南英世の 「くろねこ日記」

関西生コン事件

 「労働運動を犯罪にする国」という副題に惹かれて読んだ。この本は元朝日新聞記者で和光大学名誉教授の竹信三恵子氏が、「関西生コン事件」という労働争議について書いたルポルタージュである。

 

 

関西生コン事件とは?

 2017年12月12日、「関西地区生コン支部」という産業別労働組合が、運賃の引き上げを求めて1500台のミキサー車を止めてゼネストを行なった。その後、このストライキにかかわった委員長、副委員長など89人が逮捕された。容疑は「威力業務妨害」「恐喝」「強要」である。

ストライキは、弱い立場にある労働者を守るために憲法28条及び労働組合法で認められた権利である。しかし、彼らは正当な権利を行使したにもかかわらず、刑法を用いて逮捕された。「組合をやめれば仕事を回す」「組合をやめれば穏便に済ますこともできる」と言われた人もいるという。これは明らかな「組合つぶし」ではないかと著者は主張する。

この事件に関して、マスコミはほとんど沈黙を貫き通した。私自身もこの本を読むまでは「関西生コン事件」など全く知らなかった。マスコミが警察発表をうのみにしたため、ニュース価値を認めなかったのだろう。

しかし、この件に関して労働法の専門家78人が、「正当な労働組合活動が犯罪として処罰されている」として抗議声明を出している。もし、この本に書かれていることが本当だとしたら恐ろしいことである。著者は、関西生コン事件は逮捕者の規模からいっても、かつての三井三池争議や国労事件にも匹敵すると書いている。今後の成り行きに注目したい。

(生コンミキサー車。積み込んでから90分以内に現場に届けないと中のコンクリートが固まってしまい、車もダメになってしまう。一般に生コンを作る会社と運搬する会社は別会社である。「関西地区生コン支部」は運搬する会社の労働者の組合である。写真は隣の建築現場を撮影したもので、上掲書とは関係がない。)

 

参考までに、この本に掲載されていた「労働組合組織率」と「労働協約適用率」のグラフを掲載しておく。たとえ労働組合組織率が低くても労働協約適用率が高ければ、まだそれなりに労働組合の影響力があると考えられる。イギリス、日本、アメリカ、韓国のグループはいずれも低い。ただし、イギリスは二大政党の一つが「労働党」であるからほかの3か国とは同列には扱えない。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日常の風景」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事