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南英世の 「くろねこ日記」

川に落ちた犬

川に落ちた犬は棒でたたけ、ということわざがあるらしい。なんとかわいそうなとは思うが、これは経済界では常識である。ライバル企業が失敗すれば、ここぞとばかりシェアーを奪いに行く。株価が下がれば空売りを仕掛けて、とことん追い詰める。

今、同じことがA新聞で起きている。従軍慰安婦問題で訂正が遅れたことや謝罪がなかったことが問題となっている。東電の吉田調書に関する報道が事実に反し、国益を損なったと厳しい声が相次いでいる。A新聞は1989年にも、取材した記者が沖縄のサンゴに「KY」と傷つけ、それを報道して環境問題の重要性を訴えるというねつ造をおこなっている。

世の不正をたたき、権力を監視することはマスコミの基本である。マスコミが権力に迎合する記事ばかりを書くようになったら、戦前に逆戻りだ。しかし、A新聞には、特ダネを競争するあまり、また権力を監視するという思いが強すぎて、結論が先にあり、社の方針に沿った形で記事を書く社内風土がありはしなかったか。また、記事のチェック体制に問題はなかったのか。大いに反省してほしいと思う。

ただ、今回のA新聞に関するマスコミの報道を見ていて、少し気になったのは「川に落ちた犬を叩いている」図式である。過ちは誰にでもある。問題は過ちを認める謙虚さだ。遅ればせながら、A新聞は自社の非を認めた。

ここは、川に落ちた犬をよってたかってたたき殺すことはあってはならないと思う。民主主義の健全な発達のためには、権力を監視するマスコミの存在は不可欠だ。A新聞には、今回のことを大いに反省してもらって、読者から信頼される社内体制を1日も早く築いてほしいと思う。
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