南英世の 「くろねこ日記」

経済成長と財政再建

 

累積公債残高が1000兆円を超えた。これをどう返済するか?政府が言うのは「経済成長による自然増収」である。これが実現できれば誰の腹も傷まない。理想である。

経済成長と税収の関係は、木の「幹」と「枝葉(果実)」の関係にたとえることができる。もちろん経済成長は「幹」であり「枝葉」は税収である。幹が丈夫に育てば枝葉も茂る。

問題は幹の育て方である。安倍内閣は「3本の矢」の一つとして「成長戦略」を打ち出した。中身は法人税減税、労働規制の緩和による賃金コストの削減、農業の自由化などである。しかし、こんな政策は単に大資本の利益拡大を狙っただけであり、成長戦略の名に値しない。

経済学的には、長期的な経済成長率は次の関数で定義される。

  長期的な経済成長率=F(人口増加率、資本ストック、技術進歩)

短期的な景気変動と長期的な経済成長を図示すると下図のようになる(図は松尾匡立命館大学教授作成)

 

問題は、財政赤字でねん出したお金を長期的な経済成長率を高めるために投資しているかどうかである。覚えるばかりの教育を施し、大学の予算を削り、少子化に何ら有効な対策をとっていないなど、どう見ても長期的な戦略は見当たらない。赤字予算は単に目先の不況をしのぐためだけに使われている。いってみれば、道路を掘り返してまた埋める作業を繰り返しているようなものである。

目先の不況を何とかするために財政赤字を重ね、「経済成長」によって「増収を図る」というのだから、根本的に考え方が間違っているとしか言いようがない。だいたい政治家というのは、次の選挙で自分が当選することしか頭にはなく、今日明日のことしか考えていないと思って間違いない。ある政治家が言っていた。「その先のことは、そのときの政治家が考えればよい」。

経済成長による財政再建。なんと心地よい響きか。財政赤字は今日も拡大する。

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