぶ権威を獲得した。

天安門広場では今も毛沢東の大きな肖像が掲げられている。毛沢東は今も「建国の父」として中国では尊敬されているという。1950年代末の大躍進政策の失敗で2000万人ともいわれる餓死者を出し、それにより失った権力を奪回するため文化大革命が10年にわたって展開された。その結果、死者1000万人、被害者1億人を出し、中国の発展を少なくとも20年は遅らせたといわれる。

その文化大革命の負のイメージを払しょくする動きがいま中国で行なわれている。中国の歴史教科書の書き換えが行なわれているのだ。中国共産党が間違いを犯したことを認めることは、習近平にとって好ましくないからである。中国共産党の一党独裁体制は今後も継続されるのであろう。

それでは、中国を共産主義国家に戻すことは可能か?
もちろん、この選択肢はさらに困難である。すでに共産主義イデオロギーは地に堕ちた。それに、何よりも中国にはすでに既得権益を持つ多くの大金持ちがいる。彼らから再び財産を奪うことは不可能というほかない。

そもそも鄧小平の「先富論」が間違いだった。一部の人が先に豊かになる人がいてもいいと彼は言ったが、中国では古来国家権力は富の源泉だった。権力を握ったものが富を独占する。もちろん、鄧小平は最初から全部分かったうえで方便として先富論を唱えたとも考えられるのだが。

結局、右にも左にも行けない。これが今の中国の現状である。米中貿易摩擦に象徴されるアメリカと中国の覇権争い。さてさてどうなるのやら。
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