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南英世の 「くろねこ日記」

こんな日本に誰がした

 バブル崩壊後、世帯当たりの所得(中央値)が550万円から450万円に減少している。背景にあるのは小泉政権以降強化された新自由主義の政策である。企業が都合よく労働者を解雇できる非正規雇用が急速に増加した。

今や非正規雇用は働いている人の4割を占める。実際、周りを見回せば派遣社員やアルバイトなどの非正規雇用だらけだ。コンビニ、スーパー、書店、飲食店・・・。

もちろん民間企業だけではない。公務員の世界も同じだ。国家公務員全体の非正規の割合は22.1%(2019年)である。感染症対策を担当する厚生労働省にいたってはなんと53%(2019年)にものぼる。

地方自治体もひどい状況に置かれている。現在、地方自治体職員の約3人に1人が非正規雇用といわれている。自治体の窓口業務、教員、学校の事務室、図書館司書、保育園の保育士など、はたから見ていると正規か非正規かは分からない。しかし、実は多くの職員が非正規の身分であり、それでいて責任ある仕事を任されているのだ。

非正規雇用の待遇は、はっきり言って悪い。いつ雇止めを通告されるかもしれないし、正規と同じ仕事をしていても給料は安い。頑張れば正規にしてもらえるかもしれない、なんて思って頑張っても報われることはまずない。

金融資産の多くを持っているといわれる高齢者は老後に備えてお金を使わないし、非正規の人はお金を使いたくてもお金がない。これでは消費が伸びるはずもない。「成長なくして分配なし」といっても、有効需要の半分以上を占める消費が伸びなくては成長などできるはずもない。まずは行き過ぎた新自由主義にストップをかける必要がある。]

(注)非正規労働者の内訳ー総務省「労働力調査」(2018年12月分・速報)ー

    男性の正規2355万人、非正規681万人

    女性の正規1123万人、非正規1476万人

 非正規雇用で働いているのは男性の場合は4人の1人以下であるのに対し、女性は2人の1人以上である。平均すると、2157万人÷5635万人×100=38.3パーセントとなる。

 

 

次の資料は、1997年の賃金を100とした場合の主要国の賃金を比較したものである。

日本だけが下がり続けている。

なぜか?

理由は国策として賃金を引き下げてきたからである。その手段となったのは主に次の4つである。

① 労働組合つぶし

② 労働者派遣の解禁など非正規雇用を増大させる

③ 技能実習生など外国人労働者の移入

④ 成果主義の導入

これらのなかで、①の労働組合つぶしの影響は大きい。1980年代に「総評」の中心であった国労は、国鉄の民営化(1987年)によってつぶされた。「総評」に代わって「連合」がつくられたが、「連合」は労使協調路線をとる。組合と経営者は「なれ合い」であり、組合の幹部は会社の出世コースでもある。だから、賃金の引き上げ交渉には及び腰にならざるを得ない。これにより賃上げ装置としての組合は死んだ。

さらに連合に加わる日本の労働組合の大半は「企業別労働組合」である。そのため交渉力は非常に弱い。「労働者の賃金を上げれば企業間競争に負ける」。会社からそう言われれば、組合も強くは出れない。賃金が上がらず組合費だけを徴収されるから、組合に入るメリットはほとんどない。その結果、労働組合の組織率は今や16%台にまで落ち込んでしまった。

 参考までに紹介しておくと、欧米では「職業別労働組合」が一般的であり、企業の枠を超えて同じ職種の人が労働組合を結成する。航空業界でいえばANAであろうがJALであろうが、自分が所属する会社とは関係なく「パイロットの労働組合」「CAの労働組合」「整備士の労働組合」というふうに職業別に労働組合を作る。ちなみに日本の「産業別労働組合」(=産別労組)はこれに近い。交渉力はもちろん「職業別労働組合」のほうが圧倒的に強い。だから、日本の経営者は産業別労働組合を嫌う傾向がある。

高度経済成長のころには、会社があげた「利益」は、会社側が3分の1、株主への配当が3分の1、労働者の賃金が3分の1という「利益三分割」の発想があったという。しかし、現代は新自由主義の台頭によって、会社と株主の取り分が増え、労働分配率はどんどん低下している。

この20年間で株主配当は6倍に増え、日本人の平均年収は2015年に韓国に抜かれた。G7の中では最下位である。政治は弱い人のためにある。最近の政治は強い者の味方ばかりしている。

 

 

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