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南英世の 「くろねこ日記」

失敗してわかること

どうしてもわからないことがあった。
東山魁夷さんの山の描き方である。どうしたらああいう絵ができるのか? 薄い色の上に濃い色を塗ることはできるが、濃い色の上にどうやって薄い色を重ねているのか?



実は、自分で描きたい絵があった。それが下の写真である。


ところが、背景の水色の濃淡がどうしてもうまく描けない。下地塗りをして上から淡い色をのせようとしたら見事に失敗した。


いろいろやってみたが、2回目も3回目も失敗した。どうしても思った色にならない。
勇気を出して日本画教室の先生に聞いたが「描いた人でないと分からない」とつれない。挙句の果てにはそもそも「写真を見て描くのが間違っている」と言われては返す言葉もない・・・。
それでしばらく放っておくことにした。行き詰まったら休むのも一つの対処法だ。

先日、魁夷さんを描いたDVDがあることを知り、藁にも縋る思いで即座に6本ほど買った。


その中に、魁夷さんが絵筆をとっているシーンがいくつも出てきた。そして山を描いているシーンを見て、はたと気が付いた。







今までの手順が全く逆だった。これまでは地塗りした上に色を重ねていたが、そうではない。これまでさんざん失敗を繰り返してきたから、魁夷さんの描き方を見て失敗の理由が瞬間的に理解できた。なるほど、そういうことだったのか。
失敗は無駄ではなかった。




それからもう一つ気が付いたことがある。一般に学問の世界では「木を見る前に森を見よ」と言われる。しかし、絵の世界では逆のようだ。森を描くにはまず1本1本の木をきちんと描く力が必要である。木の種類を描き分ける力なくして森は描けないのだ。まさに「森を見る前に木を見よ」なのである。魁夷さんは唐招提寺の障壁画を描くために、全国の海や木々の膨大な量をスケッチしていた。
ちなみに次の絵の左側は写真ではない。これもスケッチである。恐るべし!


まずは1本1本の木をよく観察し、正確に描くトレーニングから始める必要がありそうだ。
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