南英世の 「くろねこ日記」

教室という密室だからできる話

学問の自由は高校教育にもあってしかるべきだと常々思っている。だから、授業では歯に衣着せぬ物言いをしたりもする。教室という密室なればこそできる話である。

普段は教室でしゃべったことをブログに書いたりすることはない。しかし、クルーグマン教授のコメントをネットで見てわが意を得たりと思ったので、あえて書くことにした。

(クルーグマン教授)

クルーグマン教授は2008年にノーベル経済学賞を受賞した。彼は言う。「アメリカのトランプ次期大統領は労働者階級を擁護するが、その政策は労働者階級にとって凶報だ。関税と国外退去は貧しい人々を助けるのではなく苦しめるだろう。多くの人々が残酷に裏切られるだろう。次期大統領が掲げる政策は労働者階級により多くの負担を強いる一方で、高額所得者の負担は軽減される」。

全くその通りだと思う。経済学を少し勉強した人間ならほとんど常識ともいえる話である。関税に勝者はいない。なぜそんな簡単なことがわからないのか。私は授業で言い放った。

「トランプ次期大統領は経済学のケの字も知らない」。

間違ってはいないと思う。

 

また、イスラエルとハマスの紛争に関連して、「人間は一度戦争を始めたら殺し足りない間は戦争をやめない」ともいった。2025年1月19日、両者の間でようやく停戦の合意が成立した。4万6千人余りも殺してようやく気が済んだか。

 

日本社会は自由な国だと私たちは思っている。しかし、その日本にもタブーがある。マスコミは決してアメリカを批判しない。もし学者がアメリカを批判すれば仕事を干される。評論家がアメリカを批判すればテレビに出演できなくなる。だから、賢い人は決してアメリカ批判を口にすることはない。情報操作は決してロシアや中国の専売特許ではない。

私は授業で「これからの社会で大切なのは、はたしてそうか?と1歩引いて考えることである」と述べた。日本の学者は教室では自説を述べ、学会では通説を発表するというジョークがある。高校教育は学習指導要領の縛りがあるが、その範囲内であっても面白い授業はできると思う。大学の教員と違って、高校教員がアメリカを批判しても仕事を干されることはない。委縮せず、大胆に切り込んでほしい。

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