375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

名曲夜話(4) リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」

2007年01月17日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編


リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」(作品35)
1. 海とシンドバッドの船
2. カランダール王子の物語
3. 若い王子と王女
4. バグダッドの祭―海―青銅の騎士が立つ岩での難破―終曲

序曲「ロシアの復活祭」(作品36)
ユーリ・テミルカーノフ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
録音:1991年 (RCA 09026-61173-2)
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お待ちかね、名曲夜話・第4話は、絢爛豪華なアラビアンナイトの世界へご案内しよう。ロシア近代管弦楽曲の中でも、指折りの傑作・・・、ニコライ・リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」の登場である。

シェエラザードとは、アラビアンナイトの物語の中で、冷酷非情なサルタン王に千一夜にわたって物語を聞かせ、ついには王を強度の女性不信から開放し、自ら王妃の座を射止めた、美しい女性の名前である。クラシック音楽に登場する女性の中で、個人的に最もあこがれる存在の一人。ヒロイン・シェエラザードをどれだけ美しくイメージさせることができるか、その一点が、素晴らしい演奏になるかどうかの生命線であると思う。

交響組曲「シェエラザード」には、理解の助けとなるように、4楽章すべてに表題がついている。もちろん、必ずしも表題にこだわらなくていい。純粋な4楽章の交響曲として、管弦楽法の大家と言われたリムスキー=コルサコフの「音の魔術」に心ゆくまで酔いしれるという聴き方もある。作曲者としては、むしろ、そうしてほしいと望んでいるかもしれない。

さて、おすすめCDであるが、さすがに演奏効果抜群の人気曲だけに、ほとんどの一流指揮者、一流オーケストラは、この曲を取り上げていて、リリースされた録音は、それこそ星の数ほどになる。それらの中で、世評の高いものだけを選ぶとしても、古くはステレオ初期のストコフスキー盤から、最近話題になったゲルギエフ盤に至るまで、まさに目白押しだ。

が、ここでは、あくまで個人的な思い入れから、ベスト・ワンをあげてみたい。それは・・・ユーリ・テミルカーノフ指揮ニューヨーク・フィルハーモニック。発売当初の1993年に購入して以来、10年以上にわたって、これが、最もお気に入りの「シェエラザード」のCDになっている。

異色の顔合わせだと思う。自分の知る範囲では、テミルカーノフがニューヨーク・フィルに客演することは、そう滅多にあることではない。この顔合わせでのCDは、おそらく最初で最後ではなかろうか。いわば、一期一会のレコーディングなのだが、これが奇跡的に素晴らしい仕上がりなのである。

この演奏は、全体的に遅いテンポを取っている。第1曲の序奏、シェエラザードのテーマを奏でる、独奏ヴァイオリンの可憐な美しさ。アレグロ・ノン・トロッポの主部に入っても、決して先を急ぐことなく、美しいメロディーを、心ゆくまで歌う。

しかし、遅いからといって、決して重くはならない。足取りは実に軽やかなのだ。薄化粧で、スレンダーな体型のシェエラザードの姿が、思い浮かんでくる。この演奏に比べると、他の演奏は、厚化粧で、肉付きのいいシェエラザードが多い。最近評判のゲルギエフ盤あたりは、迫力はすごいし、シンフォニックな充実感では、まったく文句がない。しかし・・・

あくまで自分の好みになってしまうのだが、どちらかといえば、外見は華奢で、心はナイーブな女性・・・、それでいて、意志の強いところもあり、ひたむきに夢を追っていく人(・・・と、誰かのことを言っているようであるが)。そういう意味で、テミルカーノフ盤の「シェエラザード」は、まさに理想的なのである。

カップリング曲、「ロシアの復活祭」も素晴らしい。この曲は、「シェエラザード」と同じく、1888年、作曲者44歳の円熟期に書かれた。ロシア正教の聖歌集からのモチーフを使いながらも、むしろ異教的な響きを取り入れながら、復活祭の浮かれ騒ぎの情景を描いていく。

その色彩豊かなオーケストレーションの妙味を、テミルカーノフの才気あふれる棒の下、名手の揃ったニューヨーク・フィルの面々が、変幻自在の職人芸を繰り広げるのである。



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